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第1章

 「好きです! 付き合ってください!」

まさか僕がこんな言葉を、、。


 僕は恋愛というのが嫌いだ。現実の恋愛はものすごく面倒くさいし、下心しかない。それに3次元の女の子はみんな打算的で損得で恋愛をして、彼氏のことをアクセサリーだと考えている。僕は恋愛アンチだ。だからこそ僕が3次元の女の子に恋なんてするはずない。


 桜吹雪が舞い、暖かな風が心地よい春の季節に僕はこの学校に入学した。正直アクセス面を見ればこの学校よりいいところはあった。さらに偏差値的に見てももっと上を目指そうと思えば目指せたが僕は、あえてここを選んだ。そこにはいくつか理由があったが一番の理由はやはり僕の夢実現のためだ。

「秋~、おはよう~」

家を出て学校へ向かおうとすると突然背後から僕の名前を呼ぶ聞き覚えのある声が聞こえてきた。僕も彼女に挨拶をしようと振り返ろうとしたが彼女はすでに僕の許可なしに腕を組んできている。

「あぁ、おはよう、春。てかさすがにこの格好は、、」

「別に腕組むくらい良くない?私たち幼馴染なんだし。」

「いやでも、、」

そろそろ学校が見えてきて、僕が気まずそうに言うと彼女はしぶしぶ腕をほどいてくれた。

この僕に対して妙にべたべたしてくる彼女の名は瀬戸口春。僕と彼女の家が隣同士ということもあって昔からよく一緒に遊んでいた。いわゆる幼馴染ってやつだ。

「ところで秋はクラスどこだった?」

「えっと、、僕はA組。」

僕がそう答えると彼女はとてもうれしそうな顔をしてすかさず答える。

「私も! 一緒だね!」

「そっか、同じか。じゃあ、よろしく。」

僕が適当にそう答えると彼女は少し不満そうな顔をしてそそくさと教室へ向かう。僕はそんな彼女の表情には気づかず、あとをついていく。


 僕が教室へ入ると新クラスにも関わらず少し教室内がざわついた。どうやら同じ中学校出身の人たちで集まって話していたらしい。そしてみんな僕を一目見ると

「誰あの人~? メッチャイケメン~。背も高いし。」

「モデル!?」

「てか隣にいる人ってもしかして彼女さんだったりするのかな? かわいい~。」

「このクラス当たりかも?!」

どうやら僕のことを話しているらしい。自分で言うのもなんだが、僕は中性的な顔立ちをしており、昔から容姿端麗で、まさに美少年であった。昔からどこへ行ってもかわいいね、だとかきれいだね、と言われてきた。だから僕はこういうのには慣れているし、特に何も思うことはなかった。しかし彼女だけはこういう場面になると露骨に機嫌が悪くなる。

きっと僕だけ褒められるのが気に入らないのだろう。

「ガルル。」

まるで威嚇しているようだ。自分も褒めろと言わんばかりに。彼女のあまりの剣幕に怖気づいたのか、話していた人たちは視線を逸らし、すこし萎縮してしまっているようだ。

「は~い、それじゃみんな席について~。」

僕が申し訳なく思っていると後ろからまさに新クラスの先生であると思われるセリフが聞こえてきた。僕と彼女はすぐに自分の席を確認すると着席した。

「これから一年間このクラスの担任の桜井華で~す。よろしくね!」

ものすごいハイテンションな先生だなと見惚れていると、隣の席の春がなぜかこっちをにらみつけるように見ている。なんでだ?と考えているうちに一人一人の自己紹介が始まっていた。

「それじゃ~まず始めは石田君だね!」

「はい! 初めまして! 石田裕です! 出身中学は北中です! 趣味はスポーツ観戦です! よろしくお願いします!」

こんな感じの自己紹介が何人か続いた後で春の自己紹介も終わった後で一人の生徒が僕の関心を引き付けた。

「初めまして、南中から来ました立花雪絵です。趣味はライトノベルを読むことです。好きな作品は『雪の降る日に君と』です。これから1年間よろしくお願いします。」

僕はハッとした。ものすごい衝撃を受けた。彼女が好きだといった作品『雪の降る日に君と』はかなりマイナーな作品だったし、それよりなにも、、その作品は、、、。

「秋! ねぇ秋ってば!」

「えっ! なに?」

「次は秋の番だよ」

気が付くと僕が自己紹介をする番になっており、隣の春が教えてくれていた。

「あぁ、、えっと、水口秋です。隣町の北中から来ました。趣味は、、ラノベ作品を書くことです。よろしくお願いします。」

突然だったからか全然うまくしゃべれなかった。周りの人たちが再び僕のことを何やら話しているようだったが今の僕にはそんなことを考えているほど余裕はなかった。なぜなら今の僕の頭には立花雪絵のことしか頭になかったからだ。


 「は~い、みんな~それじゃ今日はこれで学校終わりだけどはしゃぎすぎず気を付けてね~」

桜井先生が解散を伝えると春はこのあと部活があると言って帰ってしまった。実は、春はこの学校に特待生として入学している。学力ではあまりに絶望的だったので部活に力を入れ選抜試験に合格したのだ。

「水口くん、よかったら私と連絡先交換しない?」

「あっ! 私もしたい!」

「ついでに私もいいかな?」

気が付くとクラスの女の子たちが携帯を取り出して僕と連絡先を交換したいと待っている。彼女たちには先ほど悪いことをしてしまったので一応ここはみんなと交換しておく。

「うん。いいよ。はい、これでいいかな?」

「うん! 水口くん、ありがとう~!」

「やった~」

「うれしい~! ありがとね!」

僕は放課後に立花さんと話そうと思ったのに彼女はすでに帰ってしまっていた。僕がすこし残念そうにしていると後ろの席から僕の名前を小さく呼ぶ声があった。

「あ、、あの、、水口くん、、ラノベとか好きなの?」

振り返るとそこには同じクラスの少し気弱そうな男の子である村瀬拓海くんがいた。

「えっ、」

僕が一瞬戸惑った顔を見せると彼はすぐに言葉をつづけた。

「さっき、自己紹介の時、、」

「あぁ! うん! ラノベとかアニメ大好きだよ! えっ! もしかして村瀬くんも!?」

僕は村瀬くんも僕と同じでラノベやアニメが好きなのかと思ってとても興奮していた。

「うん! 僕も! ちなみに今は『爆炎のドラゴニュート』って作品を観てるんだけど」

「あぁ!あれか、いいよね! 確か原作はゲームから始まった作品で原作者の火口さんが大学生時代にサークルで作ったやつで、、」

気づけば時刻は夕方5時半になっていた。学校が終わったのが1時くらいだったから4時間も経っていたことになる。つい同じ趣味を語れる仲間ができたせいか長々と話し込んでしまっていたらしい。

「こんな時間だしそろそろ帰ろうか。村瀬くん。」

「ほんとだ! 全然気づかなかった。あっ、あと僕のことは拓海でいいよ。」

「えっ! うん、じゃあ僕も秋でいいよ。」

彼はすこし驚いていたようだがすぐに僕のことも下の名前で呼んでくれた。僕は彼のような人と友達になれて本当にうれしかった。

帰り際に昇降口で僕は今日の出来事に感動していた。立花雪絵に出会えたこと、そして彼と友達になれたことに。

「それにしてもまさか同じ趣味を持つ人に出会えるなんて」

僕はこれまでこういう趣味を語れるような人に出会ったことがなかった。だからこそ今日拓海と出会えたことがすごくうれしかった。

「僕も秋くんと出会ってうれしかったよ。これからもよろしくね。」

「こちらこそ! 拓海。」


 













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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「恋愛アンチ」という単語を使っていますが、単語としてのアンチの使い方が完全に間違っています。 よくネット上での二次創作等で見かける典型的な間違いですよ。 よく「アンチヒーロー」といっ…
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