アカウント作成
家に帰って来た俺達は、買ってきた食品をしまい、ゲームの準備を行った。
そして待ち望んだ時間になった。
「ログインしたら約束通り広場集合な。間違っても違う国選ぶなよ?」
「わかってるって、王国でしょ。心配しなくても大丈夫だって」
「そうか、なら向こうで」
「おう、向こうでな」
別れの挨拶をすると俺達は揃ってゲームを起動させた。
「「ログイン」」
起動ワードを唱えると意識が段々遠のき、気が付くとみしらぬ場所にいた。
辺りを見渡すと、視界にはどこまでも続く草原と青く澄み渡った空が見えた。
その光景に見入っていると、後ろから何か音が聞こえた。
振り返るとそこには一人の少女が立っていた。
「やっと気が付いた。もうっ、気が付くのが遅いよ」
「あなたは?」
「私? 私はこの世界のナビゲーターの一人。固有名称は『シルフィー』って言うんだ。よろしくね」
「あ、ああ。よろしく」
「うんうん、じゃぁ早速あなたの設定を行っていこうか」
そう言うとシルフィーは胸ポケットから眼鏡を取り出して掛けた。
「何故眼鏡?」
「だってそっちの方が賢そうに見えるでしょ」
「…………」
「あっ、安心して、レンズに度は入ってないよ」
「…………」
発言が既に馬鹿である。
何とも言えない不安を覚えたが、気にしたら負けな気がした為とりあえず流すことにした。
「それで、俺は何をしたらいい」
「そうだった」
シルフィーは一度可愛く『コホン』咳をすると真面目な表情になり、自分に与えられた仕事を行った。
「まずはこの『Growing Intelligence World Online -グロウイング インテリジェンス ワールド オンライン-』をプレイしていただきありがとうございます。最初に所属する国を選んで下さい」
この世界ではいくつか国が存在しており、それぞれの国により特色が異なる。
そして最初に選べる国は全部で5か国。
広大な海からの貿易で栄え、大量のお金が流れる商人の国、テクロラー共和国。
世界最高峰の技術が集まる職人の国、ディカメルム帝国。
多くのダンジョンが存在し、一攫千金を夢見る冒険者の国、ゴルべリア王国。
大小様々な民族から成り立つ文化の国、エトスフェブル連邦国。
古代文明の遺跡が多く眠る歴史の国、レグラール公国。
俺と健二のプレイスタイルは基本緩くその場を楽しむ、だがやるからにはガチでをモットーにしている。
そんな俺達のプレイスタイルと合致しそうなのはゴルべリア王国だろう。
「所属国家はゴルべリア王国で」
「ゴルべリア王国っと。次に決めるのは自分の見た目だね。これは一度作成したらそう簡単には変えられないから慎重にね」
シルフィーは宙に浮かぶウィンドウを数回操作すると、目の前に俺と同じくらいの大きさのデッサン人形のような物が現れた。
「これは?」
「これは今後のあなたの姿よ。これを好きにカスタマイズして姿を決めるといいわ。もう一度言うけど、姿は一度決定するとそう簡単に変更はできないからね」
あれから20分が経過した。
俺の前には未だに何もいじられずにいるただの等身大デッサン人形が目の前に存在した。
「ねぇ、まだ決まらないの?」
シルフィーは草原に寝ころんだ状態で、飽き飽きした雰囲気を出しつつ聞いてきた。
ミニスカートを履いている為寝ころぶと色々と見えそうなのだが、本人は気が付かず無防備な姿をしていた。
なるべくシルフィーの方に視線を向けないよう努力しながら俺は訪ねてみた。
「こうゆうのってどうも俺苦手なんだよな。なんかサンプルみたいなのってない?」
「ないことはないけど、サンプル使うと自分と似たような姿の人をあちこちで見かけることになるかもしれないよ? それでもいいならだすけど」
「それはちょっと嫌だな。でもこのままじゃ決まりそうにもないし」
「ならいっそのこと自分をモデルにすれば?」
「自分をモデル?」
「そう。このゲームは脳と直接やり取りしてるわけだからリアルのあなたの姿を読み取ることがでいるわけ」
「なるほど。リアルの自分を使うのはあれだが、そこから少し手を加えたら身バレはしないか。よしそれでお願い」
「はーい」
その後俺の姿から顔を中心に少し弄り、最後に身長を少しだけ盛り作成を終了した。
「よし、これでいいだろう」
「ならこれで登録しちゃうね。最後にあなたの名前を決めたら設定は終了だよ」
「名前はもう決まっている。『スモバリーブ』だ」
この名前にした理由なんて簡単だ。
小鳥遊 信彦。
そこから小鳥と信を英語に変換すると、smallBirdを略してスモバ、信は信じるのbelieveの頭を抜いてリーブ。
そして抜いた頭の代わりにスモバをくっ付け、スモバリーブ。
とても安易な名前だが、俺はこの名前を気に入っている。
「『スモバリーブ』で登録っと。おけっ、これで登録は全て完了だよ」
シルフィーがそう言うと、急に俺は光始めた。
「それではあなた、いやスモバリーブに新しい出会いと冒険、そして幸運がありますように」
「ちょ、まっ……」
「では新しい世界に行ってらっしゃい」
そして俺の視界は真っ白になるのだった。
いつか指摘されそうなので先にお話すると、キャラの容姿はわざと詳細には書いていません。
少しでも面白い、楽しいと思ってもらえたらブックマークや評価して頂けると嬉しいです。
次回は10/7㈬19時頃更新予定です。