サンドイッチとコーンスープ
作品を開いてくださってありがとうございます。
二話目になります。
私の好きなものを詰め込んだ小説ですが、読んでくださると嬉しいです。
誤字報告でも喜びます。お気軽に反応をしていただけると嬉しいです。
銀行から外へと出てきた。
太陽の眩しい光に目を細めながら向かいの建物に付いている時計を見る。大体、午後一時ごろだろうか。お昼時を過ぎたこともあって街を行き交う人々も銀行に入る前より少なくなっている気がする。
ちょうどお腹も空いてきたので銀行のすぐ近くにあったカフェでお昼ご飯を食べることに決めた。
カランコロン カランコロン
ドアを押すと上に付いていたベルが可愛らしい音をたててなった。扉をそっと閉めると奥の方からベージュのエプロンを着た定員さんがこちらへ出てきた。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか。」
「あ、えっと…一人です。」
「かしこまりました。では、お席に案内いたしますね。」
「はい、お願いします。」
店内はお昼時を過ぎたためか、そこまで混んではいなかった。
明るい茶色の木製の家具が中心の店内は明るく、優しい雰囲気を醸し出している。窓からは春らしい暖かな光が差し込んできていてランプの光が少しでも明るい。店内のそれぞれのテーブルには春の花が生けられた花瓶が置いてあり季節を感じさせる。他にも様々な家具が置いてあるがそのどれもが店内から感じる穏やかで優しい印象を受ける。
「こちらのお席になります。メニューはこれからお持ちいたしますので、少々お待ちください。」
「はい、わかりました。」
案内された席は窓際の一人席だった。日向ぼっこをしているかのような暖かな光を浴びることができるこの席は、全身で春を感じることのできる特等席のように感じた。椅子に座って頬杖をつきながら窓の外をのんびりと眺めていると定員さんがメニューを持って来てくれた。
「こちらがメニューになります。ご注文が決まりましたら、そちらのベルを鳴らしてください。」
定員さんはこう説明して、メニューを渡してくれた。
ゆっくりと一つ一つ眺めていく。色々な種類のものがあってとても迷ってしまう。どうやらこのお店はパンとスープと飲み物を好きなように組み合わせて注文することができるようだ。パンの種類だけでもロールパン、メロンパン、フランスパン、ピザパン…とたくさんあって迷ってしまう。パンではないがガレットもあって選ぶに選べない。迷いながらページをめくっていくととあるページで手が止まった。
「サンドイッチとコーンスープのセット」
組み合わせの例だろう。下には優しいタッチの挿絵も載っている。少し焼き目のついたパンにチーズやハム、レタス、きゅうりなどの具材がたっぷりと挟まれている。気になったのでこのセットを頼むことにした。飲み物は挿絵に付いていたカフェラテにすることにした。
チリンチリン
テーブルの端に置かれていたベルを鳴らすと定員さんが、ペンとメモを持ってやって来た。
「はい、ご注文をお伺いします。」
「このサンドイッチとコーンスープのセットを一つください。」
「お飲み物はどうされますか?」
「カフェラテでお願いします。」
「かしこまりました。ご注文を確認いたします。サンドイッチとコーンスープのセットを一つ、カフェラテを一つで間違いないでしょうか?」
「はい、大丈夫です。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
そう言って定員さんは厨房の方へと戻っていった。
待っている間、のんびりと外の景色を眺める。
小春日和という言葉がぴったりなくらい、暖かく穏やかに過ぎていく午後。
どこか楽しい気持ちになるような遠くに聞こえる街の喧騒と店内にいる人々の話し声。
こんなに穏やかな気持ちで過ごすのはいつぶりだろうか。
大きく息を吸ってふぅっと吐き出すと、また一つ気持ちが楽になったような気がした。
外を走り回る子どもたちの元気な声を聞きながら、テーブルに飾られた花を眺めていると料理が運ばれてきた。
「失礼します。こちら、ご注文のサンドイッチとコーンスープのセット、そしてカフェラテになります。サンドイッチのパンはもう一度焼いてあり熱いのでナイフとフォークをお使いください。」
そう言って定員さんは目の前に料理を置いてくれた。
「そしてこちらはお客様に無料でつけさせていただいているスコーンになります。甘さが控えめなのでスープにつけて召し上がってもらっても大丈夫です。それではごゆっくりどうぞ。」
テーブルの端にある筒に伝票を入れて定員さんは厨房の方へと戻っていった。
サンドイッチとコーンスープのセットは挿絵通りだった。
色とりどりのたくさんの具材を挟んだパンはカリッと焼かれており、コーンスープは見るからに濃厚そうな黄色をしている。お皿の手前にある野菜は鮮やかなドレッシングがかかっており、とても興味をそそられる。一方、カフェラテは甘くて優しい香りを周囲にふりまきながら湯気を出している。正直、どれから食べるかとっても迷ってしまう。
「いただきます。」
最初に食べ始めることに決めたのはプレートのメインのサンドイッチだ。ナイフとフォークを手にそっと半分に切っていく。サクッサクッと気持ちの良い音をたててサンドイッチが切れていく。切れたサンドイッチをフォークでそっと刺し、口に運ぶ。
食べた瞬間、口の中にたくさんの味が広がってゆく。レタスやトマト、きゅうりの新鮮さを感じさせるシャキシャキ感とこんがりと焼かれているパンの固さに絶妙にマッチしている。そしてチーズは贅沢に2種類使ってあり、味付けのされていない野菜のアクセントになっている。あまりの美味しさに思わずゆっくりと咀嚼してしまったが噛むたびに色々な味を少しずつ堪能できこれ以上ないくらい、五感で食べ物を味わっている気がする。
ゆっくりと飲み込んで、次はコーンスープを食べることにした。スプーンで少しかき混ぜてからそっと掬うとほわっと湯気がたち、スープの香りが漂ってくる。そのまま一口食べると、濃厚で優しい味がした。見てわかるとおり、濃厚であったがそれ以上にどこかほっとするようなそんな味もして思わずニ、三口と食べてしまった。
そうして、サンドイッチとコーンスープを少しずつ食べていき、ふと、カフェラテに口をつけていないことに気がついた。あまりの美味しさについ夢中になってしまっていたようだ。
右手でカップの取っ手を、左手でソーサーを支えながら持ち上げ目の前に持ってくると湯気と共に甘い香りが鼻をくすぐった。ふぅっと息を吹きかけ、少し冷ましてから一口飲むと、口内に一気に甘さが広がる。今まで食べていたものがどちらかといえば塩っ気の強いものばかりだったこともあり、より甘く感じる。気持ちが穏やかになるような、甘くて優しい味のカフェラテにほっと息をついてもう一口飲み込んだ。
味わって食べていたこともあり、食べきった時の満足感はいつもと桁違いだった。食後のスコーンも絶品で、サクサクとした生地に甘みの強い、いちごジャムをのせて食べるとカフェラテの甘さとはまた別の甘さが強く口の中に広がった。今はゆっくりとカフェラテを飲みながら窓の外を眺めている。
ふわっと風が吹くたびに、花吹雪が起こり街路樹である桜が儚く散ってゆく。暖かな日差しのなかはらはらと舞い散る花びらは幻想的でどこか切なさを感じさせた。そんな光景にそっと息を吐き、また一口カフェラテを飲み込んだ。
「ごちそうさまでした。」
そう言って、伝票をもってお会計をしてもらい、外へと出てきた。お腹が満たされたのはもちろん、心まで満たされた気分だ。こうやってのんびりとご飯を食べるのも悪くないかもしれないと思いながら、昼下がりの街をまた歩き始めた。
読んでくださってありがとうございました。
私事で大変恐縮ですが、来年4月頃まで受験のため活動を休止します。
まだ二作品しか投稿していないのに報告をするのもおかしいかもしれませんが、何卒よろしくお願いします。