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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第五章 家族旅行in長崎
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第35話 スリラーシティ


「んで、ついた訳だが、なぜ咲桜はそんなに肩を殴るんだ?地味に痛いんだが」



 手を繋いで道を歩き、着いたのはスリラーシティのとあるアトラクション。それを前にした途端に咲桜からの暴力を浴びているのだが。はて、俺が何かしたか?



「咲桜、そろそろ中に入ろう。俺も結構楽しみにしてるんだ」



「も、じゃなくて、は、でしょ!なんで寄りにもよって『牢獄病棟』なの!めちゃくちゃ怖いじゃん!やだやだやだやだ!」



「子供みたいに駄々をこねるな、お化けが目を覚ますぞ」



「ひえぇぇぇ…」



 本当にお化けとか、そういった類が苦手なのだろう。冗談のつもりが本気で怯えている。俺の腕は抱き枕か?


 駄々をこねる咲桜は、普段の落ち着いた可愛さではなく、小さな子供に対して言うような可愛さがあるが、今は放っておこう。とても名残惜しいが。あぁ、とても。



「咲桜、覚悟を決めろ。大丈夫だ、手は握ってやる」



「そ、その手がいつの間にか幽霊と入れ替わってたり…」



「こじらせすぎだ」



 まさかここまでとは…と、早く中に入ろう。


 咲桜の手をぎゅっと握りしめ、中へ入った。



 ――――――――――――――――――――――


 中は思いのほか明るかったが、それは不気味な明るさだった。灯りは点滅しているのが、等間隔に天井に設置されている。なんだかドキドキしてくるな…。


 と、不意に右腕が圧迫された。見ると、咲桜が俺の腕を潰す勢いで、両腕でしがみついている。その暖かく柔らかい感触に、場違いなほどリラックスしていた。



「ほら咲桜、先進むぞ」



「ふぇぇ…わかったよぉ…」



 入口なのだが、咲桜はもう涙目になっている。早く行かないと後に来る客が…。


 いや、咲桜が下向いてれば良い話か。怖いなら下向けば、何も見えないもんな。



「咲桜、そろそろ行かないとまずいから、下向いて目を瞑ってて。俺の腕そのまま捕まってていいから」



「やだ!前向く!目つぶってたら暗くて怖いもん!」



「なんか…うん、じゃあ行くぞ…」



 よく分からないなと思いつつ、漸く前へ進んだ。




『よく来たの!愚かな人間ども!ここは吾輩の研究所だった場所じゃ!裏では病院と言いつつ本命は人体実験!実は先日、人体の生命活動を限界まで延長させる物質が発見されたのじゃ!その物質は──』



「いや前置き長っ」



 入口を入って少し進んだところに、壁にモニターが埋め込まれていた。今、そのモニターに映る胡散臭い研究者の説明を聞いている所だ。聞いたところ、このアトラクションが出来た説明らしい。



『と、説明はこんな所じゃ!じゃから、お前らはゾンビに気をつけ…む?誰じゃ、ドアを無遠慮に叩く奴は!む、ぞ、ゾンビ!?なんでここに──うわぁぁぁ!!』



「ひぃぃぃぃゾンビぃぃぃぃ」



「咲桜、大丈夫だ、そんな生物日本には存在しない」



 あの研究者、結構棒読みだったが、咲桜は入り込んでしまったようだ。さて、先へ行かねば。



「お、この解毒剤が入った銃を当てればいいんだな?ほら咲桜、ふたつ持っていこう」



「こここ、怖いからそれ全部持っていこう?ね?」



「五個も持てないよ」



 ルール通りふたつ銃を持ち、扉を開ける。思えば銃は、カリステアで少し握って以来だな、と思いつつ、 先へ進んだ。





「ベラ、そっち!お願い!」



「咲桜、結構ノリノリだな…」



「案外楽しい!」



 この、『牢獄病棟』のルールは、施設内に蔓延るゾンビを銃で撃つ、というシンプルなものだ。ゾンビの出るタイミングや辺りの雰囲気などにより、このアトラクションは最も怖い、と書いて『最恐』と呼ばれているらしい。


 そして俺が一番怖いのは、咲桜が目を輝かせてゾンビを撃っている事だ。あんなに怖がっていた咲桜が、本当に人を殺しているみたいで怖い…。銃は水鉄砲なはずなのに…。



「ここは全部倒したかな?次行こ、ベラ!」



「あ、あぁ…」



 若干引きつつ、奥へと進んだ。

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