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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第七章 修学旅行
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第67話 リア充は〇〇しろ

 

 地主神社、その恋占いの石の元へ辿り着くと、先程とは変わって多くの人々が、石の間を目をつぶって渡っている。


 その周りには、話の通り沢山の人が助言──及び邪魔をしている。


 また、これは片方の石からもう片方の石へ渡るのが正しいのだが、今挑戦しているカップルは、もう片方の所に彼女らしき人が手を広げて待っている。なるほど、見事渡りきればハグしてもらえる、と。



「あ、あの人もうすぐで渡り切れそう」



 咲桜が言ったと同時、目をつぶった男性は女性の元へ。すると女性は、その手を男性の背へ。男性を包み込む腕は優しく、周りで歓声が上がっている。


 そうして二人が神社の外へ出ると、観客も蜘蛛の巣を散らしたように去っていく。



 今なら、誰もいない。



「よっしゃやろうや!真也おら行くぞ」



「うぉっ、ちょ待てっちゃ!」



 いつもよりテンションが高い行飛がそう言って、真也と共に石の元へ歩いていく。


 その途中、不意に俺の耳元でこう囁いた。



「俺こっちで梓さんと真也くっつける作戦決行するけん、イュタベラはこのまま真也連れてって」



 そう言って、行飛が真也から手を離す。俺は戸惑いつつも、真也が行くべき、十メートル先の石へ。



「イュタベラ、何もすんなよ?」



「ん?何もするつもりないけど?」



 何故かそう真也に睨まれ、困惑。そして真也は観念したのか、目を瞑る。



「よーし!じゃあそこで五回くらい回転してー!」



 もう片方の石から、行飛が大声で指示を出す。


 真也は「えー」と言いつつも、その場で五回転。


 足元が覚束無いまま、真也が歩く。その横を、俺も並行して歩く。


 真也はしかし、その足取りは順調に、ゆっくり歩みを進め、三メートル、四メートル、五メートル…。



 そして、残り一メートル、もう少しでゴール、という所だ。



「やっべ躓いた」



「ふぇっ!?」



 真也が石へ辿り着く直前、行飛が抑揚のない声でそう言い、梓を石の傍へ。


 そうして梓が石へ来れば、あとは先程の男女のように──



「ん?これ着いた?でもこれ石?ゴツゴツしてなくね?───え?」



 足元に感じる感触を不安に思った真也が、その場で目を開ける。そして、驚きに数秒止まった。


 それはそうだろう。自分が好意を寄せている人物が、間近に居るのだから。


 そうして真也、梓がお互い止まり──



「──イュタベラ、行飛、覚えとけよ」



 そう低く、しかし顔を赤らめながらそう言った。




 その後は、行飛は「やらない」といって棄権、梓も先程の真也との接触が恥ずかしかったのか、棄権した。案外、真也と梓は両思いだったりして?いや、梓はミロットが──これ以上考えるのはやめよう。



 そして、次は咲桜がやる、という事になった。


 十メートル先の石へ駆け足で向かい、目をつぶって十回ほど回転。フラフラになった足でこちらへ向ってくる。


 残り三メートル程のところで、行飛の動く気配。先と同じことをするつもりのようだ。



「行飛、さっきと同じことやったら、分かってるな?」



 小声でそう言って、行飛を牽制。当の本人は「な、なんの事?」としらばっくれている。



「はぁ、しょうもないからやめろよ?そんな事するのは真也でじゅうぶ──」



「もうすぐかな?───わっ」



 行飛へ忠告すると同時、咲桜の小さな悲鳴。


 足元に大きめの石があったようだ。このままでは頭から転ぶ。その前に──



「よっ──と、危ない危ない…」



 咲桜の転ぶ先に予めしゃがんで待機。倒れてきた所に手を添え、咲桜を抱きかかえた。


 抱きかかえた。


 抱きかかえ──



「あっ──」



 その事実に気づき、周りを見れば、行飛、真也が口を揃え──



「「──やるやん」」



 梓はと言うと──



「リア充がさっさと結婚しろ」



 どうやら俺は、黒歴史というものを作ってしまったようだ。



 ――――――――――――――――――――――


 そうして、顔を赤らめた咲桜と先のことを茶化す三人と共に、最後の集合場所へ。



「皆集まったかー?それじゃあ今から帰るぞー」



 午後三時、こうして俺たちの修学旅行が幕を閉じた。

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