11話
僕は大きめのクッカーをアイテムボックスから取り出し、魔法で水を入れて焚き火にかけた。クッカーに入れた水が沸くのを待ちながら、レンチンご飯の蓋を開け中のご飯をポリ袋に入れる。
「白い粒々?」
「これはお米って言って、今からお湯で温めて、残したカップラーメンの汁に入れて食べます!」
「残りの汁に入れる? また新しい食べ物ですね」
猫の瞳が輝く。その姿を見ながら、今覚えた鑑定をその猫に使った。
――え、なにこれ?
僕は猫のステータス画面に絶句。それは、鑑定魔法で鑑定した猫のステータスに「魔女にクビになった使い魔」と書かれていて、猫の名前が乱暴に消されていた。
それよりも僕を驚かせたのは……使い魔の消滅まであと一時間だと書いてある。猫のステータスは真っ黒なのは、この猫が使い魔だからと推測した。
(猫が、あと一時間で消滅⁉︎)
僕はすかさず、神様にどうしてか、わけ聞いた。
帰ってきた神様の答えは「使い魔は呼ばれ、名前をもらいご主人様に仕えます。しかし、ご主人様からいただいた名前を取り上げられると、用無しとなり消えます」
――消える?
《はい、存在価値無しとなりますので》
――じゃあ、この猫は自分が存在価値なしで、ここから消えることを知っている?
《おそらく、ご主人様と契約をするときに伝えられています。あと一時間の間に新たなご主人様を見つけ、名前をもらえれば消えることはありませんが、彼らにとってご主人様は、はじめての方であって、その唯一のご主人様に名前を取られ、捨てられてしまえばそれまでです》
――使い魔にとってご主人様は大切な人。名前を取られて、捨てられてもそれは変わらない。……そっか、教えてくれてありがとう。
猫は名前を取られた時点で、全て受け入れているのだろう。まだ過ごした時間は少ないけど、僕はなんでもいいから、猫に消えて欲しくないと思う。
「クッカーのお湯が沸いたね。ご飯入れた、ポリ袋を入れてあっため……るんだ」
「たのしみです。……ああ、そうですか。その表情、あなたは俺っちのステータス画面を見たんですね。使い魔として使いものにならず、捨てられてしまいました」
そう言って、猫は悲しそうに笑った。
「ねぇ、猫は消えてもいいの?」
「え? 俺っちの消滅時間まで見えたのですか? これはすごい、あなたな魔力はご主人様より上なんですね」
オール♾️(無限大)だから、上だと思う。
猫は僕をチラチラ見ながら
「えっと再解約をする場合は、俺っちに新しく名前をつけていただければ完了です」
と教えてくれる。
「君に名前を付ければ、再契約の完了?」
「はい。普通なら使い魔を呼んだご主人様より、魔力が上の方はいません。使い魔を呼べるのは、多くの魔力量を持つ者だけです。この国に魔女より多くの魔力を持つものは、ほかに魔族しかいないでしょう」
――魔力の多いものが魔女、魔族しかいない?
あ? ああ、思い出した。あのとき、神様は勇者を召喚すると言っていた。猫が言った、魔力が多い魔族というのは魔王だったりして……その猫が言う通りなら、魔王よりも僕の魔力はそれ以上⁉︎
神様が選び、国の魔法使いか召喚した勇者が、僕より魔力が低かったら?
おいおいおい、ばれたら面倒ごとに巻き込めれやぁ、しないかい。僕の額から変な汗が垂れ流れた。