表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第九章 年末は家族で
98/123

第97話 初詣の真実

 

 そうして、おみくじの件は終わる。


 あの後もう一度引いて、何とか『小吉』で手を打った。


 次はどこに行くのかと、父さん達と談笑している健蔵さんたちの後を着いてみれば──



「あれ、この道さっきも通らなかったか?」



 見知った道、あまり整備されていない細い道路だ。それに、見たのはつい最近、というか、先程である。


 つまりは──



「ん?後はもう外食して帰るよ?」



 隣を歩く咲桜が、『常識』だと言いたげな表情で返答する。やはり、駐車場に向かっていたのか。


 でも、流石に早すぎはしないだろうか?


 ここへ来る時は、結構な渋滞だった。駐車場が空いてなかったので、それを待つ車が長蛇の列を成していたからだ。


 そして、待つということは、それほど駐車場に車が止まっている時間が長いということ。


 これらを踏まえ、もう一度言おう。早過ぎないか?


 などと一人で考え込んでいると「前見なきゃ、危ないよ?」と咲桜から注意を受けた。さりげなく握られた手が離れる感触を寂しく思いつつ、道路を横断して駐車場へ。


 やはり、止まっている車は同じ。つまりは、俺達と同じか、それ以前に来た人は、今もこの太宰府天満宮にいることが分かる。


 三度言おう。



「なぁ、帰るの流石に早すぎはしないか?」



 ドアノブに手をかける健蔵さんたちに言う。まだ一時間ほどしか経っていないのだ。あと二時間はいるつもりだったのだが。


 俺のその声に、健蔵さんと美桜子さんがはっとした表情を見せた。


 ほらな。帰りが早すぎると思ったんだ。


 と、予想の的中に得意になっていた矢先、



「「そうだった!()()買ってない!ちょっと待ってて!」」



 と、皆で引き返すでは無く、健蔵さんと美桜子さんの二人だけで先の帰路を再び歩き出した。


 追いかけなくて良いのだろうか。咲桜は呆れたようにため息を吐き、やれやれと頭を振る。


 異世界組はついていけず、父さんと母さん、シャランスティとミロット、兄さんとヘレナさんに分かれて駄弁っている。


 いや、別に俺はハブられてるわけじゃないからな。決して、断じて、孤立している訳では無い。咲桜がいるからな。



 誰に言っているのか分からない言い訳を胸中でグルグルと渦巻かせ、健蔵さんと美桜子さんの帰りを待つ。






 十数分後、二人の姿が見えた。満足そうな表情の二人は、両手になにやらビニール袋を提げている。


 咲桜もほっとした様子で、今しがた開いた車のドアに手をかける。


 いや、まだ俺の疑問は──



「いや、え、本当に帰るのか?」



 何だか情けない声になってしまったが、その声は咲桜にはっきりと届いた様子。


 車に乗り込み、座席に座りながら、咲桜は言った。



「うーん、ここってお参りとおみくじ以外殆どやることない気がする…」



「──なんというかまぁ、うん。だな」



 少し遅れた返答を残して、俺たちの正月は幕を閉じたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ