3話(家族)
「もう、ノエールは辺境の地へ行ってしまったのね……寂しくなるわ」
「そうだな。だが、これであいつは王家から目をつけられず済む。あいつが密かに使用していたアイテムボックス、書庫で使用していた記憶魔法、箒で空を飛ぶ魔法はいままで見たことがない。早く副団長候補を見つけて、辺境の地でいっしょに住みたいものだ」
「えぇ、私もだわ」
ノエール、息子が飛んでいった方角を見て悲しむ母、ミーラを父ロードは抱き寄せた。その両親の姿を遠目に見ていた兄、ジールは眉をひそめた。
「ノエール……こんな形で追い出すなんて、酷い兄ですまない。前王はよかったが、新王となった王家は勇者の血を大々的に表に出して、傲慢でわがまま言いたい放題だ。人のよいい、ノエールでは持っている能力をいいように使われる」
「ぼく寂しい。兄上、ぼくの本当の夢は兄上といっしょに植物を育て、一緒に薬師になりたかった。時間を見つけて、会いにいきます」
家族はノエールの誰もがもたない、不思議な力を知っていた。副団長、薬師として王家と関わりがある両親は、社交界が始まる前にノエールを追放した。
「ノエール兄上は気付かなかったよね。自分が魔法を使うと、魔力の大きさに体が光ることを……兄上に伝えておけばよかったかな?」
弟、コースの言葉に父は頷いた。
「うむ。そうだったかもな……いつも凛々しいノエールが魔法を使うときの、あのにやけた面白い顔も言うべきだったな」
「えぇ、伝えなくてはいけませんね。ノエールも、もっと表情が表に出ない子だったら家庭教師も雇えたのに、あれでは能力がバレてしまうわ」
家族一同、そうだと頷いた。