第47話 文化祭準備
そうして芽吹中学校、ニ年一組の文化祭での出し物は決まり、今日から準備に専念する時間として、七時間目が追加された。普段は時間が伸びることに嫌がっているクラスメイトも、文化祭の準備となれば俄然やる気が違う。こう、背中とかに炎が見える感じだ。
そして現在、六時間目の退屈な授業が終わり、七時間目に入ろうとしている。今は十分間の休み時間なのだが、皆はもう、「何から始める?」とか、「衣装作り任せて」とか、次の時間の準備をもう進めている。普段の授業との違いが面白い。
と、そんなこんなで始業のチャイム音。と同時に、担任の矢野先生が教室の中へ。
「はーい、お前ら席つけー。で、性別逆転喫茶だっけ?何からやるんだ?」
いつも通りの低く重い、しかし優しげな声音で俺たちに問いかける先生。その質問に生徒は手を挙げ、心をひとつに──
「衣装から!」
「レシピ決め!」
「内装しないと!」
「はい、取り敢えず落ち着こうな」
ひとつなのは、文化祭が楽しみという気持ちだけだったようだ。
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その後話し合いの結果、内装の構造を話し合うことになった。さて、やるからには半端なものは作りたくないのだ。本格的な喫茶店を目指そう。
各班で内装を考えながら、本格的な喫茶店にする為に必要なことを知る。
そのためには。
「なぁ咲桜」
「ん?どしたのベラ?」
「喫茶店って、何するとこ?」
「えぇ…」
あぁ、確かに漫画は読んだ。その中にメイド喫茶を文化祭でしている作品もあった。ただ、如何せん喫茶店で何をするのかは分からなかった。
漫画で見た限りでは、ただ皆に料理を提供する場所のように見えた。ここでは料理店を喫茶店と言うのかと思ったが、ファミリーレストランというものがある時点でその仮説は違うと分かる。
「レストランとは何か違うのか?」
「んー、私も詳しくないから分からないけど…」
「けど?」
「確か、喫茶店は軽食だった気がする」
「ん?けーしょく?」
聞いた事のない言葉の響きに困惑。『けーしょく』とは?
「軽食って言うのは、かるーい食事のこと。短時間で食べられる物のことだった気がする」
「短時間で…クッキーとかか?」
「うーん、まぁそれでいいんじゃないかな?あ、レシピ全部スイーツにして、スイーツ喫茶とかいいかも!」
「スイーツ…甘いものか。いいな、それ」
「ねぇ、これいいと思うんやけど、イュタベラ君達どう思う?」
二人でレシピの案を出していると、班員から確認をとられる。話を聞いていなかった俺と咲桜は焦り、取り敢えず肯定。多分いい感じの内装だろう。
「あ、それとね」
その直後、隣の咲桜が補足として──
「やるのは性別逆転喫茶。ベラはメイド服着るんだから、立ち振る舞いも可愛くね」
片目を閉じて、やけに明るく俺に言った。
それに対して俺は。
「…はぁ」
ため息で応じるのだった。
因みにだが、内装は俺達の班の案が採用されたようだった。