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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第六章 芽吹中文化祭
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第50話 文化祭前日


 そうして日々は過ぎていき、十月に入った。文化祭前日だ。今日まで毎日、準備をしてきた。内装の飾り作り、その飾り付け、テーブル、椅子等の改造、配置。メニューの見直し。そして──



「…咲桜、本当に明日これ着て接客するのか?」



「ベラ、ここはするのか?じゃなくて、するんですか?でしょ!うわぁ、似合ってる…。ウィッグで黒髪長髪に変えてるけど、違和感ない…。メイド服も着こなしてるし…。私より似合うじゃん。ムカつく」



「理不尽だしそんな口調にはしない」



 現在、七時間目の中盤。俺は教室で、一昨日完成したメイド服を着ている。勿論、そういった趣味ではなく、咲桜にせがまれたからである。断じて女装趣味などない。


 俺は誰にどんな言い訳してるんだ。早く脱ごう。


 そう思い胸元のボタンに手をやると、咲桜がストップをかけた。



「え、もう脱ぐの?ダメだよ、皆にみて貰わないと」



 なるほど、ここは地獄か。現在は教室内にセットした裏方にいる為、ここに居るのは俺と咲桜の二人だけだ。しかし、幕を挟んで向こう側には、最終確認として生徒が数名、設備を検査しており、残りの生徒は適当に雑談をしている。


 咲桜は、この幕をこの状態のまま超えろと言ってるのか。なるほど、咲桜は天使ではなく悪魔だったのか。



「絶対に嫌だ」



「ツンデレありがとうございます…」



「なぜ感謝する、なぜ土下座する」



 明日が心配だ…。



「そんなこと言うなら、まず咲桜がこれ着てみろよ。恥ずかしいぞ~」



「え、私!?私は着る必要ないから!性別逆転喫茶だし」



「ぐ…」



「はい、躊躇ってないで早く皆に見てもらお。人に見られる練習」



「世界一したくない練習だな…」



 しかし、こうなったら覚悟を決めるしかない。俺は立ち上がり、黒く長い、清楚な感じのロングスカートをはたく。そして、首元の赤いリボンを正した。



「…ふぅ。ちょっと待って、心の準備を──」



「うるさい。はいバーン!」



「あ──」



 やはり悪魔だった。幕の前に立ち、深呼吸する間に、咲桜は幕をばっと広げ、すぐさま俺の背中を押した。


 その音に、教室内の生徒の視線が、全てこちらを向く。そして数秒後──



「え、それイュタベラくんよね?可愛い!」

「いっつもはクールな感じなのに、照れて顔が赤いけんめっちゃそそられる」

「ありがとう…ございます…」



 と、女子の黄色い声が聞こえる。あれ、思ったよりは似合ってるのか?咲桜がおかしいだけじゃなかったのか。


 と、女子は良いが、男子はどうだろうか?自分もこれを着るんだから、女子の反応を見て勇気を貰ったならいいのだが。


「…イュタベラなん?転校生の女子が来たんやなくて?」

「めっちゃ美少女やん。こんなん俺着たら嘔吐物処理班用意せないかんくなる」

「うわ、自信なくしたわ。」



 こちらも俺への評価は良い方だが、自分への自信をなくしているらしい。大丈夫だ。お前らも絶対着なきゃいけないし、多分誰でも似合う。





 そうして、数分後、俺に続いて男子が全員着替えた。俺からすれば皆似合っていたが、女子は笑いを堪えている者が数名いた。



 ──明日大丈夫か?

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