5話
スチールラックに並べた、キャンプ道具をしばらく眺めていたが、とうぜんながらうずうずしてきて使いたくなる。
「さて、どの道具たちを使おうかな?」
ラックに並べたキャンプ道具を選んで、アイテムボックスに戻した僕は、屋敷外の庭園に出た。屋敷の庭園の花は枯れたまま放置されているが、広さは十分で、整地すれば楽にキャンプが出来そうと、僕は枯れている花を手に取った。
「この、枯れてしまった花は神様にもらった魔法、種生成魔法で種はとれるかな?」
と枯れた花はとっておくことにして、庭園をながめる。
(ここを整地するには土魔法だな。まずは土に空気を入れて)
僕は土魔法を使い、土に空気を含ませふんわりと土の硬さ、密度を変え、平らにならした。それを繰り返して、僕の目の前に整地された土地ができた。
「お、おぉおお! 自分でやったが。魔法って、土魔法って凄いな。面白い」
整地するために採ってしまった花は別に移した。
この整地した広い場所にテントを張り、焚き火台で薪で火を起こし、それを眺めながらひきたてのコーヒーを飲む。
「これはのんびりできて、たまらんなぁ。よしこの場所に、使ったことがないテントを建てみよう!」
僕はアイテムボックスをさぐり、買ったばかりでまだ使用したことがない、空気で膨らませるエアーフレームテントを取り出した。次に愛用のテーブル、ランタン、調理器具、調味料、必要なキャンプ道具を次々と取り出して並べる。
(楽しい! いまから異世界でキャンプをはじめるぞ!)
まずはじめに、癒しにもなって調理もできる焚き火からだと。アイテムボックスから焚き火シートを取り出しひいて、その上に焚き火台を置いた。
ーーエアーフレームテントを建てるのは後にして、先に火を起こすか。じゃ薪だな。
このアイテムボックスの中には、僕のアパートにあったものを全部、神様に頼んで入れてもらっている。だけど魔法があるが電気のない異世界、スマホ、電子レンジなどの電子機器は使えないと言っていたから諦めたが。太陽光で充電ができるソーラーモバイルバッテリーは入れてもらった。
ソーラーモバイルがあればLEDランタン、ライト、ライターの充電式のものが使えるはずだ。
まぁ使えなくてもチャッカマン、オイルランタンがあるから大丈夫。僕はアイテムボックスに手を突っ込み、薪の束と着火剤を取り出した。
⭐︎
焚き火台の横に並べた、薪の束と着火剤。
ちょっと薪が大きいかと、アイテムボックスから愛用のナタを取り出し、薪割りをはじめた。
「ふうっ、薪がこれだけ折れば大丈夫かな? よし、これで、火を起こす準備は整ったな」
と僕は割った薪を、焚き火台に積み着火剤を上に置いて、火をつける準備を完了させた。
うまく割った薪に火がつけば、癒しの時間がはじまる。
――さてさて、いまから着火剤に火をつけるが。いつものようにチャッカマンを使うか、火魔法を使ってみるか? うーん悩むな。
しばらく僕は悩み、ためしに火の魔法を使うことにした。
「ファイア!」
だが、ここで、魔力量を間違えるわけにはいかない。気持ち最小限の魔力で、火魔法をの唱えた。僕の手から出た小さな火がふわりと飛び、着火剤に火をつけ、パチパチと薪に火をつけ温かい空間が広がった。
「おお、うまくいった! 焚き火で、お湯を沸かしてコーヒーを入れるか」
僕はアイテムボックスからヤカン、ミルなどのコーヒー道具を出して、テーブルに並べた。