表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/58

47 襲撃

 宿屋に戻ったら、なぜか異様な空気が漂っていた。いつも宿泊客で賑わっていたのに、今日はやけに静かだ。

 「…リア、僕の後ろに隠れて」

 危険な雰囲気を察知し、ルイ殿下は素早く私を背後に隠した。魔法を作動して、港に滞在中の騎士に向かって異変を知らせる合図を出した。

 シュッ、一本目の矢が飛んできて、ルイ殿下によって撃ち落とされてから、続々と数十本の矢が2階の客室から放たれた。一人や二人じゃない!私たちはかなりの人数に囲まれた!


 「逃げるぞ!」

 ルイ殿下は降り注ぐ弓矢を撃ち落としながら、私を腕に隠して、素早く宿屋から飛び出した。

 宿屋を出たら、白いマウントを被った数人が立ちはだかっていた。

 「誰だ!なぜ我らを襲撃する!」


 「……」

 白いマウントの人たちは無言でしゃがみ、手を地面につけて、魔法を発動した。


 「っ!土魔法だ!」

 どうやら彼らは地面に触れることで土魔法を発動した、おそらく多くの魔力量を持つエルフの人たちだろ。

 ルイ殿下は咄嗟に私を抱え上げ、魔法で瞬発力をつけながら空中に飛び跳ねた。空中に浮遊している僅かな時間で襲撃者たちに攻撃魔法を放ち、彼らは一瞬にして吹き飛ばされた。

 殿下ってこんなに強かったとは知らなかった…


 しかし、爆撃に打たれたはずの襲撃者たちは、まるで痛みを知らないゾンビのようで、ボロボロの体でまた無言に土魔法を発動した。

 ルイ殿下は再度飛び上がろうとしたが、今度は宿屋の屋上から射手の弓矢が降り注いだ。

 「クソっ!」

 弓を撃ち落としているうちに地面が沈み込み、半円状を描きながら、私たちを土の中に飲み込もうとしている。

 「こんなことしても無駄だ!すぐに我が国の精鋭部隊がここに向かう!速やかに攻撃を停止せよ!」

 港に滞在中の騎士と魔法師は総勢60名、数こそ多くはないが、全て王太子付きの精鋭部隊で、国レベルの争いにも引けを取らない戦力だ。この人数の襲撃者であれば、直ちに鎮圧できる。今私たちを土に埋めても、精鋭部隊からは逃げられないことを知らしめて、襲撃者の攻撃と止めようとした。

 しかし襲撃者らはまるで意識のない人形のようで、ルイ殿下の攻撃による怪我にも動じず、傷だらけの体でひたすらに私たちを地中に埋めようとする。


 「「殿下!!!」」

 遠くから騎士たちの蹄音が聞こえ、風魔法によって降り注ぐ弓矢が落とされ、宿屋の屋上から攻撃していた襲撃者も数人撃ち落とされた。


 しかし、僅差で私たちを囲む土の障壁は完成されてしまい、さらに足元に大きな穴が空いたことで、ルイ殿下と私はそのまま土の中のトンネルに落とされた。


 落下している間、ルイ殿下はずっと私を腕の中に匿って、さらに地面に直撃する直前に魔法で衝撃を和らげることで、なんとか着地した。

 私たちが地面に落ちてすぐ、先程空いていたはずのトンネルが塞がれた。おそらく、騎士たちがこの地下空間にたどり着かないための対策だろう。


 雷魔法の爆風で落下の衝撃を和らげたとは言え、殿下は私を守るため、かなりの衝撃を身一つで受けてしまった。

 「殿下!お怪我は??」

 「あ…少し肩と背中を打ったが…動けそうだから、そんなに泣かないで」

 殿下に涙を拭われて、初めて自分が泣いていることに気がついた。

 ああ…なんてことだ…いざという時に自分はこんなにも無力で、殿下に守られてばかりで…平和な前世と引きこもりの今世で、全く外の世界に目を向けようとしなかったから、最低限自分の身を守る術も分からず、殿下にこんな怪我を…

 耐えられずに涙がどんどん溢れてしまった。


 「愛し子は女の方みたいね」

 薄暗い地下空間の中から、低く感情のこもらない声がした。

 ルイ殿下は直ちに警戒して私を背後に匿った。

 「誰だ?」


 殿下の質問に答えるように、地下空間中にたいまつが灯され、ようやくこの空間の全貌が見えた。

 原始的な洞窟かと思っていたが、想像と異なり、四壁に白い大理石で丁寧に舗装された地下神殿のような場所だった。

 神殿の玉座に一人男性が座っていた。床につくほど長いシルバーホワイトの長髪に、ゴールドの瞳、透き通るほどの青白い肌は彼がほとんど日に当たらないことを語ってている。銀糸の刺繍を豪奢に施された白いマウントを身にまとい、見た目こそ若いが、どことなく年齢不詳な雰囲気を醸している。


 「……小賢しい仕掛けを…」

 男は指を弾ませ、ルイ殿下と私の指に嵌めてあった髪色と瞳の色を変える魔道具は瞬時に破壊された。

 なんていう魔法だ…魔道具を触りもせず、この距離から魔力を放出するだけで破壊するなんて…セレスタン史上最高の魔法の天才と言われるお父様にもできない芸当だ…


 見たこともない強力な魔法を操る男を警戒し、ルイ殿下はさらに私を背後に下がらせた。


 「……セレスタンの王族か」

 分かりやすい髪と瞳の色のせいか、ルイ殿下の身元はすぐにバレてしまった。


 「そうだ、我が名はルイ、セレスタンの第一王子だ」

 バレたなら逆に名乗って交渉に持ち込んだ方がいいと判断し、ルイ殿下は名を明かした。

 「汝の名を名乗れ」


 「……生意気な小僧…貴様に用はない」

 男は玉座から立ち上がり、ゆっくりと近づいてきた。

 「後の娘を渡せ、そしたら命は残してやる」


 「……」

 ルイ殿下は無言で攻撃魔法を放ち、相手に簡単に交わされてしまったが、拒絶の意思は伝わっただろう。


 「小癪な真似を…」

 男は手を挙げ、攻撃魔法を放った。


 「やめて!」

 殿下の腕を振り払い、私は身を乗り出して殿下を庇った。

 そしたら予想通り、男の攻撃はすぐに逸らされた。理由ははっきり分からないが、男の目的は「愛し子」、つまり私のようだ。


 「リア!下がりなさい!」

 私の突然な行動に殿下は驚き、腕を引っ張り、どうにか私を背後に下がらせようとした。


 「あなたの目的は私でしょ!なら彼を傷つけないで!フェルナン大神官!」

 男の外見を見た瞬間から、私は彼の正体に気付いた。

小説の中、両国の国交樹立の際に一度だけ登場したが、その異質な見た目から、読者に強い印象を残したエルフ国首領---大神官フェルナン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ