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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第四章 夏祭り
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第28話 そろそろ夏祭りらしい


 そして、そんな事があった9日後…。


「ベラ、明日はいよいよ夏祭りだよっ!」



「あぁ、昨日も一昨日もその前の日も聞いたな」



 もうすぐ夏休みらしい。咲桜も、いつになくテンションが上がっている。可愛い。



「夏祭り行ったら何する?チョコバナナ食べて〜、射的して〜、あ、もちろん浴衣でね!あとそれから──」



 ──はしゃぎすぎじゃないか?一周まわって何かの病気ではないのかと疑ってしまう。



「夏祭りか…」



 祭りというからには、なにか面白いことがあるのだろうが、ここの娯楽はどれも楽しすぎる。カリステア国と比べると、種類、質、全てにおいてこちが勝っている。


 しかし、そんな娯楽をやった事があろう咲桜が、こんなにもはしゃぐのだ。期待できる…!!



「楽しみになってきたな…」




「でしょでしょ?でね、ちょっと…」



 思わず口に出た想いを肯定しつつ、咲桜が手を後ろにまわして上目遣いでこちらを見る。



「会場の下見に行かない…?花火とか見やすい位置探したいの」



「『はなび』…?」



 よく分からないが、咲桜の要望とあらば叶えるほかない。二つ返事で肯定すると、「今から行こっ」と手を引かれ、階段を下る。



「お母さん、ベラと下見に行ってくる!行ってきまーす!」




「へ?あ、気をつけてねー!イュタベラくん、サクをよろしくねー!」



「あ、えっと、はいー!」



 ものすごいスピードで玄関を抜け、外に出た。



「会場はこっち!」



 そう言って、俺の手は握ったまま走り出す咲桜。



「ちょ、歩きたいんだけど…」



 聞こえていない。


 仕方なく、咲桜について行くため、スピードを合わせて目標に向かった。



 ――――――――――――――――――――――


 そして、目的地。



「こんな河川敷あったんだな。知らなかった」



 下に流れる川を見ながら、ふとそう呟いた。隣では、キョロキョロと咲桜が何かを探している。



「咲桜?何探してるんだ?」



「花火の打ち上げ場所!何処で上がるか分かったら、見やすい所も自然と分かるでしょ?」



 打ち上げとか上がるとかは分からないが、とにかく花火とやらを探しているらしい。



「多分花火があるとこには人がいるはずだから、人が居るとこを探したいんだけど…」



「人なんか居ないぞ?遠くの方にも…ん?あれじゃないか?」



 俺も咲桜に倣って辺りを見渡すと、川を挟んで向こう側に、小さいが人影があった。咲桜の探している人だろうか。



「あれは…ただの近所のおばちゃんじゃない?あ、そうだ、あの人に何処に花火があるか聞いてみようよ」



「え、めんどくさ…分かった分かった!俺も行くから睨まないでくれ!」



 頬を膨らませ、目を鋭くしてこちらを睨む咲桜。意外と迫力あるな、と思いつつ、橋を渡った。






「あの、ちょっといいですか?」



「ん?なんだい?」



 おばちゃんの元に辿り着くと、咲桜は「まって、どう話せばいいんだろう…」と頭を抱えてしまったため、仕方なく俺が話しかけている。おばちゃんは、白髪が所々見えてはいるが、顔はすごく若々しい。40代くらいだろうか。


 しかし、髪も目の色も違う俺を不審に思ったのか、その垂れた目で俺の顔をジロジロと見つめている。



「えっと、何かついてますか?」



「──あぁ、ごめんねぇ。外国の方と話すのは初めてでねぇ。で、何の用だい?」



 俺が恐る恐る尋ねると、おばちゃんはニッコリと目を細めて微笑み、俺たちの用事を聞いてくれた。


 そして、花火の関係者がいないか問いかけたのだが。



「見てないねぇ。ごめんね。でも、明日の花火はここら辺であるから、ここに来ればよく見えると思うよ。若い男女2人なんだ。楽しんできな」



 聞いてみたところ、おばちゃんは関係者を知らないようだ。残念。


 あれ、というか、若い男女で楽しむって…。



「わ、私たち、そんなのじゃなくて!そう、兄妹!兄妹なんで!」



 と、若干傷つくことを、今まで黙っていた咲桜が叫んで、この場は幕を閉じた。



 ――――――――――――――――――――――


 ──夕方。高峰家にて。



「結局いなかったなぁ…」



 はぁ、とため息をつく咲桜。あの後も探したのだが、結局見つからずじまい、ただ散歩に出かけただけとなった。



「まぁ、おばちゃんがアドバイスくれたから、良かったじゃないか。明日はあの辺にいよう。」



「うん…」



 膝を抱えてリビングのソファに座る咲桜。元気が無くなってるな…。



「咲桜、明日楽しみ?」



 もしや明日が楽しみだという気持ちを忘れたのかと思い、そう問いかけると、咲桜は首を横に振った。



「ううん、楽しみ。けど、折角ならベラといい所で花火見たかったなぁって…」



 なるほど、俺の為を想ってくれていたのか。体育祭の時の俺のようだが、ここはバシッと言ってやらないとな。



「咲桜、俺は、咲桜と見れるならどうだっていいよ。ありがとう」



「あぅ…。分かった分かった分かりました。もう拗ねません」



 と、若干格好つけた感じにはなったが、咲桜も元気を出したようだ。


 と、キッチンで夕食を作っていた美桜子さんが、「出来たわよー」と合図する。


 それを聞き、俺も咲桜とテーブルにつこうとして──。



「咲桜」



「ん?」




「──明日、楽しみだな」



 そう言って、夕食の席に着いた。

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