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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第10章 誕生日の偶然
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第100話 最もソワソワする日

 

 そうして、時間はあっという間に過ぎ、一ヶ月と少しの時間が経った。


 まだ冬の寒さが続く。朝起きるのがとても辛い毎日だ。布団に篭もりたい。


 などと我儘は言えないので、瞬時に思考を振り切って部屋を出る。


 いつものように咲桜と顔を合わせ、下の階へ行って美桜子さんが作ってくれた朝食を頂く。


 食事が済んだら歯を磨いてうがい。その後上の階へ移動し、咲桜と別々の部屋で着替えを済ませて、荷物を用意する。


 これで、平日のモーニングルーティーンは終わり。あとは学校へ行くだけだ。


 普段と何ら変わり映えの無い、ただの平日。


 だが、今日の俺は少々落ち着きがない。


 それは何故か。その答えは、今日の日付である。


 今日の日付は二月十四日。この日といえば、もちろんあの日──



()()()()()()()()だ…!」



「ん?ベラ、何か言った?」



 登校中、誰にも聞こえないように拳を握る。


 咲桜が俺の声に反応してこちらへ振り返るが、「なんでもない」としらを切る。


 俺の誕生日が近いことは、数日前から意識していた。


 なんせ、年に一度の日だ。少しくらい浮ついても良いだろう。


 しかし、大事なのはそこでは無い。


 俺は、聞いてしまった。そう、あれは今日から五日前。リビングでのこと──


 あの日俺は、久しぶりに外で運動でもしようかと、自室で着替えを済ませ、階段を降りた。


 降りた先、リビングには咲桜と美桜子さんがソファに隣合って座り、テレビを見ながら談笑していた。


 その時に、とある会話が耳に入った。



「サク、誕生日もうあと五日後だけど、何が欲しいか決めたの?早く言わないとこっちも準備しなきゃ」



「うーん、いつも通りかなぁ。フィギュアでしょ?小説でしょ?アクキーも欲しいし、ラバストも欲しいし──あ、『ゆめいち』が漫画化したから漫画も欲しい」



「概ねいつも通りね。まぁどれか一つだけど。──栞が候補から抜けたあたり、イュタベラ君から貰った栞大事にしてるのね〜。あ、サク彼氏出来たんだから、誕生日もいいけど──」



「──っ!う、うるさいよっ!ベラに聞かれたらどうするの!絶対にいじられる!」



 ニヤニヤと口元に手を添えて咲桜を見る美桜子さんの肩を、顔を真っ赤にした咲桜がポカポカと叩く。


 俺をなんだと思っているんだと内心思いつつ、今咲桜が言った言葉を頭の中で反芻する。


 五日後、咲桜の誕生日がある。


 そして、同じく五日後は、俺の誕生日だ。


 こんな偶然あるのか、と感心し、同時にとある企みを思いついた。


 サプライズでプレゼントをしてやろう、と。


 幸い、毎月美桜子さんから貰う小遣いは、俺に物欲が無いおかげで貯まりに貯まっている。今言った咲桜の欲しいものリストの大半を買うことが出来る。


 そして、咲桜が買おうとしている小説は、俺も続きが読みたかった。発売日はこれまた偶然か、五日後。



「本屋まで走るか」



 すっかり覚えた脳内マップで、町内の本屋で品ぞろえの良い場所を検索。ルートを定めてランニングを開始する。


 冷たい空気を全身で感じながら、咲桜の喜ぶ顔を想像して、更にスピードを上げた。

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