赤い部屋
子供の頃、家に赤い部屋があった。
床も壁も天井も真っ赤な部屋だ。
もちろん私の住んでいた家は普通の一軒家で、そんな奇妙な部屋は存在しない。
しかしずいぶん幼い頃の話だが、確かに見た記憶があったのだ。
そんな私も成人して、県外の会社に就職した。
住まいは小さなワンルーム。
田舎の家とは大違いだったが、生きていくうえで特に問題はなかった。
そしてある日のこと、仕事もここでの生活も慣れ始めた頃、部屋に帰ると壁に扉があった。
見た目は随分と古ぼけた木戸。
この狭い部屋に数か月住んでいるが、もちろんそんなものは今までに一度も見たことがなかった。
――なんだろう?
しばらく考えていたが、恐怖や警戒心よりも好奇心が勝った。
私は意をけっしてその扉を開けた。
真っ赤だった。
床も壁も天井も全て赤一色の部屋。
そして部屋の中央に赤いワンピースを着た少女がいて、笑いながら私を手招きしたのだ。
終