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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第九章 年末は家族で
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第95話 実際やっても損しかない

 

「やっと着いた〜!渋滞長いよ〜!」



 駐車場内、咲桜の声が木霊する。


 あれから数十分、少し動いては長時間止まり、また少し動き──という、何とも退屈な時間を過ごし、ようやく駐車場へたどり着くことができた。


 皆車を降り、各々の荷物を持って目的地へと向かう。


 目的地の名は、『太宰府天満宮』。これだけ渋滞していたのも、この神社が有名だかららしい。


 駐車場を出て少しみちなりに進むと、屋台がちらほらと見えてくる。


『フライドポテト』に『串焼き』、『じゃがバター』、『くじ引き』、エトセトラ、エトセトラ──



「いい香りだな。イュタベラ、ミロット、何か買ってやろうか?」



「え!良いの?じゃあね、僕ね──」



「出処の分からない金で奢って欲しくない」



 ジャラジャラと日本の硬貨が入った袋を揺らして提案するが、断固拒否。ミロットはぴょんぴょん跳ねて喜びを表している。可愛い。


 恐らくは異世界(カリステア)から持ってきたものを質屋か何処かで売ったのだろうが、もしかすると読心術を使って人から金を巻き上げた可能性がある。そんな金は使えない。



「──いや、お前俺の事なんだと思ってんだよ」



「チャラ男?」



「なんだそれ」



 しかめっ面で怒る兄さんだが、軽く流す。そんなやり取りの合間に咲桜達がフライドポテトを買ってきてくれた。美味しい。


 ジャガイモの優しい味を口いっぱいに感じながら、神社へと向かった。


 向かいたかった。



「僕あれやりたいのー!パパー!ママー!おねがーい!」



 神社の敷地へ入り、橋を渡ると少し開けた場所に出た。


 猿まわしという、猿に芸を仕込んで披露するという、案外面白い見世物を見物した後、近くに休憩所があったので席に座った。


 近くにくじ引きがあり、それが非常に気になって仕方がないと言うように、ミロットが駄々を捏ね始めたのだ。


 今は父さんと母さんが宥めに入っているが、一向に聞く耳を持たない様子。


 こんなにワガママなミロットは珍しい。というか、見たことがない。


 くじ引きは夏祭りに行った時にもあったが、引く人皆ハズレを引いていた印象がある。お金が無駄になりそうなので、ここは別のもので気を引きたいが──



「うーん、この大当たり欲しいな…。持ってないフィギュア」



 そう呟いたのは、二つ目のフライドポテトを片手に景品を物色する咲桜だ。


 咲桜までそう言うとなると、これはもうそういう流れなのだろう。


 健蔵さんと美桜子さんは、止める様子もない。


 すると、咲桜は駄々を捏ねるミロットへ近づき、



「ミロットくん、お姉ちゃんと一緒に引こっか?」



 しゃがんで目線を合わせ、優しくそう問いかける咲桜。


 それに対しミロットは態度を急変、拗ねて頬を膨らませた顔が、一気に可愛らしい年相応の笑顔へと変わる。



「うん!ありがと、咲桜お姉ちゃん!」



 そう言って二人がくじ引き屋に並び、順番を待っていると、兄さんとヘレナさんが手招きをしてきた。



「イュタベラ、こっち来い」

「イュタベラくん、こっちに来て下さいますか?」



 二人の座る椅子の前に立つと、兄さんがわざとらしい小声で、ニヤニヤしながら言った。



「ミロットのやつ、未来予知でも覚えたのか?あれ、当たるらしいぞ」



「え、何で?未来予知?」



 あれとは、くじ引きの事だ。ヘレナさんが隣で頷いているのを見ると、兄さんはヘレナさんから未来の結果を聞いたのだろう。


 でも、引きたいという意思はあっても、ミロットには未来予知とは何の関係もない気がするが──



「──あ、まさか」



「そう、それだ。ミロット、今までこんなにワガママ言ったことあったか?」



 思い当たり、はっとしてくじ引き屋の方を見る。丁度咲桜たちの出番のようだ。


 箱の中から髪を髪を一枚選び、店主に見せ、そして──



「ミロット、お前そろそろ怖いよ」



 咲桜の欲しかったフィギュアが、二人の元へ舞い降りたのだった。

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