表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ばけもの子供の物語

ばけもの子供の物語 迷

作者: リィズ・ブランディシュカ





 世界のどこかに、要らない子供をすてる迷路があるんだよ。


 そこに捨てられた子供達は、さんざん彷徨った後で、ばけものに食べられちゃうんだって。





 そんな噂を聞いた事がある私は、すぐにその迷路に捨てられている事に気が付いた。


 ああ、私って大人達にとっては要らない人間だったんだな。


 すぐに事の次第を理解した。


 現場を見ていなくたって、どんな事を言って、どんな風に私を捨てたのか、すぐに分かった。


 食いぶちを減らすために、仕方なく。


 なんてきっとそうじゃない。


 愛情はあるけど、生活がまわらないから泣く泣く。


 なんて事でもない。


 ただ、要らなかったんだろうな。


 私は人と違って、髪の色が真っ白。


 とても目立つ存在だから。


 今は誰かにイジメられたりしていないけれど、将来もそうなるとは思えない。


 だから、きっとそれが理由で捨てられたのだろう。







 私は森の中を歩いていく。


 できそこないの、裁縫の失敗作みたいな、つぎはぎされたヘンな木の間を、縫う様にして。


 その木々はたまにケタケタ笑い出すけれど、怖いという感情はわかなかった。


「かわいそうに、かわいそうに」


 どこからか哀れむ声がする。


「もうすぐ死ぬよあの子。もうすぐだ、もうすぐだ」


 どこが嗜虐心に満ちた声が聞こえてくる。


 けれど、その声のどれにも、感情は動かなかった。


 やがて、ひときわ大きな木の前にたどり着いた。


 そこには、長い髪の男の子が眠っている。


 私と同じヘンな色の髪をしていた。


 紫色だ。


 私が近づいたら、その男の子が目をぱちりとあけて、髪の毛をざわざわ動かした。


 紫色の髪の毛が蛇に変身していく。


 けれど、私の髪の毛を見て、「あっ」と声をもらした。


 蛇だった髪の毛はすぐに元に戻ってしまった。


 男の子は安堵した様子で、「なんだ仲間かぁ」と屈託なく笑った。


 私は何がおかしいのか分からないけれど、なぜか「あはは」と笑ってしまった。


 男の子は「ようこそ」と、笑いかけてきた。


「ここは要らない子供達が捨てられる迷路の森だよ。普通なら食べちゃったり殺したりしちゃうところだけど、仲間は殺せない。歓迎するよ」


 私はどうやら仲間と認められたらしい。


 心が少しだけ動いた。


 普通なら不気味がるところなのに、ぜんぜんそんな気持ちにはならない。


 ああ、ここにいればも捨てられる事はないんだな。


 そう思ったからだろうか。


 私の髪の白蛇が、私の感情を表すように、ざわっとうねった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ