表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第二章 学生としての時間
10/123

第9話 父の決断

 突然の提案に、カリオンは動揺を隠しきれていなかった。


「な、何を言うかと思えば、そのような…。いやはや、頭の隅にもない考えでした」


 そう苦笑するカリオン。しかし、カリオンは続けて、


「しかし、貴方達家族に迷惑をかける羽目になりませんか?他人に迷惑をかけるほど無粋なことはしたくは無いのですが…」


 と、申し訳なさそうに言った。


 以前、咲桜も俺に同じような提案を持ちかけてきた。


 しかし、それは俺1人であったから、提案をしただけで、俺ら家族全員を引き取るのは、相当苦労するはずだ。


 しかし、咲桜の父は「いえいえ」と否定し、


「僕が持ちかけているんで、迷惑なんてなりませんよ。それに─」


 と、1度俺の方を向くと、再びカリオンに向き直し、


「イュタベラくんはもう、他人では無く、家族同然だと思っていますから」


 そう、恥ずかしげもなく言った咲桜の父は、「迷惑でしょうか?」とカリオンに発言を促す。


 対するカリオンは、


「迷惑ではありませんが…宜しいのですか?僕もタナーシャも、無一文ですし知識も無いですし…」


「大丈夫です。イュタベラくんがいます。彼は相当吸収が早いのか、今では買い物もスムーズに済ませられますし、何より知識が豊富です。」


 「それに」と、一旦一呼吸置くと、


「こちらに来れば、1ヶ月は戻れないんでしょう?何処で何をするつもりですか?」


 と、微笑みながらカリオンに告げる。


 確かに、父さんは異世界転移の魔法を使うと、1ヶ月は魔法が使えないと言っていた。


 そこを突かれ、カリオンは「それを言われては…」と、顎に手を置いて考え込む。



 数十秒の沈黙の後、カリオンは顔を上げ、咲桜の父と目を合わせた。


「痛いところを突かれましたね。では、お世話になっても宜しいですか?あ、家事などは出来る限り全てを手伝いますので」


 と、咲桜の父の提案を承諾した。


 俺は、まだ日本(ここ)に居て良いのだ。


「はい、喜んで。カリオンさん」


 と、終結した会話に咲桜の父が握手を求める。


 それに倣い、カリオンも手を出した。


「こちらこそ。ええと…」


高峯健蔵(たかみねけんぞう)です。よろしくお願いしますね」


 そう言い、ギュッと握手を交わした。


 と、そこで、キッチンで色々見ていたタナーシャと、咲桜の母が戻って来た。


「あれぇ、リオくん何してるのぉ?握手?私もぉ」


「お父さん、何やってるの?」


 と、握手する2人に、それぞれの反応を見せる。


 すると、タナーシャは咲桜の母に手を差し出すと、


「はい、美桜子(みおこ)さぁん、私たちもぉ」


 と、間延びした声で美桜子さんに笑いかけるタナーシャ。


 それを美桜子さんはさらっとスルーすると、健蔵さんに近寄り、


「お父さん、これどういう状況?」


 と、意味のわからない現状について問いかける。


「あぁ、今日からカリステア家の方たちが、(うち)に泊まるようになった」


 と、先程の結論を話す健蔵さん。


 それに対し、美桜子さんは、「あら、大家族ね」と少しも不満な顔をせずに、じゃあ今日は特別美味しいもの作らなきゃ、と買い出しに出かけた。


 その様子を見ながら、俺は改めて、この家族と出会えて良かったな、と思うのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ