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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第九章 年末は家族で
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第90話 今日はみんなで食事会

 

 そうして、カリステアからの来客の話は終わり、夜も更けた。



「はーい、晩御飯できたよー。あ、今日は年越しそば食べるから少なめになってるけど許してね」



 兄さんとミロットに俺の部屋を案内し、少し物色された。一通り終わったのか、本棚にあった本を兄さんが勝手に読み、ミロットがベッドで跳ねている。


 下の階から美桜子さんの声がすれば、二人とも意識を扉の奥へ。



「はい、二人ともご飯だけど、絶対にここのルールに従うこと」



「イュタベラ、お前なんか、アレだな。もうこの世界の住人じゃないか?」



 苦笑しながらそう言う兄さん。確かに、ここでの生活は少しは慣れてきた。常識も咲桜と一緒にいることで身についたし、日本人と言っても過言ではない。



「いや、それはないぞ?」



「だから心を勝手に──」



「わー!いい匂いする!」



 いつものやり取りが行われようとしている中、遮るのは声変わりのしていない、幼い声。


 ミロットが夕食の香りをいち早く感じ取り、扉を開けて出ていく。


 それにならって、俺達も下の階へと向かった。



 ――――――――――――――――――――――


「なんか、あれだね。一気に大家族になった気分だね、美桜子」



「そうね。椅子足りてよかったわ。あ、シャランスティさん、タナーシャさん、料理手伝ってくれてありとうございました」



 いつの間に用意したのか、いつもより一回り、いや、二回り大きい円卓の周りには、高峯家、カリステア家が一堂に会している。


 いつもは四人で食事をとるので、こうして十人で食卓を囲むのは賑やかで楽しい。たまにはこうして、大人数で食事をとるのも悪くない。


 ちなみにカリステアでは、俺はいつも一人で食事をとっていた。いや、べつにぼっちだった訳では無い。と、思う──。


 各々が会話に花を咲かせ、室内にカリステアでの話と、日本での話が響き渡る。


 カリステア組は、ここの食事の美味しさに感動しているようだ。父さんと母さんも、久しぶりにこの世界の食事を口にして、思わず顔が綻ぶ。


 ミロットもいつものように屈託のない笑顔を浮かべていて、シャランスティも満足気だ。


 兄さんとヘレナさんは、咲桜とずっと話し込んでいて、食事の進みが一番遅い。



「あ、そういえば、イュタベラは迷惑を掛けてませんか?」



 ふと、父さんが健蔵さんにそう言った。急に自分の話題が出たこともあって、俺も次いでに反応してしまう。



「いえいえ、イュタベラくんにはいつも助けて貰ってます。特に──」



 それに応えたのは、健蔵さんではなく、その隣の美桜子さん。


 美桜子さんは微笑みながらそう答え、そして──



「サクをもらってくださって、迷惑だなんてとんでもない。男っ気が無かったサクに彼氏が出来るなんて──」



「ちょ、お母さん!もうこの二人がその話してるのに!もうお腹いっぱい!」



 美桜子さんが楽しげに言うのを、既に顔が真っ赤に染まっている咲桜が遮る。先程からヘレナさんと兄さんはその話をしていたのか。


 兄さんを睨みつけると、ピースサインを送ってくる。ヘレナさんは申し訳なさそうに『ごめんなさいね』と手を合わせている。全く──。



「え、お兄ちゃんやっと婚約者さんできたの?」



 と、間に割って入ってきたのはミロット。京都でも『頑張れ』的なことを言ってたな。


 ミロットの口を拭くシャランスティも、「おめでとうございます」と淡々と告げ、直ぐにミロットの方へ向き直る。ほんとにミロット好きだな…。


 そうした様々な反応を見る中、一番驚いていたのは父さん──ではなく、母さんだ。



「えぇ、ベラに婚約者ぁ…?そんなぁ、小さい頃は『お母さんと結婚するぅ』って言ってたのにぃ──」



「それ五歳の時だろ」



 てか、その時もいきなり「ベラはママと結婚するもんねぇ?」って聞いてきたんだろ。五歳児にそんなこと聞くな。


 この場で一人だけ悲しむ母さん。父さんは健蔵さんからもらったハンカチで目元を押さえている。そんなに?



「いや、僕もね、イュタベラは婚約者なんていらないって言うんじゃないかと思ってね。こっちも、イュタベラには女っ気が無かったから──」



「よーしそろそろ本気で怒るぞー?」



 食事を済ませ、会話を楽しむ。あぁ、こうやって馬鹿みたいな会話をするのも、やはり楽しい。


 いつの間にか全員の食事が終わっており、美桜子さん、シャランスティ、母さんが食卓を片付ける。


 俺も部屋に戻ろうかと、椅子から立ち上がった直後──



「いやぁ、流石出来たてのカップルだなぁ。仲良しで何よりだな、ヘレナ?」



「ふふっ、えぇ。お二人共、顔が真っ赤です」



「「──う、うるさいっ!」」



 仲良く声を重ね、どっと笑いに包まれて、この食事会は幕を閉じた。

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