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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第七章 修学旅行
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第59話 京都観光


こうして、修学旅行最初の授業、京都の遺産巡りが始まった。


主に時間が取られるのは明日な為、この時間は殆ど自由時間と言っても過言ではない。いや、この遺産巡り自体が一種の自由時間なのか…?


ともかく、俺と咲桜、行飛、真也に、もう一人の女生徒、咲桜曰く『腐女子』とやらの生駒梓(いこまあずさ)と共に、京都での行動を開始する。



「えーと、最初はどこに行くんだったか?」



「最初は東寺っちゆーとこよ。俺と真也は小学校ん時行ったことあるけん、場所は頭入っとる」



 行飛と真也は小さい頃から仲が良いらしく、小学校も同じだったらしい。


話に出てきた真也も、行飛の隣で頷いている。


一応、事前に用意した観光予定表を見ながら、バスの出発時間やバス停、目的地までの道のりを確認。それを得意の記憶力で暗記し、バス停へと向かう。



「みんな、バス来たよ〜」



バス停に着いた俺たちは暇を潰す。バスが来ると梓が知らせ、班員がバスの中へ。



「ねぇベラ、わくわくしない?」



「んー、まぁちょっとはな。」



とは言いつつも、とてもワクワクしている。


何故か咲桜の前では冷静でいたくて、つい見栄を張ってしまう。これも恋愛感情の弊害なのだろうか──。







バスが目的地付近のバス停に停止し、俺たちは目的の東寺へ。


大きな門を潜って少し歩く。遠くにそびえ立つ高い建物が東寺だ。


これは五重塔(ごじゅうのとう)と呼ばれる建物で、屋根が五層分あるためこのような名前がついている。


これはおよそ千三百年前に建てられたものらしいが、そんなに長持ちするものなのだろうか?整備はされているだろうが、それでもカリステアではありえない程の耐久性だ。


また、天高く聳える姿も凛々しく、思わず背筋を正しそうになる。



「あ〜、今整備中だって〜。白い布で覆われてるからまさかとは思ったけど…残念だなぁ」



「そう落ち込まないの、さくらん」



「あずさちゃぁん〜」



 ──などと茶番を挟み。



しっかりレポートを書いて、次の目的地、清水寺へと向かった。




 ――――――――――――――――――――――



「人が…多い…。はぐれそう…」



「ベラ〜ちょっと速いよ〜!もう少しお土産見てこうよ〜!」



 清水寺へ向かう道中。坂の上に清水寺があり、今はその片鱗しか見えないが、ここからでもわかる。清水寺の素晴らしさ。


事前に読んだ資料によると、この建物には釘が使われていないらしい。釘を使わずにこのような建物を作ることが出来るとは、昔の日本人は神かなにかか?


そして、その清水寺を見に沢山の人がこの大通りを登っていく。


咲桜達は両隣にある店に顔を出しており、中々前へ進めない。


と、そういえば、今日は弟──ミロットの誕生日だったな。カリステアへ帰るまであと少しだし、土産でも買っておこう。



「ベラー!このお面可愛くない?こんこん」



「キツネの面か…地味じゃないか?」



「彼氏さん!さくらんにそんなこと言わんどいて!」



「お、おう…?」



これも『常識』とやらなのか?女性には安易に地味と言ってはいけないらしい。



「じゃあ、俺もなんか見るよ。咲桜、おすすめは?」



店内を忙しなく歩き回る咲桜へ、そんな質問をしてみる。


咲桜は、「これとか可愛い!」と俺の言葉が聞こえていないようだ。



「おい、イュタベラ、京都来たんやったら木刀買わんと」



「ぼくとう?あぁ、模擬戦で使う剣か」



そういえば、歴史の教科書に刀を使っている絵があったな。人に向けて刃を向けるのは感心しないが、この木刀は観賞用にはいいかもしれない。



「んー、でもなんか違うんだよなぁ…」



ミロットに上げたいのは、もっとこう、ミロットに似合うような、可愛げのある何か。確実にこれは上げたくない。これは兄にあげるべきだ。


何かミロットが欲しそうな物は…。



「ベラー!このキツネのストラップ可愛くない?」



「んー?また地味な…って、それだ!!!」



「うぉっ!隣でいきなり大声出さんでよ!ビビるやん!」



隣で行飛が抗議し、真也も耳を塞ぐが、どうでもいい。見つけた、ミロットに似合う土産!


急いで咲桜の元へ向かい、ストラップを吟味。


少し考え、清水寺の上に立っているキツネを模したストラップを購入し、満足。


兄の為に木刀を、父と母にはネックレスを既に買った。俺はもう買うものは無い。



「ベラ、そういえば、何がそれだ、なの?」



先程の店を離れ、清水寺へと向かう途中、咲桜が聞いてきた。



「あぁ、カリステア…じゃなくて、故郷にいる弟が今日誕生日だからな。何がいいか迷ってたんだ」



カリステアの事を『故郷』と言うのは、俺が異世界人だとバレないためだ。バレた途端、何をされるか分からない。



「へー、イュタベラっち弟おるんか。どんな子?」



「とにかく可愛い」



「えっと…他は?」



「可愛すぎる」



「お、おう…」



と、弟について話していると、梓が立ち止まった。



「ねぇ、ちょっと待って。誰か英語できん?この人なんち言いよん?」



見れば、梓が金髪の男女に話しかけられている。


京都には外国人が多く、この人たちも多分外国人だろう。日本人は黒髪黒目だからな。


困っている梓に四人で駆け寄り、男女の話を聞いてみる。



「Excuse me. Is Kiyomizu Temple here?」



「あぁ、なるほどな。Yes,it is.Have a nice day」



「Thank you! Enjoy your school trip!」



清水寺はここですか、と聞かれたため、肯定すると、修学旅行を楽しめよ、的な言葉が帰ってきた。そうして、そのまま二人は坂を登っていく。



「──イュタベラ、かっけぇわ」


「イュタベラくんやっぱポテンシャル高いわぁ…」


「俺英語話せんき羨ましいわ」


「ベラ、英語話せたんだ…」



と、皆が口々に賞賛するが、これが凄いことなのかはよく分からないので、取り敢えず笑っておく。


そうして俺達も坂を登ろうと、歩き始めた、その時だった。



「あれ、イュタベラくん、あの子困ってない?外国人っぽいけん、またお願い」



梓がそう言って、前方にいる黒髪でない子供を指さす。


それに従って、視線を向けると──



「どの子?あぁ、あの水色の髪の子か」



「結構ちっちゃいけど、一人で来たんかな?」



「──」



何故だ?これは俺の見間違い…ではないな。行飛達も、他の観光客もみんな見えている。


とすると、まさか──。



「あれ、あの子、ベラに似てる気が…」



「──多分だけど、あれは」



咲桜の問に、答える間もなく──



「あ!お兄様!見つけた!やっと見つけた!」



「──ミロット…」



何故か日本にいる、俺の可愛い弟と、再会した。

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