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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第四章 夏祭り
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第29話 金魚すくい


「ベラ、今日はいよいよ──」



「あぁ、夏祭りだな。今日は遮ってやったぞ」



 毎日のように言っていた咲桜の言葉を、俺は今日こそ遮ってやった。どや。


 頬を膨らませてジト目で見る咲桜はさておき、今日は夏祭り当日だ。咲桜の話では昼くらいに開催されるらしいので、午前中は暇になる。さて、何をするか…。



「よし、じゃあベラ、夏祭り行くよ!」



 と、そう考えていたのだが、咲桜はもう既に行く気満々だ。パジャマ姿ということに目を瞑れば。



「夏祭りは午後からじゃなかったか?」



 と、俺は当然の質問を、目の前で着替えようとする咲桜を止めながら投げかける。


 すると咲桜は赤面しながら、



「え、…っと、一応屋台は出てるから、行こうかなーって…」



 『屋台』が何かは分からないが、目的があるのなら行こう。



「よし、じゃあ行こうか」



「うん!じゃあ着替えるから感想を20分くらい語ってね!」



「あぁ、無理だな」



 ――――――――――――――――――――――


 そして浴衣の感想を30分語ったところで、「そろそろ行こうよ」とまたもや赤面した咲桜が言った。いや、可愛かったから仕方なく言ってやったというか…な?


 そして現在会場にいる訳だが…。



「意外と人いるな…」


 夏祭りはまだ始まっていないのだが、意外と人が集まっている。皆屋台目当てだろうか?



「ベラ、こっちに金魚すくいがあるよ!行こっ!」



 と、いつの間にか少し先に歩みを進めていた咲桜が、こっちこっちと手を振る。桃色の浴衣の袖が揺らめき、風に吹かれる一輪の花のようだ。


 「今行く」と早足で駆け寄り、咲桜の元へ。


 ──そもそも、金魚すくいってなんだ?


 そう思いつつ、咲桜について行った。



 ――――――――――――――――――――――


「ここだよ、ここ!金魚すくい!一度やってみたかったんだ〜!」


 屋台に着くなりはしゃぐ咲桜。と、客に気づいた屋台主が、夢の世界から目を覚ます。


 屋台主はタオルを頭に巻いており、黒い服の上からでも分かるほど屈強な男だ。


 男はその目つきの悪い目をギロリとこちらへ向け、



「あら、お客さん!ぃらっしゃい!やってく?イケメンとべっぴんさんのカップルなら、オマケして、2人で1人分の値段でいいぜ!」



 と、見た目とは裏腹に、晴れやかな声でそう言う男。


 すると、隣にいた咲桜が咄嗟に顔を赤らめ、



「違います!か、か、カップルじゃなくて、兄妹です!」



「お?そうか?でもそれにしちゃ、顔は似てないが…」



「きょ、う、だ、い!兄妹です!」



 頑として兄妹だと言い張る咲桜。屋台主はその声に少し驚きつつ、俺にしか聞こえない声で「頑張れ」と言ってきた。やかましいわ。



「じゃあ、お言葉に甘えてさせてもらおうかな。咲桜も少し落ち着こう、うん」



 一人で「そう、兄妹…兄妹…」といつまでも呟く咲桜を静止させつつ、代金を支払って金魚すくいへ。



「ところで、これってどうすればいいんだ?」



「兄ちゃん、金魚すくい知らねぇのか?あぁ、母国じゃ金魚すくいなかったのか。この『ポイ』って言う網で、この中にいる金魚を掬って、この箱の中に入れるんだ。とった金魚は俺が袋に入れてやるから。あぁそうそう、ポイは破れやすいからな」



 と、屋台主に金魚すくいを教えてもらったおかげで、目の前にいた金魚は全部掬うことが出来た。終わった後、流石に金魚が多すぎたので青ざめた顔の屋台主に殆ど寄付した。



「ベラ、運動神経っていうか、なんていうか、なんかもう凄いね…」



 一方、一匹も取れていなかった咲桜は、肩を落としてへこんでいる。そんなに凄いか?


 双方対象的な反応をした所で、また少し屋台をまわった。






 ──そして、夕方。





「ベラ、夏祭り始まる!始まるよっ!」



「あぁ、そうだな。でも咲桜、だからといってそんなに肩を揺さぶらないでくれ。首が死ぬ」







 夏祭りの始まりだ。

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