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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第八章 想いを形に
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第75話 数少ない理解者

 

 その後兄さんとヘレナさん(ついでに行飛)は、買い物を済ませた。


 そして直後、クイック・サモンの効果が切れ、兄さん達はカリステアへ帰って行った。


 その光景を見ていた行飛は、まぁ、当然の如く──



「イュタベラ、説明してもらうばい?」



「はぃ…」



 まぁ、ここまで見られたのだ。気づかない方がおかしい。


 俺が異世界人である事を知っているのは、今のところは咲桜、健蔵さん、美桜子さんの三人だけ。そしてここに、行飛が加わる。


 俺は行飛に、俺の身内のことやここへ来た経緯、咲桜の家で居候させてもらっていることなど、なるべく分かるように説明した。


 誰にも聞こえないように、場所はショッピングモールから誰もいない公園、その中のベンチへと移している。


 そして、一通り要旨のみを話し終える。隣に座る行飛は、何やら考え込む様に右手を顎に添え、俯く。


 恐らくは、今までの俺の行動を振り返っているのだろう。


 そうして行飛が、記憶を辿って、辿って、辿り終え、顔を上げる。


 そして行飛は、こちらへ顔を向け、一言。



「イュタベラ、大変やったんやなぁ」



「憐れむな憐れむな。俺は日本(こっち)カリステア(あっち)も気に入ってるから」



 憐れみの目で俺を見つめる行飛に向け、俺はそう断言する。


 あぁ、確かに、最初に日本へ来た時は大変だった。


 何が起こるか分からない、未知の世界。カリステアの常識が通用せず、はたまた生物が生存できる環境なのかかどうかさえ怪しかった。


 ただ、今となっては、ここに来て良かったと、胸を張って言える。


 ここには魔法がない代わりに、科学という未知の力が存在している。


 カリステアは魔法によって発展した土地だが、日本、いや、地球は、科学によって発展した土地だ。


 何で発展するかによって、こうまで世界観が違うというのは、とても興味深い。


 それに、ここには咲桜やその家族がいる。行飛もいる。真也もいる。その他にも、クラスメイトが、先生たちが、俺に関わった沢山の人がいる。


 一年も経っていないのに、こんなにも大事な人がいる。それが、どれだけ嬉しい事か。幸せな事か。


 あと約四ヶ月。それだけの時間しか残されていないかと思うと、途端に寂しさが押し寄せる。


 だが、問題ない。カリステアで頑張れば良いのだ。()()()()()()()も、嘘ではない。


 だとしたら、こんな寂しさなんて、ほんの一瞬の感情に過ぎない。


 その時その時の時間を楽しむだけだ。



「よし、じゃあ用も終わったから、帰るか」



 自分の中でそう結論づけ、行飛と共に帰る。


 そして、帰路の分かれ道。



「んじゃ俺こっちやけん、また」



「じゃあな」



 互いに手を振り、自宅へと向かう。が、直後。



「ちょっと早いけど、メリークリスマス!咲桜さんとせいぜいイチャイチャしとけ!」



「…っ!うるさい!余計なお世話だ!」



 全く、気の良い友人を持ったものだ。

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