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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第九章 年末は家族で
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第96話 割と当たりやすいやつ

 

 休憩所を離れ、現在俺達はお参りをしている。


『天満宮』という名前の神社には、菅原道真(すがわらのみちざね)という人が祀られており、学業に縁があるという。


 咲桜は来年『受験』という、一つ位が上の学校に上がるための試験を受けるらしい。


 その、受験に受かるように、こうして手を合わせているのだ。


 俺は受験は無いから、咲桜の受験合格を願う。


 拝み終え、目を開け、咲桜の方を見る。


 同時に目が会い、思わず二人で笑ってしまった。



「合格、出来るといいな」



 笑い合いながら、そう言って列から外れる。


 列の外から見守っていた保護者(と異世界人)は、何やらみんなで盛り上がっているようだ。皆同じように桃色の薄く小さな紙を広げている。


 向かうと、『おみくじ』というものをしていたようだ。


 それぞれ悪い順に、『大凶』、『凶』、『末吉』、『吉』、『小吉』、『中吉』、『大吉』とあり、大吉が一番良いらしい。


 何が良いかと言うと、運。


 いわゆる、運試しというやつだ。



 俺と咲桜で、桃色の札が沢山入った箱の中から、一枚を取り出す。


 糊付けされた紙を開き、中身を確認。



「──」



 そっと閉じた。



「咲桜、どうだった?」



 同じくおみくじを引いた咲桜に問いかける。


 が、まだ中身を見ていない模様。こっちまで緊張してくる。



「なんか、死ぬ訳でもないのにこういうのって緊張するね…えへへっ」



 可愛らしく微笑み、意を決して中身を見る。


 さて、咲桜の今年の運勢は──



「わぁ!大吉だ!ベラ、ほら見て!初めて引いたよ!」



 大きく書かれた『大吉』の文字。咲桜の笑顔が眩しい。


 よし、それじゃあ次の所に行こう。もっと屋台を見てまわりたい。



「お、おう、良かったな。それじゃあ、もう少し屋台を見ようか」



 自分の引いたくじをポケットの中に入れ、咲桜の手を取り歩き出す。


 さて、今度はどんな屋台があるかな?



「っとと、ベラ、そういえばなんだけど──」



 いきなり手を引かれて戸惑った咲桜が何か聞いてくるが、その質問はもう読めている。なので、可哀想だが無視することにする。



「ベラ──ベラってば!もう…いいもん!おみくじ勝手に見るからね!」



「なっ──ちょ、やめ──あ」



 咲桜の白く細い手が、俺のポケットを探る。そして、目的の物を探り当てると、それを両手で広げ──



「え、ベラ大凶!?大凶って初めて見たよ!」



 あぁ、見られた。普通引くか?一番悪いものを。小吉とかでいいじゃないか。大凶は無いだろう…



 心底落ち込む俺を見かねてか、何か思いついた様子の咲桜が顔をずいっと顔を寄せる。ほのかに甘いシャンプーの香りが鼻腔を掠める。



「ベラ、納得のいかないおみくじは、そこの紐に結べば大丈夫なんだって。これ、『常識』らしいよ。ふふっ」



 そう言って咲桜の指さす方を見れば、確かに手元の物と全く同じ桃色の紙が、紐に無数に結び付けられている。



「ちょっと用事がある。すぐ終わるから先行ってて」



 そう言って、咲桜と共に紐の場所へ向かう。


 父さん達にバレないように、こっそりと紐に結んだ。



「──よし、これでいいのか?」



「うん、大丈夫。」



 不器用故に歪な形になったが、何とか紐に結ぶことが出来た。


 咲桜に確認をとり、先に行っている父さん達の元へ急ぐ。



「あ、俺が大凶だったことは秘密だぞ?」



 合流し、他に聞こえないよう小声で咲桜に言う。


 咲桜は、いつものように柔らかく、優しい笑みを浮かべ



「うん。二人だけの、ね」



 そういって、顔を赤らめた。



「あれ、イュタベラお前大凶だったのか?あっはっは!俺でも凶だったぞ?」



「いい感じの雰囲気ぶち壊さないで。あと兄さんも人の事言えなくない?」

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