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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第三章 体育祭
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第18話 大縄跳び その1


 数日前、放課後──。


「おい!もうすぐ本番なのに、大縄跳びこんなんで大丈夫なん!?」


 そう大声をあげるのは、身長が小さいが、筋肉質な体で目付きの鋭い坊主の男子、長谷川真也(はせがわしんや)だ。


 彼はそのずば抜けた筋力で、大縄の回す役を担当している。が、練習しても練習しても誰かが引っかかり、70回で止まってしまう。その事に堪忍袋の緒が切れたようだ。


 まぁ、最初に練習した時が60回で、その後練習しても10回しか記録が増えてないので、焦る気持ちは分からなくもないが。


「てか、誰が引っかかりよん?今引っかかったのは?」


 その声に、恐る恐る手を挙げるのは、俺が最初に日本に来た時、咲桜を虐めていた、3人のうちの1人。組体操の時にいた2人ではない、もう1人の人物だった。


(まなぶ)!真面目にやりよん!?もっと飛べちゃ!」


「と、飛びよるし!そっちこそ縄回す時もっと大きく回せ!」


「あぁ!?俺が悪いんか!?飛ばんお前が悪ぃんやろうが!」


 これはまずい。今にもお互いに殴り合いそうだ。止めねば。


 そう決意し、真也と学の間に割って入る。


 が、しかし──


「まぁまぁ、ちょっと落ち着いて──」


「「お前は黙っとけ!」」


 2人同時にそう言われ、次いでに突き飛ばされた。


 ムカついたが、魔法は使わない。以前、体育倉庫に咲桜と閉じ込められた時、魔法が暴走し、それをカリオンに話したところ、極力魔法の行使は避けるよう言われた。


 そんな事を考えている内にも、2人の距離は縮まり、喧嘩もヒートアップしているようだ。


 俺がダメなら他のみんなに、と思い、当たりを見回したが、皆遠くでその様子を見つめるのみ。


 止められるのは、俺しかいないようだ。


「真也、学、やめろ!」


 真也が学に掴みかかりそうになったので、俺は慌てて大声を出す。と、2人が俺の方を見た。


 鋭い剣幕で俺を見つめる2人に、俺は言葉を続ける。


「今争っても仕方がない。出来ないことは悪いことじゃない。悪いのは、反省しないことだろ?学は十分反省してるし、こんな喧嘩するくらいなら練習した方が効率的だ」


 そう諭すと、2人は理性を取り戻したのか、お互い「悪かった」と頭を下げる。


 そして、練習再開──。


「せーの!」


 合図と共に、大縄が動き出す。ただ大縄が回転しているだけの単調な動きだが、これに引っかかる人もいると言うのだから不思議だ。縄が来ては飛び、縄が来ては飛び、それを繰り返すだけの単純な運動。


 先程の学も、まだ引っかかってはいない。


 今のところ、大縄跳びの最高記録は、70回だ。


 最初に飛んだのと10回しか変わらない最高記録とは、情けない。


 と、そんなことを思っているうちにも、大縄跳びの回数は増え続け──


「50!」


 記録が50を超える。この辺りから、皆の体力が無くなっていくのだ。


 掛け声にも、疲れが見える。


 しかし、縄は止まらない。飛び続けなければ。


 このままでは、本番で恥を晒すし、なにより咲桜にいい所を見せられない。


 いや、別に咲桜にかっこよく思われようとは考えていないが。


「60!」


 とうとう50回に到達。あと11回飛べば新記録だ。


 皆で息を合わせ、縄を飛ぶ。


「65!」


 あと、6回。


「66!」


「67!」


「68!」


「69!」


「70!」


 あと1回で…!


「ななじゅういち!」


 その掛け声が、外に響いた時、縄は俺らの足元を通過していた。


 新記録、達成だ。


 最終的に、最高記録は82回となった。


「やけど、他のクラスは90とか100いっとるらしいよ」


 真也がそう言うが、今日は皆疲れ果てている。限界だろう。




 そして、その後大縄跳びの記録は伸びぬまま、この日を迎えたのだが──。

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