第22話 クラス対抗リレーその1
その後昼休憩が終わり、いよいよ体育祭も大詰め。ここからは、各学年対抗のリレーが始まる。
最初は一年生、次に二年生、最後に三年生。
俺らは出番まで応援席で待つのだが、座ってばかりでは体が鈍ってしまう。
ということで、体を解しつつ出番を待つことにした。
因みに、今のところ、各競技の順位は、百メートル走が二位、大縄跳びが二位、俵担ぎが三位、スウェーデンリレーが一位、先程の玉入れが一位。
体育祭では、順位によって点数が入るらしいのだが、競技によって点数の配分が異なり、それを生徒は知らない。
故に、一位を取れば良いのだが、今のところどのクラスが優勢なのかは分からない。
なので、このリレーでも優勝しなければ、というプレッシャーがかかる。
点数さえ教えてくれれば、少しは気が楽になるのに。
と、準備体操と共にそんな事を考えていると、どうやら一年生のリレーが終わったようだ。
このクラス対抗リレーで、体育祭の全競技が終わる。気を引き締め直さねば。
「ベラ、もう始まるよ」
両方の頬を叩いて気合を入れていた俺に、赤い顔の咲桜が声を掛ける。
当初の目的、咲桜を楽しませるという事を第一に、リレーが始まろうとしていた。
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先程、昼休みでの事。
「ベラってばぁ、たまいれ?の時凄かったわぁ。お母さん感激しちゃったぁ。抱きしめていいぃ?」
「だめ」
美桜子さんとタナーシャが作ってくれた昼食を食べながら、そんな会話をしていた。
俺は『おにぎり』を頬張りながら、タナーシャは俺の隣で俺の肩に頭を乗せて、そう問いかける。鬱陶しい。
早々にここから脱出するべく、昼食を頬張って応援席へ。タナーシャの頭を肩からどけると、「あぁ〜」と残念そうにする顔が見えた。
まだ午後の競技まで二十分ほど時間があるため、応援席には人は余りいなかった。
しかし、入場門側では、俺のクラスの人が集まって、何やら話している。
「ん?みんな、何話してるんだ?」
その輪へ飛び込むと、皆は驚きの表情を浮かべ、すぐ様俺から視線を逸らした。
「?」
訳が分からず呆然と立ち尽くしていると、後ろから咲桜が来る。
「ベラ、ちょっと早い…もう少しゆっくりしようよ…」
肩で息をしながら、そう俺に文句を垂れる咲桜。咲桜が現れた直後にも、また皆は俺と咲桜から視線を逸らす。
「みんな、どうしたんだ?何かあったか?」
どうしても気になり、そう問うと、一人が「えっと…」と言葉を発し──
「二人っち、付き合っとん?」
──ん?
え?
「「なな、何いきなり!?」」
咲桜と俺の驚きの声が重なる。
その様子を見たクラスの皆は、今度はこれでもかとニヤニヤしながらこちらを見てくる。恥ずかしい。
「だって、お昼も一緒に食べよったし、いっつも仲良いやん?」
それだけで判断するのは早計だろ…。
とは思いつつも、咲桜とは良い関係を築きたいとも思い、胸中がごちゃごちゃしている。
あぁ、そんなこと言うから、咲桜も顔真っ赤じゃん。
「まぁ、その話しよっただけ。お幸せにね〜」
と、最後までニヤニヤしながら解散。
──気まずい。
「さ、咲桜…?」
取り敢えず、意識がどこかに飛んでいる咲桜を呼び戻す。顔は赤いままだ。
「べ、ベラ…えと…」
お互いに意識してしまい、会話がしどろもどろになる。
と、そこへ──
「皆さん、あと五分で、午後の競技を再開します!生徒の皆さんは、応援席に戻ってください!」
体育委員長の放送。そのタイミングの善し悪しはともかく、俺たちは応援席へ向かった。
「咲桜」
「ひゃいっ!?」
「そんなにビックリしなくても…さっきの話は、考えないようにしよう。競技に支障が出る」
「う…うん…」
そして一年生のリレーがある間に心を落ち着かせ、現在に至る──。
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入場門に並んだ俺らは、体育委員長の指示を待っていた。
数日前に一度、リハーサルという形でリレーを行ったことがある。
その時は、俺らのクラスが圧勝していた為、今回も余裕を持ちたいが。
「本番は、何があるか分からないもんなぁ…」
「お待たせしたした!今から、二年生クラス対抗リレーを始めます!二年生の皆さんは、入場してください!」
そう呟いたのと同時、体育委員長の放送。
最後の競技、二年生クラス対抗リレー、開幕。