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1、発覚
「お父さんね、膵臓癌だった」
母親から発せられた一言。
まさかと思った。
膵臓癌ってなんだっけ、何か大きい病気だっけ?
1ヶ月前くらいに父親は腰痛が酷くて酷くて、何度も病院や整体に通いつめていた。
この時私は実家から離れたところに住んでいて父親とは月に一回会うくらいだったから、容体もいまいちピンとこなかった。ただなんとなく腰が痛いんだなぁ……とだけ心配していた。
私が家族で外食したくてご飯を食べに行こうと誘うのだけれど、その日の日曜日は珍しくお母さんだけだった。
「あれ、お父さんは?休みじゃなかったっけ?」
「お父さん腰痛いの治んなくてねー、今から整体に連れてくの」
「えっ、ごはんはー?」
「忙しいからまた今度ね」
「ふーん」
まだ異変には気づかなくて。
「ちゃんと医者に行ったほうがいいよ。検査してもらったの?」
「診てもらったんだけどね。異常ないって」
「ほんとー?」
「うん、だからとりあえず痛み止め飲んでる」
ぎっくり腰の延長か何かだと思ってたんだよね。
でも、もうすでに、癌は広がっていたんだ。