第33話 到着、長崎県!
「とうちゃーく!」
いつになくテンションを上げてそう叫ぶのは、淡い水色のワンピースを身に纏う咲桜だ。いつもは長い髪を伸ばしているが、今日はヘアゴムで長い髪をまとめ、『ポニーテール』という髪型にしている。正直名前などどうでもよく、ただただ似合っていて、可愛い。
そして、咲桜の叫んだ通り、俺ら高峯家家族旅行班は現在、宿泊先のホテルに足を運んでいた。荷物等を置いて、例のホームテンボスをなるべく(物理的に)手軽に楽しむためだ。
ホテルは近くに海がある、窓からの景色が綺麗な所で、ネットの画像ではとても綺麗な外装をしていた。俺もネットの扱いが慣れてきたな。
「それじゃあ、受付済ませて部屋に行こうか。そしたらその後は、お待ちかねのホームテンボスだ!」
「「「おーー!!」」」
健蔵さんの言葉を合図に、一行はホテル入口へと向かう…!!
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ホテルで受付を済ませ、スイートルームとやらへ向かう高峯家御一行。部屋の前に立ち扉を開けると、視界に飛び込んで来たのは、これでもかと部屋の面積を独占している、とても大きなベッドが2つ、壁につけて並べられている。その反対側の壁には、申し訳程度の机が、同じく壁に沿って配置されていた。
奥には大きな窓があり、その手前に小さな机と、椅子が二脚、向かい合うように並べられている。
「わー!広い!ベッドふかふか!わっ!ねぇ見て見て!すっごい綺麗な海!」
部屋に入るなり忙しなく動き回る咲桜。部屋の中央で一回転し、そのままベッドに体を預け、沈む体を起こすと、窓側の椅子に座って前のめりに外を見る。
正直こんなにテンションが上がっている咲桜に若干引いているが、まぁそれも咲桜の魅力ということで…。
「ほらサク、外の景色見るのもいいけど、荷物ちゃんと整理してね?これからホームテンボス行くんだから」
咲桜の興奮を抑えるように優しく語りかける美桜子さんの声に、咲桜は「うん、分かった!」と右手に持った荷物を、窓側のベッドの横へ。
「私こっちで寝る!」
「はいはい、分かったわ。それじゃあ必要なもの持ったら、早速行きましょうか」
「そうだな。咲桜がこんなにはしゃいでるとこ見るの久しぶりだし、なんかこの歳でそんなにはしゃいでるの面白い」
「娘を!面白がるな!」
途端、どっと部屋中に笑いが飛び交い、そしていよいよ大本命のホームテンボスへ。
「それじゃあ、楽しもう!」
「「「おーーー!!!」」」
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そして、舞台はホームテンボスへ。
「やっぱり、入口から人が多いな…」
実は、健蔵さんに旅行の事を聞かされてから、俺は咲桜に、ホームテンボスについて教えて貰っていた。なんでも、日本でも有数の『アミューズメントパーク』というものらしい。年間何千万もの人が訪れる人気の場所なのだとか。
「サク、イュタベラ君、はぐれないようにね」
「分かってるって!行ってきまーす!ほらベラも!」
「言った傍から別行動!?」