おーるぼんの怖くない話 合宿先
数年程前。
当時僕は高校生で、運動部系の部活動をしていました。
また、その部活を受け持つ顧問は他校へと赴いて強化合宿をしたり、練習試合をしたりするのが好きな方でしたので、そう言ったものがよくあったのです。
連休中などはしょっちゅう大きなバスに乗せられ、色々な都道府県に遠征した記憶があります。
これはそうして、W県に行った時のお話です。
遠征先では主に、ホストとなる学校付近の体育館、学校等で練習、もしくは試合を行い、その後は安価な旅館に泊まる事が多いのですが。
(ちなみに、それは顧問が旅館好きだかららしいです、先輩から聞きました)
今回は珍しく、と言うか近場に旅館が無かったのか。
W県での宿泊先はホスト校そのものだったのです。
ですが人数が非常に多かったために場所が分けられ、生徒は体育館や教室、顧問は教務室とそれぞれに布団を敷いて眠る事となりました。
そこで、僕もホスト校からお借りした布団を自分で敷き。僕以外にも沢山の生徒達がいる教室の中では、安眠は少し難しそうでしたが。
とにかく、明日も朝から練習があると言う事で早めに眠ろうとしていた、まさにその時でした。
突然、体育館に割り振られたはずの先輩二人と同級生一人の計三人が現れて僕を揺り起こしたのです。
一体全体、何なんだとは思いつつも。
先輩の前なのですぐに起き上がり、「どうしたんですか?」と言った僕に一人の先輩がこう話しました。
「さっきこの学校の奴に聞いたんだけどさ。
ここの学校幽霊が出るって噂があるみたいだから、確かめてみようぜ」
もう少し詳しく聞いてみると、幽霊は屋上へと上がるための階段で目撃されるそうなのです。
ただ正直に言えば、今日の練習の疲れもあって僕はあまり気乗りしませんでしたが。
でもどちらかと言うとその手の話は好きな方だったので、先輩達と共にちょっとした肝試しをする事にしました。
ちなみに、僕は霊感ゼロです。
廊下は殆ど真っ暗闇でしたので、少々怖いと感じるような気持ちはありましたが。
とにかく、僕と先輩達はちょっとした肝試しを開始しました。
屋上へと上がるための階段はすぐに見つかりました。
ですが、そこは勝手に屋上へと上がる生徒の侵入を防ぐためか、はたまたそう言った噂話を聞きつけ、事の真偽を確かめようとする輩の立ち入りを禁ずるためか。
それは分かりませんが、階段前には机で出来たバリケードが設置されていて、それ以上先に進む事は不可能となっていました。
(もう少し詳しく言うと、そのバリケードとはニ、三十個はあるかと思われる机をびっしりと階段に詰め込んだような、簡単かつ手の込んだもののようでした。
それと、これは僕の感想ですが。
意図したのかどうかは分かりませんが、『なるほど、これは良いな』と思いましたね。
単純な壁や柵ではその一部を壊されてしまえばすぐに侵入されてしまうでしょうが、このバリケードなら破壊は愚か、机を侵入出来る分移動させるというのもかなり大変な作業になるでしょうし)
ですが、先輩達は噂がどうしても気になるようでなかなかそこを離れようとはせず。
それで僕等は暫くの間、バリケードの前でウロウロとしたり、その奥を背伸びして見つめていたりしました。
「うわっ!!」
すると突然。
他の三人が小さく叫んだかと思うと、僕一人を残し走り去って行ってしまったのです。
恐怖はありませんでした。
本当に突然の事でしたし、特段驚くような何かが起こったような感じはしなかったので。
なので数秒後に僕は、それを『ああ、これは皆が僕を驚かせようと一芝居打っているんだな』と解釈し、のそのそと先輩達の跡を追って教室に戻りました。
先輩達は三人共が僕の敷いた布団の上に胡座をかいて座っていました。
ですが、そこに僕が現れても。
先輩達は大笑いする事も無く、種明かしをしようともせず、ただただ真剣な顔で何やら話し続けています。
それに違和感を覚えた僕が理由を聞いてみると。
どうやら三人はあの時女性の声を聞いたらしく、むしろ僕が逃げなかった事に対して皆が驚いていました。
ちなみに、それは悪戯とも考え難い話です。
何故ならば、今回の合宿には女子生徒も、女性の先生も一人としていないはずですし。
生徒の母親であろう方々が何名か合宿の手伝いに来ていたのは確かですが、その人達も練習が終わる頃には既に帰路に就いていたようで、誰もいませんでしたから。
なので、そんな声の持ち主が今ここにいるとしたら。
それは、幽霊としか考えられないのです。
僕は先輩達のその話を信じる事にしました。
上記したような事に加え、二人の先輩は軽い冗談すらもあまり言わないような人達だったので。同級生の方はともかくとしてですが。
そして、その後は四人でひたすらにトランプをして夜を過ごしました。
三人は先程の体験が余程怖かったのか、なかなか体育館に戻ってはくれず、翌日の練習が地獄と化したのは今でも覚えています。
正直、そちらの方が僕にとっては恐怖体験でした。
最後に言っておくと。
その後、特に何かが起こっただとか、女の幽霊が現れただとか、そんな事はありませんでした。
ですので、これで僕のお話は以上となります。
お読みいただいた方は怖くなかったでしょうし、まずそもそもとして、当時の僕も怖いとは思っていませんでしたし。
それに、オチが無くて少し申し訳ないような気持ちはあるのですが、これは実話ですのでどうかご容赦いただけますと幸いです。
お読みいただきありがとうございます!
また別の自作でお会いしましょう( ^_^)/~~~