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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第五章 家族旅行in長崎
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第34話 文明の利器


 そうして入口から少し離れたところで、咲桜の足が止まった。辺りは美しい純白の建物が立ち並んでおり、思わず見とれてしまう。


 と、そんな事よりも、だ。



「咲桜、美桜子さん達とはぐれたぞ…。どうするんだ…」


 ホームテンボスに入って早々はぐれてしまった。運良く合流出来るといいが…。


 そう思案していると、隣で膝に手をついて肩で息をしている咲桜は、「ふっふっふ…」と意味ありげに笑うと、


「これがあるじゃん…じゃじゃん!文明の利器、『スマホ』!!」



「す、スマホだってぇぇぇ」



 思わず変なノリになったが、咲桜は右手に薄い板を持ち、ドヤ顔を決めている。可愛い。


 にしても、スマホか。実は咲桜の家でお世話になる事になった数日後、このスマホとやらを俺も貰ったのだが、使い道が分からず放置していた。



「そのスマホだが、それがあるとどうなるんだ?まさか美桜子さん達と連絡出来るのか?」



「そのまさかだよっ!この『電話』って機能を使えば…って、あれ?ベラ、スマホ持ってなかったっけ?」



 おかしいな、と首を傾げる咲桜。あぁ、使い方が分からず家に置いてきたよ。あれは俺にはまだ早かった。うん。



「え、置いてきたの!?えぇ、じゃあ、えぇ…」



 俺がスマホを家に置いてきたことを伝えると、咲桜が分かりやすく肩を落とす。ついでに右手に持ったスマホを見て目を見開くと、それを小さな手提げカバンの中に入れた。



「今LINE…連絡があって、私とベラで楽しんできていいって。でも渡したいものがあるから取り敢えず戻ってきてって」



「ん?あぁ、分かった」





 ──その後美桜子さん達と再び合流し、無料パスという物を貰って、別行動に移った。



 ――――――――――――――――――――――



「ねぇベラ、どこ行く?どこ行く?」



「うん今地図見てるから頼むから肩を揺らさないでくれ」



 別行動をとった直後、何処へ行くかを決めるため、俺と咲桜は地図とにらめっこをしていた。



「えっと?今いるのが入口のウェルカムゲートで、ここから北に行くとアムステルダムシティ、スリラーシティっていうのがあるのか。アムステルダムシティは買い物専用らしいから、スリラーシティってのに行ってみようか」



 現在地を確かめ、今後の計画を立てる。我ながら完璧な計画だと思ったのだが、それを聞いた咲桜は浮かない顔だ。どうしたのだろうか。



「咲桜、どうした?先に買い物行くか?」



「いや、そうじゃなくて…」



 買い物じゃないなら、なんだ?他に行きたいところがあるとかか?



「その、ベラ、スリラーシティの下なんて書いてある?」



「スリラーシティの下?」



 地図をよく見ると、スリラーシティと書いてある下に、補足の説明のようなものが記述されている。



「世界最大級の『ホラー』エリア?ホラーってあれだよな、幽霊だの妖怪だのの奴だよな、それがどうした?」



 咲桜から借りた小説の中のジャンルに、ホラーという物があった。あの小説は面白かったなぁ。まさか死んだヒロインが霊体となって生活していたかと思ったら、実はニートの主人公の方が死者だったとは。



「わ、私、ホラー苦手で…」



 と、顔を赤らめてそう告白する咲桜。ホラー苦手?なんでだ?



「咲桜、ホラーの小説読んでるだろ?苦手なのに読んでるのか?」



「小説とアトラクションは違うの!実際見たら怖いの!」



「じゃあスリラーシティはやめとくか?他にもアトラクションシティがあるし」



「……いや、行く…」



「どっちなんだ…」



「行く!行きます!はい、早く行くよ!」



 顔を再び赤くして怒った咲桜が、ズンズンと先を歩んで行く。おっと、危ない危ない。



「咲桜、待って」



「なに…って、ベラ、あの、夏祭りの時も言ったけど…」



「はぐれたらダメだろ?我慢してくれ」



「…ずるいよ、バカ…」



「なんで罵られた?」



 そうして手の温もりを感じながら、俺と咲桜はスリラーシティへと向かった。

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