第68話 蛇足:新幹線内にて
修学旅行が終わり、今は帰路に着いている。
その新幹線内にて──
「もう終わっちゃった〜。早かったね〜」
「そう──なのか?あー、今年は帰りが例年より一日早かったんだったか」
隣の席、分かりやすく落胆を露わにする咲桜は、まだ京都に未練があるようだ。
他の皆もテンションが下がってはいるが、修学旅行を終えての感想を互いに話し合っている。
「咲桜、もう終わって未練があるのは分かるが、そんなに分かりやすく肩を落としてるとこっちまで負の感情が押し寄せてくる。ほら、笑顔笑顔」
咲桜があまりにも落ち込んでいるので、両手で自分の口の端を釣り上げ、笑顔アピール。それを見た咲桜は微笑をたたえ、「そういえば──」と修学旅行の感想を語り始めた。
東寺でのこと、ミロットのこと、ホテル内でのこと。
そうして楽しい思い出を語り合って、語り合って、語り合って──。
そうして、語り終えたら、あの話になる。
「ベラ、地主神社のときの事だけど──」
当然、と言うべきか、その話になった。
俺の日本の滞在期間は、残り約四ヶ月。
咲桜は、俺がカリステアへ帰ることを、嬉しいことに嫌がってくれている。
そして、俺の告白の件。あまり思い出しなくはないが、咲桜は少しは気にかけてくれていた。
残り四ヶ月の間、俺は咲桜に返事を聞くつもりは無い。だが咲桜も、返事を言わない、ということは絶対にしないだろう。
それでも俺は、今の咲桜との関係性を壊したくない。だから、俺は返事は聞かない。
まぁ、俺が聞かないことを察して咲桜が勝手に言う、ということもあるだろう。その時はその時だ。俺も覚悟を決めなくては。
そう決意しながら、新幹線は福岡へ走った。