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33 ワーズ家の晩餐会

「お父様、お母様、お兄様、王家のご婚姻を憶測するのはとても不謹慎ですわ」

マリエッテは三人の談笑を静かに止めようとしたが、どうもワーズ家のお三方には伝わらなかったみたい。


「憶測だなんて、マリエッテはお堅いね、みんなが言っていることだからいいじゃないか」

ワーズ公爵は気にせず、楽し気に続けた。

「そうだよね、デュフォール侯爵殿?」


「ああ、一時期は経営不振だったワーズ領を立て直し、次期王妃の不二のご令嬢だと、私も聞いたことがある」

実際は聞いたのではなく、ここぞとばかりに噂を流した張本人であるが、デュフォール侯爵は涼しい顔してワーズ公爵に話を合わせた。


「デュフォール侯爵様、私は別の噂も耳にしたことございますが、この場に申し上げても宜しくて?」

訳すと、ルイ殿下とリリアーヌの噂もかなり出回っておりましてよ、リリアーヌの前で話題にしていいですか?

と、ニッコニコの笑顔で一応目上のはずのデュフォール侯爵に脅しを入れるマリエッテ。


「っこほん、確かに王家の婚姻事情を噂話にするのはよろしくない、別の話をしよう」

不意打ちを突かれて、慌てて話題を変えるデュフォール侯爵、一介の令嬢だと思っていたが、崖っぷちのワーズ領を立て直しただけあって、その頭お花畑の両親と兄とは訳が違うようだ。下手に利用すると火傷するかもしれない。末恐ろしい娘だ。


「噂とはなんですか?」

研究者気質のリリアーヌは、気になったことがあると食いついてしまう習性がある。

「そ、それはな…」

触れたくない話題を突かれて狼狽えるデュフォール侯爵。


「ねねお姉様!見て!僕ブロッコリー全部食べたよ!」

綺麗に完食した皿をリリアーヌに見せるアルベール。

「あら本当ね、偉いわアルベール」

(そう言えばアルベールって今だにブロッコリー苦手だったっけ?数年前に私が手作りでブロッコリーのソテーを作ってあげてから、食べれるようになったはずだけど…他の家の料理は味付けが違うから、苦手ながら頑張って食べたんでしょう)

不審に思いながらも自分で納得したリリアーヌだったが、その疑問通り、アルベールは数年前からブロッコリーの好き嫌いは無くなっていた。むしろリリアーヌの手作りならブロッコリー大好きになったほどだったが、単純に話題を変えようと、可愛い面してリリアーヌの気を引いただけだった。


「そう言えば、リリアーヌの誕生日は道中だったでしょう?いかがお過ごしになった?」

マリエッテは新しい話題として、リリアーヌの誕生日を聞いてみた。

「ええ、道中ではあったが、出発前に、皆様に誕生日のお祝いをしてくだったよ、そして当日にも家族三人で過ごせてとても楽しかったわ」

デュフォール領の一大事として、リリアーヌの誕生日は毎年盛大に祝われている。もちろん今年も例外ではない。

年々プレンゼントの金額がおかしな桁になりつつあるお父様を事前に止め、今年は高額なプレゼントなしで、使用人と商談職員全員一同に集まるパーティーがいいとお願いしたため、いつもより賑やかな誕生日になった。

「それは良かったわ、ワーズ家からもささやかなプレゼントを用意させてもらったから、お部屋に戻ったら開けてみてくださいな」

「ありがとう、マリエッテ」


―――――――――――――――――――――――――――――


「すごい!これはエルフ国の医学書じゃないか」

部屋に戻り、マリエッテが用意してくれたプレゼントを開けてみたら、中身は12冊セットの分厚い本だった。

さすがマリエッテ、有能な女はプレゼントのセンスも抜群!

早速読もうとしたが、次女のサラに厳しく止められた。

「お嬢様、今はお休みのお時間です、先週も無理して発作を起こしておられましたのではありませんか」

「それに明日はルイ殿下がご到着されますのに、お嬢様が体調を崩されたら殿下にもご心配をおかけしますわ」


うぅ…近頃どんどん肝っ玉母さんの風格を醸し出すようになったサラに、全くぐうの音も出ないような正論をぶちかまされ、初めて手にするエルフ国の医学書を泣く泣く手放し、寝床に着いた。

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