表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/58

2 魔法とは

リリアーヌとして転生して数日が経った。

やはりこの体はなかなか病弱で、体力も筋力も同世代の子供に比べてかなり弱かった。

外出することはおろか、屋敷内の庭園で散歩することもままならず、ほとんど1日中室内で過ごしている。

記憶の中もほとんど屋敷から出たことがなく、10年間生きたはずなのに、お父様や身の回りの使用人くらいとしか会話したことがなかった。


また前世過ごした日本と比べて、この世界には魔法がある。

魔法があると言っても、全ての人に魔法が使える訳ではなく、私もお父様に数回見せてもらっただけだった。

前世医者で研究者だった私の研究者魂に火がつき、ここ数日、毎日侍女に図書室連れてもらい、体力の許す限り魔法に関する書物を読み漁った。

そうして得られた知識として、この世界での魔法は前世に存在しないエネルギーの流れ、いわゆる魔力によって成り立つものだ。


魔力とは生き物が生まれもつエネルギーのことで、人によってその量と質に差がある。


量は分かりやすく言うと魔法を使うための体力であり、自身が持つ量を超えて魔法を使うと、魔力の枯渇が起きて、強い倦怠感と発熱、程度によっては褐色尿が見られる場合もある。

前世でいう横紋筋融解症に似たものだと私は理解している。


反面に魔力の質は言わば相性、この世界の魔力は「水・火・土・木・風・雷」の6つに別れて、ほとんどの人は1つの属性を持って生まれる。

例えば、お父様に見せてもらった魔法は水属性の魔法だった。

稀に「火と雷」のように、相反しない2つの属性を持つ人も居るが、このような人達はみんな「魔力衝突症」という、自身の魔力がお互いぶつかり合うことから生じる病にかかり、発熱・関節痛・消化不良と言った前世で言う自己免疫疾患のような症状を生じる。

おそらく、「火と水」のような相反する魔力を持つ赤ちゃんは生まれてくる事も出来ず、流産してしまう為、記録上に残らなかったでしょう。


さらに、非常に稀だが、全種類の属性を持って生まれる人がおり、この場合、6種類の魔力質が互いに拮抗と増幅でバランスを取り、その結果人間の治癒能力を高めることが出来ることから、全属性の人間には「治癒魔法」を使うことが出来る。


加えて魔法の量は遺伝に依存する部分が多く、このセインルギカ王国では高位貴族であればあるほど魔力量が多い傾向があり、反対に平民はほとんど魔法を使うことができないくらい、魔力の量は微々たるもののようだ。


逆に魔法の質は個人差による違いが大きく、親子で魔法質が異なる場合も一般的によくある。しかし、完全に個人差という訳でもなく、ある程度魔法の質と性格との関連性が見られ、例えば「土」の魔法質を持つ人間は物怖じしない温厚な性格の人が多いが、「雷」の魔法質を持つ人間は利発で行動力のある人が多い。


そして、リリアーヌがこんなにも病弱なのは、「魔力過多症」という子供に発症する不治の病が原因だった。

一般的に魔力の産出には限界があり、その人の魔力量の限界となれば自然と産出が緩やかになるはずだ。

しかし、魔力過多症とは言葉通り、体に耐えられないくらい多くの魔力が常に産出されてしまうため、自分の体が自分の魔力によって攻撃されてしまう状態だ。

また興奮したり、ショックを受けたりすると、一時的に魔力放出が激しくなり、発作的に高熱を出したり、目眩で倒れたりする。


なるほど、この世界は前世にない魔力による病気が多く、またその魔力に未知なこともたくさん残っている。

魔法がある以外、前世で過ごした世界とはそこまで違いはないが、医学の発展はおおよそ前世で言う16世紀レベルくらい。

脈や循環の概念はあるが、体系的な解剖学や生理学と言った知識はなく、経験則的に病気に対する薬の処方がされてる状態だ。


せっかく2度目の生を受けたのに、まさか不治の病を抱えるなんて、神様も意地悪なことをするものだ。

それもそうか、前世では最愛の弟を亡くし、生涯孤独でトラックに轢かれたもの、つくづく神様は私を虐めるのがお好きなのだと感じた。


「あの…お嬢様、今日はもうこのくらいになさった方がよろしいかと…また旦那様に怒られてしまいます」

専属侍女のサラは心配げに私を窘めてくれた。

気付けば今日も1日図書室に篭もり切ってしまった。

「そうね、サラの言うとおりだわ」

5日も昏睡状態だったのに、連日図書室で本を読み続けるものだから、お父様は気が気じゃないでしょう。

そういえば前世でも、弟のリヒトがようやくICUから一般病棟に戻れたのに、夜中までゲームしていたこともあった。

当時の私も本当に心配していたものだ。

これ以上お父様に心労をかけられないと思い、しばらく魔法の勉強を置いておくことにした。


「そういえばサラ、私の部屋に置いてあるピンクローズは我が家の庭園のものかしら」

「はいお嬢様、天気も暖かくなったもので、裏庭に一面のピンクローズが咲いています」

「そう、ならお父様に、近々裏庭の東屋でお茶を共にしたいと伝えてちょうだい」

私がそう話すと、サラはパッと顔を明るくし、元気いっぱいの笑顔で「かしこまりました!」と答えた。

設定厨ですみません(^_^;)

14話までは1日に2話ずつ上げる予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ