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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第六章 芽吹中文化祭
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第48話 メニュー、衣装決め


 そうして内装が決まり、次は喫茶店で出す料理を決める行程に入る。とは言っても、先程咲桜と話したので、これを班員に伝えれば俺たちの班の意見は決まるのだが。



「えー、じゃあ内装は予定より早く決まったから、メニューはじっくり時間を掛けてもいいぞ。どうせ作業に取り掛かるのは明日からだ」



 黒板に書いてある、喫茶店の内装についての案を先生がメモ。そして、メニュー決めを班員で行う。


 俺の意見は勿論、先程咲桜と話していた、



「甘味限定にするっていうのはどう?」

「甘い物を提供するというのはどうだ?」



 話し合いの開始直後、俺と咲桜が同時に口を開き、意見を述べる。その圧に気圧されたのか、ほかの班員は若干引きながら頷く。


 そうして俺たちの班の意見は概ね決まり、具体的に何を出すか、これを話し合う事となった。



「やっぱクッキー欠かせんくない?」



「ケーキは絶対いるやん?」



「私はパフェとかいいかな思っとるよ」



「わ、私はバームクーヘンがいいかなって…」



 五人班で、男女比二対三。俺以外のそれぞれが意見を出す。俺はというと、日本の甘味を詳しく知らず、この会議には参加できそうにない。というか、他の班員の熱意が結構ある。俺、場違いなんじゃ?


 と、一人で落胆していると、隣で肩を叩かれた。



「ベラ、何か意見ある?甘い物」



「あ、あーっと…」



 気付けば、班員の視線が俺に集まっていた。俺の意見を聞きたいのか。大して期待するな。


 さて、甘い物甘い物…。何かあったかな?甘くて美味しい、気に入ったもの…。



「──あ」



 そういえば以前、咲桜と食べた物で、とても甘くて気に入ったものがあった。今は旬か知らないが、あれがもう一度食べられるなら、いや、再現できるなら、今すぐにでも食べてみたい。


 そう思い、提案したのは──



「ベラ、何か思いついた?」



「──かき氷」



「却下」

「かき氷…ふふっ」

「文化祭っち冬やろ?冬にかき氷…」

「ベラ、流石にそれは…」



 皆から向けられる、かき氷よりも冷たい視線。いいじゃないか。美味しかったんだから。夏祭りの時のかき氷、美味かったぞ〜。



「ベラ」



「ん?」



 と、不意に咲桜が俺に呼びかける。他の班員には聞こえない声で、口元を手で隠しながら小声で、



「今度、何か甘い物食べに行こ。流石にここまで常識外れとは思わなかった」



「大声上げて泣き叫ぶぞ」



 俺のセンスを自分で疑い始めた瞬間だった。



 ――――――――――――――――――――――


「よし、お前らの意見はこれくらいか。もっと出るものだと思っていたが、これなら全部メニュー表にしていいかもな」



 皆が意見を出し合い、黒板には先程の内装の案は消え、代わりにメニュー候補が挙がっていた。その中にかき氷が無いことに肩を落とす。


 そんな俺とは裏腹に、先生が全部採用と言ったことに対して、クラス内は大いに盛り上がりを見せている。わぁ、と沸き上がる歓声。俺はその中には入れなかった。



「はい、静かに。それじゃあ次は衣装か。性別逆転喫茶…メイド服とか作るのは大いに結構だが、派手すぎるものは無しだ。男子が着用するんだろうが、スカートにするなら膝丈より二十センチは長くしろ。目が腐る」



 次の、衣装決めの行程に入り、先生から注意が。まぁ、そもそも反対よりの女装姿で、しかもとても短いスカートを着させられるのはごめんだったので、とても有難い規制だ。若干名、落胆している者もいるが。咲桜とか咲桜とか咲桜とか。


 と、今度は各班、合計六班に紙が渡され、そこには『衣装のデザインを書こう。』という文字が。


 班代表である咲桜が悩む素振りを見せ、他の人も「うーん」と唸っている。


 俺も必死で考える。


 そういえば、ここってメイドは普通に居ないのか?と。


 カリステアにいた時は、俺の家にはメイド長、執事長含め、合計二十程メイドまたは執事がいた。他の家にも、少なくとも一人はメイドか執事が居たはずだ。


 そういえば日本でメイドを見たことがない。ましてや執事は、漫画ですら殆ど見たことがなかった。


 その疑問の答えを探るべく。



「咲桜」



「ん?どしたの?」



「日本って、メイドとか執事って居ないの?」



「いる訳ないじゃん…」



 咲桜にだけ聞こえる声で訪ねると、肩を落として呆れられた。しかし、急にぱっと顔を上げると、



「もしかして、ベラの国では…」



「普通に居たけど」



「よし、みんな、ベラがイラスト書いてくれるって」



「え!?」



「おぉ!」

「まじか」

「イュタベラくん、自分の趣味は反映しないでね?あ、出来ないか」



 いきなりの咲桜の提案に、班員が目を輝かせる。余程困っていたようだな…。



「でも、俺の案でいいのか?」



「大丈夫。みんな全然案が出なかったし。本場のメイド服と執事服、どんなのか気になるし」



「多分だけど、後者の念が相当強いな?」



 そうして、俺が衣装を描くこととなった。



 ――――――――――――――――――――――



「よし、できた。どうだ?」



 そう言って、手元の紙を半回転、皆に見えるように差し出した。


 メイド服、執事服どちらも黒を基調とし、肌の露出も極力減らしたのが、カリステアのメイド服、執事服の特徴だ。


 肝心のスカートの長さも、足首まで隠れるほど長い。さて、どのような評価を頂けるのか。



「ベラ」



「はい、決断を」



「ありがとう」



「何が!?」



 咲桜から謎の感謝を貰い、他の班員たちからも拍手が送られた。それに戸惑いつつ、俺たちの班会議は終了し──。






「んじゃ、衣装は高峯さんの班のやつでいいな?」



 各班会議修了後、衣装案を黒板に貼り、多数決を行った。俺たちの意見の圧勝。先生の確認に、満場一致で賛成となった。


 明日からいよいよ、作業行程だ。

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