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誰か異世界の常識を教えて!  作者: 三六九狐猫
第一章 不本意な始まり
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プロローグ

「ねぇ、君。ちょっといい?」


「君だよ、今これ読んでる君」



「君は、君の世界の常識を知ってるかな?」



「ちょっと俺にここの常識を教えてくれない?」



「──『日本(いせかい)』の常識を、ね」



 ――――――――――――――――――――――

 快晴。

 いい天気だ。こんな日は、外に散歩にでも出かけて食べ歩きとかしたいな。


 なのに…

「なんで学校なんてあるのかなぁぁ!?」

 学校、そう、学校だ。


 おそらく、日本児童の8.9割が嫌いな、学校だ。

 俺は今、日本の学校にいる。


 何故こんな所にいるのか、それは1週間前まで遡る。


 いや、学校行くの当たり前でしょとか思わないで、まずは俺の話を聞いて欲しい。ほんとに。


 ――――――――――――――――――――――


 第一に、俺は日本人ではない。


 かといって、『いぎりす』?出身でも無ければ、『ちゅうごく』?出身でもない。


 俺は元々、カリステア国という場所に住んでいた、日本人からすると異世界人という部類に入る人間だ。


 ちなみに俺の本名は、イュタベラ・カリステア、齢14の男だ。


 勘のいい人ならわかると思うが、俺はカリステア国の国王、カリオン・カリステアの息子だ。

 俺は三兄弟の次男で、長男のようにバリバリ仕事出来るわけでもなければ、三男のようにメイド達からチヤホヤされるような可愛さも持っていない、ごくごく普通の次男だった。


 ある日、俺が火炎魔法の習得に勤しんでいると、いつの間に来たのか、後ろからメイド長に声を掛けられた。


「イュタベラ様、国王様がお呼びです」


 神出鬼没のメイド長に少し驚きつつ、その内容に更に驚いた。

 兄でも弟でもなく、俺に要件があるのか。


 メイド長は俺に要件を伝えると、そそくさと自分の仕事に戻っていった。


 そして、執務室。いつも父が仕事をしている部屋だ。

 部屋の前に立ち、1度深呼吸。


 1度の深呼吸を5回ほど行い、俺は扉をノックした。


「俺に用があるって聞いたんだけど」


 俺がそう声をかけると、中から「入れ」と声がした。


 中に入ると、父は未だに書類とにらめっこをしていた。


「俺を呼ぶのは珍しくない?なにか俺にしか出来ない用なの?」


 そう俺が声をかけると、父は書類から目を離し、俺と顔を合わせた。


「あぁ〜、うん、あのな?異世界って知ってるか?」


 そう父が問いかける。


 父は顔こそは怖いが、中身は陽気なおっちゃんだ。

 それ故に、周囲の人からは敬語ではなく、タメで話されている。父自身、堅苦しいのは苦手らしいので自分の性格に感謝、といったところか。


 それにしても…


 異世界。聞いたことがある。


 この世界は、父が治めているカリステア国と、父の親友、プラノル・キソルテが収めるキソルテ国、そして決闘好きなミニトリー・ファイクが治める血気盛んなファイク帝国と、世界を覆い尽くす大海で出来ている。

 しかし、この3カ国+世界を埋め尽くす大海の他に、別次元として違う世界が存在するらしい。

 なんでも、異世界というだけあって、この世の常識が通用せず、1度行くと戻るには何十年もかかるらしい。


 父が言っているのはその事だろうか。


「まぁ、知ってるかな」


 そう応じると、父は「よかった〜」と胸を撫で下ろし、俺に一言。


「んじゃ、今から行ってきてちょ♡」



「・・・」


「・・・」



「ん?」


「ん?」


「いや、え?」


「いやだから、異世界、行ってきてねって」


 ・・・いや、いきなりそんなこと言われても…。


 それに何、行ってきてちょ♡って…大の大人が、それも男が「ちょ♡」って…

 てか異世界ってそんな簡単に行けるもんなの?なんかもう訳わかんねぇ…


「いや〜、そろそろこの国にも新しい文化を取り入れたいなと思ってね。その視察をしてくれないかな〜って」


 父が軽い口調で言った。

 そこで俺は疑問をぶつける。


「異世界って、戻るまでに何十年もかかるんじゃないの?そのところ大丈夫なの?」


 すると父は首を傾げ、「何言ってんの?」と俺に問うた。いや、何言ってんのはこっちのセリフなんだけどな…。


「最近は技術も魔法も進歩して、短期間で異世界に行けるようになったんだよ?お父さんも習得したし。これ、常識だよ?」


「いや、常識だよ?って言われても、そんなこと全然聞いたことないんだけど…」


 異世界召喚の事すら少し聞いたことがある程度なのに、そんな技術の進歩だの魔法の進歩だの知ったこっちゃない。


 こっちは火炎魔法覚えるのに一苦労なんだぞ、このバカ親父。


「聞いたことないか〜」


「全くない。それか覚えてない」


「常識人じゃないな〜」


「いや、どこの常識なの?」


「あ、ごめん、1回もイュタベラに言ったこと無かったわ」


「この野郎」


 と、親子喧嘩はさておいて。


「本当に行けるかは別として、なんで俺なの?

兄ちゃんとか弟は?」


 正直に言うと、そんな国の新しい文化を創る大役を、俺に任せるのはおかしい。


 兄は俺より仕事が出来るし、弟は実は兄弟で1番頭がいい。


 なぜ俺なのか。


「いや〜、僕も長男に頼っちゃおうかな〜って思ったんだよ?だけどほら、あの子仕事できるじゃん?今の国の仕事全部あの子がしてくれてるじゃん?流石に行かせちゃまずいかなって」


「まって、仕事出来るのは知ってるとして、国の仕事全部してるのは聞いてない。じゃあ父さんさっき何読んでたの?」


「漫画だけど?」


「国王がサボりやがって」


「…」


「え、てか本当に兄ちゃん国の仕事全部してんの?」


「…」


「え、まじで?」


「それで弟は〜…」


「無視しやがった!」


 解せぬ。


「弟にも頼んだんだよ?頼んだんだけど、メイド達が怖い顔するからさぁ…。試作品の魔法の実験台にさせてたまるかって…。」


「ちょっともっかいストップ。え、なに、魔法で異世界行くのって危険なの?俺、もしかして国の文化を取り入れる大役ってよりは父さんの魔法の実験台なの?」


「…」


「てか、魔法試したりとかしてないの?」


「…」


「え、もしかして?」


「そんな訳で、よろしく♡」


「はい出た無視」


 解せぬ…。


「いや、危険なら俺やらないよ?」


「よろしく♡」


「やらない」


「よろしく♡」


「やらない」


「よろしく♡」


「やらない」


「イュタベラは強情だなぁ」


「こっちのセリフ!」


 危険なことはやりたくない。うん。みんなもそうだよね?安全第一。命は大事だ。


「…あ〜、うん、分かったよ」


 と、父が口を開いた。


 ようやく諦めてくれたか…。


「クイック・サモン」


「え?」



 その瞬間、視界が、いや、世界が黒に支配された。

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