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49 聖獣

今までで一番長い更新になりました(疲れた

文字数的に明日は一日だけ更新をお休みします…(人д`o)ゴメンネ

「……っ!殿下!」

気絶から目を覚ましたら、暗闇の中だった。何も見えやしないが、足には足枷が嵌められている感触がある。どうやら私は投獄されたらしい。

それよりも、ここは明らかに気絶前に居た地下神殿ではなく、他の場所に移動させられている。なら殿下は…殿下はどうなった??

何も出来ずに、ただ殿下の背後に隠れて守られ、しまいには殿下が攻撃されて倒されても、何もお力になれなかった……

私が…私がエルフ島なんてに首を突っ込まなければ…私が…2度目の生を受けたにも関わらず、貪欲にも命を伸ばそうと願ったから…私が…世間知らずのくせに、殿下を危険に巻き込んだから……

全部…私のせいだ…

耐えきれず涙が溢れ、もう全てがどうでも良くなった…


「ぐぅ…」

背後から微かないびき声が聞こえた。

振り返ると、真っ白な毛並みをした、微かに光るライオンのような生き物が、まるで冬眠しているかのように、微動だにせず、床に伏せていた。

初めて見る生物のはずなのに、なぜかとても懐かしい気持ちになる…


「王の愛し子よ」

今度は向かいの方から話声が聞こえた。

声と同時に、空間にたいまつの明かりが灯され、ようやくこの空間の全貌が見えた。

私は今檻に入れられている。正確に言うと、広い洞窟のような空間に、八つの大きな檻が円を描くように配置されている。

私が入れられている檻には白い生き物が共に入っている。先程話しかけてきたのは、おそらく向かいの檻にいる赤い生き物、他にも外見こそ似ているが、ツノや耳や爪の形が異なる青・茶・緑・グレー・黄・黒の六つの生き物がそれぞれ檻に入れられている。白の生き物と黒の生き物は冬眠のように伏せているが、他の6匹は座り姿で私を見下ろしている。


「…あなたたち…聖獣…ですか?」


「そうだ、王の愛し子よ、そなたはここから逃げなければならない」


「王の愛し子とは、私のこと?」


聖獣たちは一斉に頷き、私の質問に答えた。

「ここは…私欲に落ちた、前・愛し子フェルナンが作った監獄だ、そなたはここに居てはならない」

「!フェルナン大神官は愛し子だったんですか?」


「「……」」

聖獣たちはお互いに目線を交わし、意を決したように、私にエルフ島の秘密を話した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 千年前、聖獣もエルフ族も、人間と共に大陸に住んでいた。

 8つの聖獣はそれぞれ「水・火・土・木・風・雷・無・全」の魔法質を代表し、自然に流れる計り知れない魔力から生まれた生き物だ。その中でも、全の魔法質を代表する白い聖獣は聖獣の王として君臨し、治癒魔法だけでなく、世の中のありのあらゆる魔法を使える、神に一番近い存在だ。


 フェルナンはそんな時代に生まれた、全属性の魔法質を持つ、聖獣の愛し子だった。

 彼は全の聖獣と契約し、全の聖獣に愛され、ありのあらゆる魔法を教えてもらった。

 しかし、フェルナンは貪欲な人間だった。

 聖獣の愛し子として、人々から助けを求めらても、それが自分の意に沿う見返りがなければ、力を使おうとしなかった。代わりに、愛し子の力を脅しや処罰の道具として、暴政で人々を圧迫した。

 見かねた全の聖獣は彼に力を貸すことをやめ、我々他の七匹も、フェルナンの暴政に反抗し、民を守ろうとした。

 しかし、フェルナンは透明魔鉱石を発見してしまった。

 透明魔鉱石の正体は無の魔鉱石ではない。無の魔法質は他種類の魔鉱石を使えば、その魔鉱石の質の影響を受けて、力の相乗効果はないものの、使用することはできる。

元々、透明魔鉱石とは、聖獣の魔力を受ける前、まだ魔法質が定まらない未完成な魔鉱石だったが、フェルナンはその未完成の魔鉱石に、契約の魔力を部分的に吸収する力があることに気がついた。そして、彼は透明魔鉱石を、契約を一方的に書き換える「上書きの魔鉱石」として利用した。

フェルナンは自ら全の聖獣との契約を書き換え、全の聖獣を自身の奴隷にした。全の聖獣の魔力を自身に逆輸入し、さらに全の聖獣の寿命を自身の寿命の延長に使うように契約を上書きした。

王を人質に取られては、他の七匹の聖獣も抗う術がなく、フェルナンの言いなりになるしかなかった。

しかし、暴政に虐げられた民は革命を起こした。後に国王となるセレスタン家の英雄と、フェルナン自身の生家であるデュフォール家の魔法使いと共に、フェルナンは窮地に追い込まれた。

国を追われたフェルナンは、少数民族且つ全の魔法質に変化することができ、自身の栄養分となり得るエルフ族の人々を攫い、魔法の力で海を渡って、エルフ島に住み着いた。

これにより、力を使い果たしたフェルナンは、エルフ族の人間から魔力の高い子供を自身の神官として選抜し、無の聖獣によって力を吸い取り、さらにその魔力を全の聖獣の延命に使った。

エルフ族を長期に利用するため、自身の悪行を隠し、閉鎖的な神殿を立ち上げた。そして毎年、魔力量の高い子供を神官として神殿に入れ、彼らを洗脳し、自身の操り人形にした。

こんな日々が千年も続き、時にエルフ族から無の魔法質の愛し子が生まれることもあるが、その無の魔法質の愛し子も、またフェルナンの栄養分として、力を延々に吸い取られる契約を強いられた。

そして14年前、我らの王は千年ぶりに目を覚まされた。

「我が生きている限り、この悪の輪廻に終わりはない」

「我の忠誠な友らよ、我に延命の魔力を捧げることをやめ、フェルナンの悪行を終わりにしよ」

王はこれだけ言い残し、再び深い眠りに戻られた。

我らは王の言い伝えを守り、フェルナンに反抗した。

残りわずかの力を合わせ、我らはこの檻から脱出し、フェルナンから最後の透明魔鉱石を奪った。

当時無の魔法質の愛し子と契約を結んでいた無の聖獣は、この透明魔鉱石を使い、一方的に愛し子から魔力を吸い取る契約を書き換え、愛し子の魔力と記憶を封印し、彼を自由にした。そして、無の聖獣は自らを再起不能な眠りに陥れることで、フェルナンの栄養分を断ち切った。

 魔力の栄養分をなくしたフェルナンは、仕方なく隠居に戻った。残り少ない王の寿命と魔力を温存し、新たな魔力源を求めるために、洗脳された神官たちを使って実験を続けた。

 そして、数週間前、消えかけていた我らの王に魔力が、僅かながら戻り始めた。

 新たな全属性の魔法質を持つ愛し子が近づいたと、フェルナンは勘づいた。

 調査を始めれば、セレスタンから来た若い夫婦が、妊婦に多い病気を治す食べ物を作ったと、巷で話題になっていた。そして、神官を派遣してみたら、その神官の洗脳は弱くなっていた。

 これは間違いなく、新たな愛し子が無意識に放っていた全属性の魔力によるもので、フェルナンはそのセレスタンから来た若い夫婦を捕獲する計画に出たのだ。

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