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異世界旅行記  作者: 羽月こはる
3/3

リュックサックと魔導具

3話目になります。よろしくお願いします。

 お腹も心もいっぱいになり、昼下がりの街を散策しているとお洒落な雑貨屋を見つけた。今日中に済ませなければならない用事は全て済ませたし、後は旅の荷物を揃えるだけだから少し立ち寄ってみることにした。木でできた両開きの扉の丸い取っ手をぐっと奥に向かって押した。ギィッという、いかにも古い建物だということを思わせるような音をたてて扉が開く。そっと覗き込むようにしながら、店内へと入っていくと七十歳くらいの小柄なおばあさんが出迎えてくれた。

「おや、お客さんなんて珍しいねぇ。いらっしゃい。ゆっくりしていきなね。」

黒色のローブを身に着け、黒色の先が尖った三角帽子を被っているおばあさんからはどこか魔法使いのような印象を受けた。もしかしたらここは普通の店ではないのかもしれない。そう思って少し気後れしてしまったものの、店内を見渡すと置いてある商品はいたって普通の雑貨屋と同じだ。入ってすぐ右手の棚には可愛らしい手乗りサイズの木彫りの置物が並べられている。うさぎや小鳥、鹿など草食系の動物もいれば、狼や狐などの肉食系の動物もいる。そのどれもが精巧につくられており、見ているだけでとても楽しい。しかも、同じ動物でも少しずつポーズが違っており、小鳥なら、木の実を食べている瞬間や飛び立つ瞬間、地面に降り立つ瞬間など様々な種類がある。そのままその棚に沿って歩いていくと、小型の地球儀やランプ、手帳や羽ペンが丁寧に並べられて置いてあった。


 挿絵(By みてみん)



その中の一つに旅人が使いそうなリュックがあった。革でできており、使い込まれているが型落ちしていない。大きさも自分の身長に大きすぎず小さすぎず旅に出るのに必要なリュックにぴったりだ。そのリュックをじっと見ていると先ほどのおばあさんが話しかけてきた。

「おや、そのリュックが気になるのかい?」

「はい、これから旅に出るところで、その時に使うリュックに良さそうだなと思いまして…」

「旅にでるのかい。それはいいねぇ…。それなら、一度背負ってみたらどうだい?」

「え、いいんですか?」

もちろんだよと言い、おばあさんは背負いやすいように背中側に回ってリュックを持ってくれた。お礼を言いながらそっと手を肩紐に通す。背負ってみるとぴったりだった。背中側や肩紐の部分は柔らかい素材でできており、長時間背負って歩いても平気な気がする。

「す、すごく背負いやすい…。」

「そうかい、気に入ったなら買っていきな。」

「はい!そうします!」

「お買い上げありがとうね。あ、そうだ、少し待っていてね。」

そう言うと、おばあさんは店の裏側へと歩いて行った。一体、どうしたのだろうか。そう思いつつ、背負っていたリュックを前に持ってきてじっと眺めた。少し明るい茶色の生地はどんな服を着ていても似合いそうだ。それに色々な所にポケットが付いており、沢山の物を入れることができる。そして、側面にはカラビナのような物が付いていてランタンなどを吊るすことができそうだ。かなり機能性も高そうなリュックを見つけることができてよかった。旅の出発が今からわくわくして待ちきれない。そう思っているとおばあさんが店の奥から戻ってきた。

「待たせちゃってごめんね。ほら、旅に出るならこれを持っていきな。きっと役に立つよ。」

そう言っておばあさんは持っていた物を机に置き始めた。ランタンや地図などこの先必要になるような物ばかりだ。しかもどれも手入れがされており、古い品とはいえまだまだ使えそうだ。

「えっ!こんなにまだ綺麗なものをもらってしまっていいんですか?」

「もちろんだよ。私はもう旅の出来る年齢ではないし、この店ももうそろそろ閉じようとしていたところだったんだよ。せっかくなら使ってもらった方がいいと思ってね。」

リュックを買ってくれたお礼だよと言いながらおばあさんはカーテンを閉め、ランタンと地図の使い方を教えてくれた。すると、ランタンの中には中に入っていた石がふわふわと優しい光を出し始めた。見てわかる通り、この二つは、普通のランタンと地図ではなく魔導具の一種らしい。


挿絵(By みてみん) 


どうやら、ランタンの中には魔法石が入っており辺りが暗くなると光り始めるようで、蝋燭や火打ち石を持ち歩く必要はないようだ。しかも燃料となるのは太陽光なので、お昼に日光に当てておくだけで夜に光り続けるらしい。それに加え半日、太陽光に当てると二週間前後は光が持つようだ。そして、光の強さは上の蓋の部分に付いている丸いつまみを回すと変えることができる。蝋燭の必要なランタンを使うよりもとても便利だ。そして、このランタンはどこか幻想的な美しさがある。魔導具が神秘的なのは金色の腕輪の件でなんとなくわかっていたつもりだった。しかし、このランタンの魔法石の琥珀色の光の美しさに見とれてしまった。

「おやおや、そんなに気に入ったのかい?」

思ったよりじっと見つめてしまっていたようで、おばあさんが笑いながら話しかけてきた。

「あっ、すみません…つい夢中になってしまって…。」

「いいんだよ、気に入ってもらえたならよかったよ。」

おばあさんは微笑んで、地図の使い方を説明してしてくれた。こちらの地図も魔導具のようだ。なんと、地図の左上にある赤色と青色のシーリングスタンプを触るとそれぞれ拡大、縮小ができる。それに地図上を指でなぞるように動かすと映す場所を変えることもできる。それに何よりもすごいのが、自分の現在地が常に表示されるという特徴だ。地図上に楔形の赤色の図形が表示されており、向きを変えるとその図形も回転する。これなら、仮に迷子になってしまっても大丈夫だ。これは本人の登録が必要なようで、おばあさんが登録をしてくれた。数時間前に銀行でした手続きとは違い、おばあさんが空中に手をかざすとその空間に魔法使いの持つような杖が現れた。その杖を地図へ向けると水色の魔法陣がふわっと浮かび上がった。そうして今度は杖をこちらに向けると金の腕輪の青色の小石が光り、文字が飛び出した。おばあさんはその文字をじっと見つめ、地図上に浮かぶ魔法陣の中に杖で書き込んでいく。すると腕輪の小石は光が徐々に小さくなってもとに戻った。一方、地図の方はというと水色の魔法陣が地図に染み込んでいき、全体に波紋のように広がった。最後に地図の表面に水面に小石が落ちた時に水滴が上がるように、地図の表面から水色の小さな光が上がって静かに地図に戻っていった。

「これで登録できたからね。今日からでも使えるよ。」

そう言っておばあさんは地図とランタンを手渡してくれた。

「ありがとうございます!大切に使いますね!」

「お礼を言われるほどのことではないよ。大事に使ってやってね。」

「はい!そうします!」

嬉しさのあまり思ったよりも大きな声で返事をしてしまい少し恥ずかしさを感じているとその様子を見ていたおばあさんはふふっと微笑んだ。そうしてリュックサックの購入の手続きをてきぱきと進めてくれていた。

「気に入ってくれたみたいでよかったよ。」

「は、はい!素敵なリュックサックが見つかって良かったです。他にも色々とくださってありがとうございました。」

「いやいや、こちらこそ付き合ってくれてありがとうね。この店ももう閉めるつもりだから良い持ち主が見つかってよかったよ。」

「そ、そうだったのですね…。大切に使わさせていただきますね。」

「ああ、そうしてやっておくれ。いい旅にしてね。」

「はい、ありがとうございました。」

腕輪を使ってお金を払い、お礼を言ってお店の外へと出てきた。ふわぁっと吹いた風に髪が揺れ桜の花びらが舞い散る。先ほどから何度も見た景色ではあるけれど、こうして色々な人と関わってその優しさに触れた後であることもあってさらに温かい気持ちになった。緩む頬を抑えてそんなことを考えながら日が少し傾き始めた街を歩き始めた。

受験が終わったので不定期に更新していきます。

ご飯を食べる描写が書きたかったのですが…今回は入れられなかったです。

次回はご飯を食べる描写を入れたいです…。

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