37 女子会2
「…実は、我がデュフォール領にエルフ専用の魔鉱石が隠れている可能性があるの」
「!本当か?」
「まだ鉱山は見つかっていないので、何とも言えないが…遠い昔の書物に、我が領から使い道が不明な透明魔鉱石を見つけたことがある、そして量は極端に少ないが、エルフ国にも魔鉱石は存在する、その魔鉱石はまさに透明無色のものらしい」
「そ、それだわ!!何で早く言わなかったのよ!!デュフォール侯に伝えればデュフォール領をひっくり返しても探し出してくれるのに!」
私の話を聞いたマリエッテは興奮気味に顔を寄せて、危うくティーポットを床に落とすとこだった。
「いや…お父様に伝えてはいないけど、ピンクローズ商団を使って、かれこれ3年くらい探しさせていたわ」
「確かにお父様は領地をひっくり返しても探し出してくれるかも知れないが…領民の生活を蔑ろにされそうだから…とりあえず自分の力で探し出そうと思っていたの…」
「…………確かにそれもそうね…」
ワーズ領の領民を大事に思うマリエッテに私の心配は伝わったようで、少し落ち着いてくれた。
「でももう探し出して3年なのに、これっぽい情報は何もないから…何ともね…」
「ばか!諦めてどうする!!!」
私が弱気になっていたら、マリエッテにこっぴどく叱られた。
「聞いたわよ、ルイ殿下を部屋から追い出したのでしょう」
「!?な、何でそんなことを?」
昨日今日のことなのに、マリエッテは情報通すぎる…
「情報源はどうでもいいでしょ!まさかとは思うけど、ダメだったら自分が死んでもしょうがないと思ってはいないよね?」
できるところまで粘るつもりはあるが、前世医者やっていた経験から、病気はある程度抗っても仕方ないと、無意識に思い込んでいた部分があり、図星を突かれて少しバツが悪い気持ちになった。
「全力は尽くそうとは思っているよ…」
「どこが全力よ!周り手伝ってくれる人がいっぱいいるのに、この後に及んでも全然助けを求めようとしていないじゃない!!」
怒りと悔しさで感極まったマリエッテの目に涙が浮かんだ
あ…私が周りの人間に頼ろうとしないから…こんなに悲しい気持ちにさせてしまったんだ…
「ごめんね…」
マリエッテの涙をハンカチで拭きながら、素直に謝った。
「……あなたは死んではダメよ、だってあなたにこの国の王妃になって貰わないと困るもの」
「え?いやでも、ルイ殿下の婚約者候補はマリエッテでしょ?」
思い掛けないこと言われて、軽くテンパってしまった。
「だって、治らない病気で家から出られない私なんかより、マリエッテの方は健康で美人で頭も良くて、社交界にも顔が広く、圧倒的に適任じゃない…」
「あのな…あなた頭はいいのに鈍感すぎるでしょ…」
マリエッテに呆れ顔で見られて、何だか自分が悪い気がしてきた…
「損得で計れないからこそ、恋は恋なのよ」
前世足したら私はマリエッテの二倍以上年があるというのに、何だか年下に悟られて気がする…
てか、いつバレたのよ…私の恋心…そんなに分かりやすいのか私…?
「で、でも…恋と言っても、決めるのはルイ殿下だし…」
「…は?」
「え?」
私なんか変なこと言った?
「……まさか…本当に気づいていない…?」
「な…何を?」
「…………」
こいつダメだわって顔をしているわアリエッテ…
「はぁ…何だかあなたと話すと毒気が抜けるわ…」
「え、毒気?よ、良かったね?」
何だか急にマリエッテの話についていけなくなった私はただおどおどしているだけのポンコツになった。
「…あなたの社交界いりはとても不安になったけど、それはとりあえず置いておこう」
確かに、長年首都令嬢界で社交界のマドンナをしているマリエッテと違って、私は令嬢らしい回りくどい言い方に疎いし、もし社交界入りする日が来たら、多分詰むだろう。
マリエッテは身を正し、咳払いをしてから、真剣な顔で私に言った。
「私、王妃には絶対ならないわ、このワーズ公爵家を継ぐつもりよ」
「!そう…なの?」
薄々感じていたが、マリエッテはワーズ小公爵の座を狙っている。
でも嫡女と私生子の組み合わせのデュフォール家と違って、ワーズ家は嫡子の長男と長女の組み合わせだ。しかもマリエッテは第二子で、兄のジョセフはすでにワーズ公爵に後継者として選ばれ、陛下にも認められて、小公爵の名を授けている。マリエッテがワーズ公爵の名を継ぐには、法律的にも社会風習的にもかなり困難となる。
「ふ、心配そうだね」
私の心配が伝わったようで、マリエッテは不敵な笑みを魅せた。
「まぁ…それは…法律とか色々あるから…」
「色々はあるが、私、諦めるつもりはないわ」
「だいたい、私が結婚してこの家を出たら、ワーズ公爵家は3年で跡形なく潰れるわ」
それは確かに否めない…
「まぁそのために、とある腹黒策士に協力しなければならなくなったけどね」
「腹黒策士?」
「まぁまぁ、それはこっちの話だから気にしないで」
マリエッテは何かを誤魔化そうとするときに、いつもとびっきりいい笑顔を見せる。
何だか置いてきぼりにされた気分だ…
「とりあえず、私は王妃になるつもりはない、それだけ覚えておいて」
「う、うん…わかった」
ワーズ公爵の名を継ぎたいなら、確かにルイ殿下との婚約はマリエッテにとって足枷となる。
なら…私が、ルイ殿下を思っていてもいいのか?




