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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第五章 家族旅行in長崎
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第36話 牢獄病棟


「ベラ、これどこまで行くんだろ?」



「もうすぐじゃないか?あ、咲桜、多分そこいるぞ」



 奥へ奥へと進み、ゾンビも結構な数倒してきた。ゾンビの生成所のような場所まで来たし、そろそろ終盤だと思うのだが。



「あ、ベラ、あの扉で終わりじゃない?」



 見ると、少し奥の開けた通路の突き当たり、薄暗く照らされた扉が佇んでいる。あそこがゴールだろうか。



「咲桜、油断せず」



「うん、分かってる」



 奥へ、奥へ、奥へ──。



「何もないんかい」



「何もないんかい」



 奇跡的に二人の声が重なり、扉の前へ。


 もう終わりか、と肩を落としながら扉の中に。



『貴様ら、生きてたのか!良かった良かった!わしも全力で走り回って逃げていた所じゃ!その解毒剤も少しは役に立ったかの!その解毒剤はな──』



「いやだから長いって」



 相変わらず話の長い老人だ。もう少し短くできないのか…。


 この研究者の話を要約すると、お互い助かってよかったな、ここは封鎖したから、あとは一つだけ残っている脱出口まで全力で走り抜けるだけ、だそうだ。銃は邪魔だから捨てていけという指示で、銃を籠の中のへ。



「この施設、狭いけど走っていいのか?」



 正直、元病院という設定なのがあり、通路が狭いのもあって、走るのを躊躇う。



「あ、ベラ、その張り紙…」



 隣の咲桜に言われて左を見ると、紙には『院内では走らないでください』との文字が。どっちを信じればいいんだ…。



「まぁ封鎖して来ないって言ってるし、ゆっくり歩くか」



「一応病院だったんだもんね、ここ」



 意見が一致し、目の前の扉を開ける。その先には、薄暗い通路が真っ直ぐに伸びており、最奥には外の光と思しき光が、点のようだが存在している。あそこがゴールだろう。



「にしても、咲桜途中からノリノリだったな」



「シューティングゲームは、前からしたかったの。ほら、銃で人を撃つゲーム、最近流行ってるじゃん?」



「まず俺はゲームをしない」



「…」



 と、呑気に二人並んで歩く。



 ──ここが、まだ牢獄病棟の中だということも忘れて。



 会話が止まって少しした後、その声は天から聞こえた。



「まずい、扉が壊された!ここにも奴らが来る!急げ!」



「うおっ」



「ひゃいぃぃぃ!?」



「おぐぅっ」



 突然の声に少し驚き、咲桜は俺に抱きついてくる。その腕に、柔らかな感触があって──。



「さ、咲桜…!?その、胸が…」



「奴らが来る!全力で走れ!」



「きゃぁぁぁ!!」



 俺の言葉に聞く耳を持たず、ただただ悲鳴を上げる咲桜。直後、後ろの扉から大量の足音が。なるほどまだ終わってなかったのか。早くここから逃げねば。


 ──そう思っていた、矢先である。



「べ、ベラぁ」



「どうした咲桜?」



「こ、腰が抜けて、足に力がぁ…」



「えぇ…」



 その場にへたりこみ、足を震わせる咲桜。これは動けそうにないな。仕方ない。恥を忍んで行動しよう。



「咲桜、ちょっと失礼」



「ふぇ…?何…って、わっ、ベラ!?」



 きちんと断りを入れてから、俺は咲桜の軽い体を抱く。お姫様抱っこ、と日本では言うみたいだな。



「ベラ、恥ずかし──って、はや!ちょ、まってはやいはやいはやい!」



「もうすぐで出口だから、我慢我慢」



 早急に脱出すべく、風魔法の力を借りてスピードを倍にして走る。風のように走るとは、この事だ。



「出口が見えたぞ」



「…うん」



 脱出の直前、ふと後ろを振り返った。



「──」



 何もいなかった事は、黙っておこう。多分あの足音は研究者の声と同じ、録音されたものだろう。日本の技術は凄いな。


 と、そんなことを思いながら、この牢獄病棟からの脱出に成功した。



 ――――――――――――――――――――――


「ふぅ、楽しかったな、咲桜」



「最後怖かった…てか、そろそろ離して、重いとか言ったら殴る」



「シンプルな暴力…。大丈夫、咲桜は軽いから、ずっとこのままでもいいよ」



「いや、普通に恥ずかしいから」



 なんだ、冷めてるなぁ。仕方なく咲桜を地面に降ろすと、



「ありがとね、ベラ」


 と、最高の笑みで、こちらを振り返ったのだった。






「これなら、また来てもいいな」



「ぜっっったいやだ!!」

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