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38 誘拐??

 朝起きたら、見知らぬ天井だった。

 「……え!?」

 明らかにワーズ領ではない別の部屋にいることを理解して、思わずベッドから飛び起きてしまった。


 「おはよう、リリアーヌ、よく眠れたか?」


 「!?ル、ルイ殿下…?」

 よく知らない部屋で起きて、そしてなぜかよく知らないが、部屋にルイ殿下がいる。

 何がどうなってる??こんな朝早くに、しかも出迎えた記憶もないのに、なぜ殿下がいる?お父様ブチギレませんかね…と、頭の中ぐるぐるといろんなこと考えて、パンクしそうだった。


 ルイ殿下は掛けていたソファーから身を起こし、ベッドサイドまで近付いてきた。

 年頃の男性と同じ部屋で二人きりなのは、前世今世含めて初めての経験だから、思わず体をこわばらせた。


 「そう緊張しないで、リリアーヌの嫌がることは何もしませんから」

 殿下は優しく微笑んでくれているが、状況が不可解すぎて、なかなか緊張しないというのも無理がある。


 「…殿下…ここはどこですか?」


 「あ、ここはね」

 そう言いながら、ルイ殿下は窓のカーテンを引いて、外を見せてくれた。

 「エルフ島に向かう船の上だよ」


 「…………………………はい??????」

 あたり一面の見境なしの青い海と、水面からキラキラと跳ね返ってる朝日の光、本来ならば心を洗われるほどの美景だが、今はただ呆然と固まるしかなかった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 船上にも関わらず、部屋の作りはかなり豪華。ルイ殿下付きの従者や治療師、騎士など、ぱっと見外交団並みの人員がルイ殿下のお付きとして乗船している。

 従者が入れてくれたお茶を一口飲み、意外にも先日マリエッテとの女子会で飲んだエルフ国のハーブティーだった。


 さて、この状況は果たしてどういうことか。

昨日はいつもと変わらず、ワーズ家で泊まらせてもらっている客室で寝台に着き、いつもと変わらず入眠したはずなのに、起きてみたらエルフ島に向かう船上で、デュフォール家のメイドや、侍女のサラも誰もいなくて、しかも見るからにして船はすでに出発して数時間以上経っていそうな状況。

もしかして、私、ルイ殿下に誘拐されている…?


 「では…改めまして、殿下、これはどういうことか、ご説明いただいてもよろしいですか?」

ハーブティーをいただき、少し落ち着いたところで、殿下にこの状況の説明を求めた。


「そうね…要するに、リリアーヌとエルフ島に一緒に行きたく、僕があなたの勝手に連れ出したってとこかな」

いつもより2割り増しの爽やか笑顔で言われて、危うくそうなんだって納得するとこだったが、やっぱりおかしい。


「えっと…殿下、私は昨日いつも通り、ワーズ家の客室で眠りに着いたはずなのに、どうして起きたらこちらの船上にいるのですか…?」


「それはもちろん、起こさないように、細心の注意を払いながら、風魔法の魔法師を使って運ばせたのさ」

「あ、心配しないで、リリアーヌに眠り薬を盛ったりするような不躾なことはしていないよ、体の心配もあるしね」


なるほど、優秀な風魔法師ならば、振動など感じさせずに睡眠中の人間を運ぶことは可能だろう。しかも私の体調に気を使って眠り薬を使わなかったなんて殿下は相変わらず優しい…ってかそうじゃなくて!


「いやあの…殿下、技術的にどう運んだのかではなくて…父や私の侍女たちにはお知らせしてあるんですか?」


「……」ニコ

何も言わずにただ微笑むルイ殿下を見て、そりゃ知らせていないよねって察した…

お父様はルイ殿下を毛嫌いしているし、そもそも毛嫌いしていなくても、私を勝手に連れ出そうとする人間が誰であろうとお父様はブチギレて領地戦を宣言しそうなものだ…


「それでは…最後にもう一つ、どうやって侍女たちにバレずに私を運び出したのですか…?」


「ああ、それは簡単さ、彼女たちの夜食に強めの眠り薬の入れておいたから」


…………優しさのかけらも無いただの誘拐犯じゃないか…………

今この状況に気付いて、おそらく烈火の如くブチギレているだろうお父様を想像して、私は思わず頭を抱えた……

何がどうなっているんだ……?

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