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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第二章 学生としての時間
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第11話 とある雨の日

「…雨、止まねぇなぁ…」


 土砂降りの外を窓越しに見ながらそう愚痴る。


 現在は6時限目、数学の時間だ。


 とは言っても、今やっている授業も理解しているから、聞くだけ面倒なのだが。


 先生が何かを(授業内容を)話している中、窓際の席の俺は退屈に外を見ている。


 それに何か意味があるのかと言えば皆無だが、強いていえば暇潰しだ。


 どの世界でも、知っていることを教えられるほど面白くないものは無い。


 ─キーンコーンカーンコーン…


 不意にチャイムが鳴った。授業終わりの合図だ。


 はぁ、これで今日の授業は終わりだ。


「きりーつ!気をつけ、礼!」


 あざしたー。


「今日はホームルームやってから掃除だぞー、皆教室待機なー」


 と、授業終了後数学の先生が言ってきた。


 言われた通り教室に待機していると、担任の矢野先生がドアから現れた。


「えーっと、この後掃除だが、お前らは体育館の掃除をしてくれ。終わったやつから帰っていいから。その代わり先生が点検とかするから、サボってもバレるぞ。あ、今日全部活休みの日だから部活ねぇけど、帰ってゲームばかりじゃなく勉強しろよ」


 と、教卓に立った先生がそう言うと、足早に教室を去った。


 ─掃除面倒いな。サボろうかな。


「ベラ、早く行こ」


 隣の席に座っている咲桜が、声を掛けてきた。サボりたいが、皆体育館に向かっているため、俺もそれに倣う。


「体育館はちょっと広いから、頑張ろ」


 そう言い、隣で微笑んでいる咲桜。


 その笑顔がまた可愛いので、俄然やる気が出た。


 ―――――――――――――――――――――――


 体育館に着き、掃除場所の割り振りが始まった。


 ステージに5人、ステージ側の床が5人、玄関側の床が7人(玄関込)、2階の校舎側の窓が3人と床が3人、2階の正門側の窓と床が3人ずつ、そして、体育倉庫の掃除が2人だ。


 計31人、クラス全員が掃除をする。


 そして、俺と咲桜は体育倉庫の班になった(楽そうだったから)。


 それぞれ持ち場に着き、掃除が始まる。


 俺と咲桜が持ち場に着くと、みなは既にそれぞれモップ、箒、雑巾等を持ち、清掃を開始していた。


 一歩出遅れた俺と咲桜は、まず何をしようか悩む。


 実際、体育倉庫は部活で使う人も多いようで、既に綺麗だ。


 『ボール』や『跳び箱』等もきちんと整理されており、俺らが手を加えても荒らす予感しかない。


 さて、どうしたものか。


「咲桜、どうする?やる?」


 と、隣にいる咲桜に問いかける。


 すると咲桜は頬を膨らませてこう言った。


「あー、悪いんだー。サボったら怒られるよ。確かにここはもう綺麗だけど、それでも掃除するのが『常識』だから。分かった?」


 なるほど、『常識』か。久しぶりに聞いたな。


 常識ならば仕方が無い、と俺らも早速清掃に取り掛かる。


 さぁ、雑巾を持ってお掃除だ!


 ―――――――――――――――――――――――


 と、意気込んで15分後。


 最初は綺麗だと思っていたが、掃除してみると案外埃や汚れが気になる。


 壁に付着したインクの様な汚れも、綺麗に落とさないと何だか気分が悪い。


 咲桜と同じ考えなのか、先程から同じ所を何度も雑巾で擦っている。


 さて、俺ももう少し頑張ろうか、と再び雑巾を持った。


 また、皆は既に終わった様で、もう帰っている。


 ─静かだ。


 倉庫にある小さな窓を見れば、未だ雨は止んでいない。


 と、窓が汚れているのに気づいた。


 俺は倉庫前の扉を離れると、そちらへ向かった。


 倉庫自体は狭いが、道具があちこちにある為移動が困難である。


 また、咲桜の姿も見当たらなくなっていた。


 と、窓際に着いたところで、しゃがんで床の掃除をしている咲桜を見つけた。


 俺は窓の汚れを落とすと、咲桜の方へ行くために奥へ。


「咲桜、そろそろ帰るか?」


 と、蹲って掃除している咲桜に問う。


 咲桜は手を止めてこちらを見ると、


「あ、もう少し…。これ終わったら帰ろ。」


 そう言って、咲桜は再び掃除を再開する。


 俺も手伝おうと、咲桜の隣に並び、しゃがんで床を磨いていた。


 集中して掃除をしていると、時間の感覚が曖昧になってくる。


 床の汚れ(結構な強敵だった)を落とし終え、咲桜と共に倉庫を出ようと扉に手をかける。


 …ガチャガチャ。


 引き戸を開ける音が響く。


 あれ、開かない。



 …ガチャガチャガチャ。


 引き戸を開ける音が響く。


「ん?開かないの?」




 …ガチャガチャガチャガチャ。


 引き戸を開ける音が響く。




 …。


 引き戸を開ける音が止まった。



 ─まずい。


「…咲桜」


 隣にいる咲桜に、声を掛ける。


「どうしたの?」


 小首を傾げてそれに応える咲桜。










「閉じ込められた」

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