10話
どこからか現れたキジトラの猫と、アウトドアチェアに並んで座り、ラーメンをズルズルすすっている。見知らぬラーメンはいい匂いだが、はじめはおっかなびっくりしていた猫も今はカップラーメンに夢中だ。
「ラーメン、おいしいです!」
「ああ、ラーメンは美味いな!」
――だが、異世界の猫は面白いな。現れたときは四つ足だったのが、今はラーメンが食べやすい二足歩行姿になって、僕が渡した箸を器用に使いラーメンをすすっている。
二足歩行になった猫を見て驚く僕に、この姿になったほうが何かと便利なんです、と言った。猫の話を聞いていると端々に誰かといた形跡があるのがみえる、この子は誰かの飼い猫だったのだろう。
――森から来たと言っていたから、勝手に家を出てしまい、迷子にでもなったのか? あ、もしや、前の世界で猫に扮していた神様……。この猫は僕を心配して、神様が猫になってやってきた⁉︎
しかし、そのことを調べる素手がない。とても必要だった鑑定、そう鑑定魔法のことをすっかり忘れていて、神様にもらっていなかった。
生活魔法はもらったが、あの魔法ほど必要なものはなかったと、僕は心の中でため息混じりに呟いた。
《ピッコン! ノエール様に鑑定魔法が付与されました。》
(ん、ピッコン? 鑑定魔法が付与された? え? ええ――!)
あまりの驚きで僕は食べかけのラーメンを吹き出す、その姿を隣で見た猫は瞳を丸々にした。
「どうかされました?」
「あ、いや、大丈夫です。喉に麺がつっかえました」
「気を付けてください」
「うん。ありがとう」
昔の僕ならあるが、若者らしかなぬ答え……だが、神様からのお詫びはまだ終わっていないようだ。
⭐︎
僕は飲み干す勢いの猫に汁を残すように伝え、ラーメンを食べ終えた。くくく、次にすることは決まっている。
この残ったラーメンの汁にご飯を入れることだ。前は塩分を気にして泣く泣く諦めていたが、今はまだ十五歳とても若い。毎日じゃなければいいだろうと、米を炊くことにした。
――いや、そうだ、米は炊かなくていい。キャンプに行く前……たしか、近くのスーパーに寄ってレンジでチンするご飯を買った。
他に何を買ったのか忘れたが、僕はアイテムボックスに手を突っ込み、キャンプ雑誌の服録についていたエコバッグを取り出した。
「あったあった。レンチンご飯と、簡単に漬け物ができる漬物の素、おやつの板チョコ、焼き鳥の缶詰、耐熱ポリ袋」
――漬物の素? あ、鍋をして残った白菜で、漬物を作るために買ったんだった。刻んだ白菜をポリ袋に入れ、漬物の素を入れて揉むだけで簡単に漬物ができるし、塩昆布をいれて揉んでも美味いんだよな。