第15話 体育祭練習その3
翌日、組体操の練習が終わり、放課後──。
「昨日はリレーの練習したから、今日は大縄やるぞ。男子と女子に分かれろ」
先生の指示に従い、クラスは男女別でグラウンドに集まった。
咲桜によると、『大縄』とは今先生が持っている縄を飛ぶ、という単純なものらしいが、案外難しいという。
まずあれを飛ぶ、というのが意味不明だが、取り敢えず練習をしてどういうものか知ろうと思う。
と、先生が縄を、男子のグループには行飛に、女子のグループには真奈美に渡した。
「それじゃ、各グループ練習始めろ〜」
その一声で、男女共に縄の先端、持ち手のような所を、両端1人ずつ持った。持ち手は、体育祭練習が始まったその日の放課後に決めた。
男子グループの練習。2列で並び、真ん中を境目に、近い方の縄の持ち手を向く形で立っている。皆が一方向を向くと、1番後ろの人が縄を見るのが苦労するらしい。まず縄を見るってどういう事だ。
「行くぞ〜」と、並び終わったタイミングで縄の持ち手が声をかける。
「「せーのっ!」」
皆が声を発した直後、俺の右足の傍にあった縄が、俺の上を通って振り回される。
突然の縄の移動に戸惑いつつ、これを飛ぶ。
飛んだ後。すぐ次が来る。これも飛ぶ。
「──ご、ろく、なな!」
飛ぶ度皆が声を合わせて数を数える。大縄は、飛んだ数を競うものだそうだ。
掛け声に合わせ、飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。
「──にじゅよん、にじゅご、にじゅろくっ!」
絶えず足元に迫る縄を飛び続ける。
そして、皆が60を数えた当たりだ。
不意に大縄の動きが止まった。
「あ、俺だわ。ごめん」
誰かが引っ掛かったようだ。そちらを見てみると、縄がその人の両足の間にある。
「これ、どれくらい飛べばいいんだ?」
ふと気になり、隣を飛んでいた行飛に問いかけた。
すると行飛は、「そうやな…」と腕を組み、
「まぁ、100いったらOK」
「100か…大丈夫か?」
「まぁ初っ端60はいいんやない?練習したら100余裕でいくやろ」
親指を立て、自信満々に断言する行飛。幸い、このクラスの男子は皆運動神経が良さそうだ。さっきの人も、恐らく気を抜いたのだろう。
と、そう考えながら咲桜たち女子グループの方を見た。女子は運動できる人は少なく、真奈美と紗良が抜きん出てできる、といった感じだ。
咲桜はと言うと、普段読書や『アニメ鑑賞』の為に部屋に篭っているため、運動は壊滅的に出来ない。
咲桜の事が心配になり、縄を飛んでいる咲桜の方を見る。
──おかしいな、女子はさっき練習を始めたばかりなのに、咲桜だけ息が荒い。
「体力…」
無いな、と俺は一人呟きながら、練習に戻った。
その時だ。
──バタン、と音がした。何かが落ちるような、鈍い音。
「何の音だ…?」
その音源を探すべく、辺りを見回すと─
「え、ちょ、咲桜!?どうしたん、大丈夫!?」
──そこには、地面に倒れ、息を荒くして倒れる咲桜の姿があった。