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36 女子会1

 春先の暖かい日差しに囲まれ、マリエッテと私は庭でお茶会を開いた。

 せっかくの女子会なので、他に誰も招待せず、侍女たちにも茶菓子の準備だけ頼み、二人でお茶を入れながら、静かなひと時を過ごした。


 「まぁ、珍しいお茶なんだね」


 「ええ、エルフ国から輸入したハーブティーよ、ストレスを和らげる効果があるんだって」


 前世でいうカモミールティーに近いお茶かしら、確かにこの世界に生まれ変わって以来、濃い紅茶しか飲んだことないから、これは改良すればかなりいい商品になるわ。


 「それで、そろそろ教えてくれてもいい?あなたがエルフ島に興味を持つ理由」

 どストレートに聞かれて、私は思わず面食らってしまった。

 「え?」


 「ただおとぎ話に興味をもって、わざわざ縁もゆかりもない遠洋航海事業に手を出すなんて、あなたのような聡い人間が無意味にやってるとは思えないわ」

 す、鋭い…前から思っていたけど、マリエッテはワーズ家の遺伝子変異か何か?あのゆるふわお花畑の親からマリエッテのような娘が生まれてくるとはとても思えない…


 「うーん…とても個人的な興味というのは、確かかな…」

 まだ不確か要素が多くて、下手したらエルフ国から警戒されるかも知れないから、大ぴらに広めたい話ではないだが、マリエッテになら、少し相談してもいいかな。

 「私、魔力過多症の解決の糸口はエルフ国にあると思っているの」


 「!それは本当か?」


 「ええ、私も確証があるわけではないけど…エルフ国って治癒魔法に頼らず、人間のような貴族と平民の階級制度もないから、昔から医薬学が盛んじゃない、でも魔力過多症についての記載はどこにもないわ」


 「エルフは人間と違って、魔力過多症を患わないから、ではなくて?」

 

 「私も最初はその可能性考えたけど、エルフと人間って、魔力の質が違うだけで、全く別の生き物ではないわ」

 「魔力を一度に使いすぎると起こる魔力枯渇症はエルフにも起こるし、数多くはないが、エルフと人間のハーフも存在している、魔力の根幹となる部分は通じているはずなのに、魔力過多症だけ記録すら残らないのは、やはり不自然だわ」


 「確かに…不自然ではあるけど…でも逆にいうと手掛かりもないね…」


 「そうね…でも仮説はあるわ」


 「仮説?」


 「何らかの理由により、魔力過多症に関する情報は中央神殿管轄の書庫に秘匿にされる必要があれば、辻褄は合うわ」


 「なるほど…エルフ国は人間国と同じくらい長い歴史があるし、医薬学に関して人間よりも進んでいる、珍しい病気とは言え魔力過多症を全く書籍に残さないのは、中央神殿が管理しなければならない何かの理由がある…確かに理に叶ってるわ」


 前世なら、マリエッテはきっと高偏差値の大学を卒業して、大手企業で出世コースまっしぐらのハイキャリアウーマンになるだろう。何せ話が通り過ぎる!

 この世界では女性に対する教育水準は高くない、一般的に男子を後継者にする傾向が強いため、女子には音楽や芸術など、事業の中心に関わらないような教育を施す家庭が多い。

 アンナのように、最初から商団の後継者として会計や商業の知識を学ばせる平民の女子も珍しいが、マリエッテのように、兄がいるにも関わらず、領地経営に才を発揮する貴族令嬢はもっと珍しい。

 たまたまエルフ国への港がワーズ領にあったから、マリエッテと知り合えたけど、しみじみこの縁に恵まれてだけでも、エルフ国への遠洋航海事業に参入して良かったと思う。


 「でも中央神殿となると難しいわね…エルフ国にとって中央神殿は王権のような存在、しかもエルフ国は人間嫌いだから、易々とこちらの質問に答えてくれなさそうね…」

 マリエッテのいう通り、遠洋航海のハードルを解決しても、まだ政治的なハードルが残っている。

 私は、今まで隠してきた切り札の可能性を、マリエッテに教えることにした。

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