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14 登城

「デュフォール侯爵家長女、リリアーヌでございます」

「っその副官を務めさせていただく、デイビットと申します」

殿下の御前、リリアーヌは礼儀教師に叩き込まれた美しいカーテシーを披露し、臣下としての挨拶を申し上げた。

デイビットは初めての国王謁見で、額にいっぱいの汗を浮かびながら、なんとか噛まずにやり過ごした。


「二人とも顔をあげてちょうだい」

この国の現国王は女王レオノール、艶やかな黒髪は前世でいう濡れガラスの羽毛のように美しく、パンジーパープルの瞳は王室の象徴色と同じ、高貴かつ厳粛な輝きを放つ。


そういえば、登城用の礼服をオーダーした時、私はいつも通り、一番好きな藤色をブティックに注文しようとしたが、珍しく父様に大反対された。

藤色は王室の色に近いから、国王謁見には向かないと主張された。

しかし王室の色は濃いパンジーパープル、薄い藤色はどちらかというとピンクに近い印象を持たれるので、特に問題はないはずだが、日々王宮に勤める父様がそういうなら、藤色は避けた方が無難でしょう。

よって、今日は赤色のジャケットのセットアップにグレーのシャツを合わせたシンプルなバッスルドレスで登城した。

ちなみに、出来上がったドレスを見て、父様が何故かほっとしていたように見えたが、いささかその理由がわからない。



「今日はこの二人の功績を讃えるために、褒賞の場を設けた」

レオノール女王は応接間に集まる臣下たちにそう告げ、私とデイビッドの功績を読み上げた。

「デュフォール侯爵令嬢リリアーヌ、そなたは顕微鏡を発明し、流行り病の原因を突き止めた微生物学の発展に大いに貢献し、さらに石鹸の新たな工業製法及び抗生物質の発明と実用に尽力したことで、我が国の多くの民の命を救った」

「デイビッド博士、そなたはリリアーヌ・デュフォール侯爵令嬢の副官として、その数多な事業を手伝い、さらに微生物学の第一人者として、学問体系の確立に大いに貢献した」


「ここで、二人の功績を讃え、リリアーヌ・デュフォール侯爵令嬢には黄金50万、及び王領地のアトラント湖地区を授ける」

「デイビッド博士には黄金10万、及び準男爵の爵位を授ける」

アトラント湖はデュフォール領と首都の間に位置する王室御用達の療養地の1つで、首都からのアクセスも容易いから、遠距離移動出来ないリリアーヌにもぴったりな恩賞だ。

デイビットに授けられた準男爵の爵位は、厳密にいうと貴族の爵位ではないが、平民が得られる称号の中で最も高い位であり、世襲も可能だ。

さらに10万黄金というのは、僻地の小さな領地1つなら、お釣りが出るほどの大金、つまり、デイビッドがその気になれば、田舎で領地を購入して、準男爵から領地持ちの貴族である男爵に陞爵することも可能。

ただ私としてはもう少しデイビッドに副官として働いて欲しいので、しばらく田舎に行かないでもらうためにも、帰ったらすぐに給料をあげてあげよう。


「「ありがたき幸せに存じます」」


「それともう1つ、リリアーヌ嬢、久しぶりに会えて嬉しいわ、体の調子はよろしいのか?」

女王陛下は私のことをご存じのようで、優しく体調を気遣ってくれた。


「はい陛下、まだ時々発作が起きることもありますが、今日は快調です」

「それは良かった、王宮で茶菓子を用意したから、帰る前に食べて行ってちょうだい」


「っ!陛下!!」

私が返事する前に、臣下に列席する父様か被さるように大きな声を上げた。


「まあまあ、そう過保護にならないでくれデュフォール侯、久々にリリアーヌ嬢が来るから、張り切って茶菓子を用意しただけだわ」

「リリアーヌ嬢も、気張らずに楽しんでくれるといいわ」

そう言いながらレオノール女王はいたずらっぽく私に1つウィンクをしてくれた。

そんなにレオノール女王が私を気にかけてくださるとは知らなかった、記憶の中ではお会いしたことなかったような気がするが、やはりデュフォール侯爵家の娘だから、よく存じてくださるのかしら。


陛下のご厚意に甘えて、私は王宮の侍従に連れられ、とある温室に案内された。

温室には一面の藤が植えており、時期では無いのに、美しい藤の花が人を圧倒させるほどに咲き誇り、幻想的と言わざるを得なかった。

レオノール女王は私が藤の花が好きなのはご存知だったのかしら。

そう考えながら、用意された席に近づくと、誰かが待っていることに気がついた。


レオノール女王と同じ、滑らかな黒髪に、淡い藤色の瞳、高い鼻に程よい掘り深さ、凛とした風貌の美少年が既に座っていた。

「や、久しぶりだねリリアーヌ」

私に気づくなり、美少年は藤の花も色を褪せるようなキラキラした笑顔で声かけてくれた。


「あの…恐縮ながら…どちら様でしょうか?」

相手はあたかも気性の知れた知人のような振る舞いだが…本当に全く面識ない人だったから、雰囲気を壊して申し訳ないと思いながらも、思わず素っ頓狂な質問をしてしまった…

ようやく!男主人公の登場です!笑

なんとなく勘付く方もおられるでしょうが、それは明日の更新のお楽しみです笑

そして明日からは1日1話の更新となります!

コンスタントに毎日更新したいので、出来次第ではなく、ストックを維持しながらの更新になりますm( _ _)m

引き続き楽しんで頂けると嬉しいです!(๑>∀<๑)

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