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当選

 朝がやってきた。

 睡眠不足で二度寝をしたくなるが、なんとか誘惑に勝ち起き上がり、リビングに向かった。

 リビングには既に家事をしている母さんとソファーで寛いでいる妹がいる。


「こんな時間に起きてくるなんで珍しいじゃない」

「まぁね」


 基本休みの日は朝方まで夜更かしをしてる為、正午くらいまで起きてこないが今日は早起きをした。

 とはいっても既に10時を過ぎているが、俺にしては早い方だろう。


「母さん達、昼前には出かけるからね」

「京都に行くんだっけ?」

「そうよ。三泊四日で京都に行くからね。一人だからって余り羽目を外すんじゃないわよ」

「わかってるって。もう子供じゃないんだから」


 心配になるのはわかるが、もう高校生なんだから少しは信用してほしいもんだ。


「そうは言うが、あんたほっとくとずっとゲームしてるでしょ」


 信用ないのは自分のせいだった。

 

「まぁ。ほどほどにするよ」

「目を逸らしながら言われても説得力ないわよ。ったく、本当にほどほどにするのよ」

「はーい」


 母さんは呆れながらそう言うのだった。

 それでも軽い注意だけで済むのは成績をそれなりに取っていて、普段から家事も手伝っているからだろう。


 朝食を食べながらふとテレビを見ると、丁度話題のニュースが流れていた。


「新作オンラインゲーム『Growing Intelligence World Online -グロウイング インテリジェンス ワールド オンライン-』こちらがついに今日の12時に配信されるとのことで、すごい注目されています」

「なんて言ったって開発者はあの新藤 浩一郎さんですからね。15年前にVR技術と自立型人工知能を発表した世紀の天才。その天才が今度はゲームを発表された為、みんな期待をしているわけですよ」

「なるほど、あの新藤さんですか」

「そうなんです。実際は期待以上の内容で、私も欲しいくらいですよ」

「そこまでですか」

「ええ、詳しい内容はこの後順に説明していきますが、とにかく規格外って感じですね。その常識に縛られない内容といい開発者のネームバリューといい、余りの注目に入手するのも困難で、リリース開始からできるのは抽選に当選したわずかな人のみ。その抽選倍率はおよそ数千倍とも言われています」

「そんなに倍率高いんですか。ちなみに高崎アナは……」

「もちろん応募しましたが、結果は当選ならず。いやはやリリース当日からできる方々が羨ましいですよ」

「それは残念ですね。ではそんな期待の新作ゲームの内容についてCMの後、紹介していきたいと思います」


 CMに入ると、今までソファーで寛いでいた妹は起き上がり、俺に聞いてきた。


「おにぃもあのゲーム気になるの?」

「そりゃゲーム好きとしてはやっぱり気になるわな。なんだ結姫も気になるのか?」

「最近クラスの男子がこのゲームについて話してるのをよく聞くんだよね。だからどんなゲームか気になったってだけ」

「そか、ならこの後詳しく解説してくれるみたいだから見るといいよ」

「そうする。ちなみにおにぃは応募したの?」

「もちろん」

「結果は?」

「当選したよ」

「「えっ!?」」


 コーヒーを飲みながら俺はいつも調子で答えた。

 する結姫だけでなく母さんまでもが驚いた。

 その驚く声がでかく、思わずビックリしてコーヒーを吹き出しそうになった。


「なんだよ、そんなに驚いて。てかなんで母さんまで驚いてんだよ」

「おにぃあれ当選したの?」

「あんたあれ当たったの?」

「お、おう。そうだけど」


 あまりの食いつきに思わず俺は引きそうになった。


「そっかあれ当選したんだ。聞いた話だけど、あれ宝くじ並みに当選しないもんだって聞いたよ」

「流石にそこまでじゃないけど、まぁ滅多に当たるもんではないな。で、母さんはなんで驚いてるのさ」

「あんたあのゲームいくらすると思ってるのよ」

「確かに他のゲームに比べると高かったけど、それでも一万くらいだよ」


 個人的にはあの規模と内容ならもう少し高くてもいいと思うんだよな。


「そうじゃなくて、あのゲームいくらで取引されてるか知ってる?」

「ああ、そっちね。確か一週間前に見た時は……最低落札価格は853万くらいだったな」

「なっ、そんなにするのに売ろうとは思わないの?」

「えっ、むしろ聞くが、俺がそんな程度で手放すと思うか?」

「はぁ~……そうだったわ、ゲームのことになると妥協しなくなるんだったわ」

「それほどでも」

「褒めてないわよ。まさか今回の旅行に行かないって言ったのはこれをやる為じゃないだろうね」

「あはは……」


 俺は図星を言われて乾いた笑みを浮かべながら目を逸らした。


「まったくそうゆうのは父さんそっくりなんだから」


 母さんはやれやれと言った感じにため息を吐いた。

 そんな母さんの様子に、俺は心の中で二つの意味を込めて謝った。

 一つは旅行に行かないこと。

 もう一つは昨日、実は二つ持っていたゲーム参加の権利の一つを売ったこと。


 おかげで想像以上の大金を得ることができたが、半分は俺のじゃないから今はまだ言い出せなかった。

 まぁ、あのゲームには他では許されないあの機能があるから、そのうち適当な理由をつけて親孝行できる時がくるだろう。


 そうこうしているうちにCMは開けて、詳しい解説がされ始めた。

少しでも面白い、楽しいと思ってもらえたらブックマークや評価して頂けると嬉しいです。


次回は9/25㈮19時投稿予定です。

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