気が付いた時には既に……
年内最後の投稿です
「それよりも何があったんですか?」
「お恥ずかしい話だが、パーティーメンバーに裏切られてしまったんだ」
話を要約するとこうゆうことだった。
ギルゼさんとアキさんは昨日、俺達が途中で行くのを止めた初心者ダンジョン『シスミラ』で運よくモンスターを多く狩ることができ、他の人よりも少し多くランクを上げることができた。
ただ、やはりダンジョン内の人数が多い為中々思うように狩りは出来ずにいたので今日は多少無理をしてでもこの『レムルス』で狩りを行うことにした。
そこに丁度このダンジョンに向かうパーティーに声を掛けられ、臨時で一緒に狩りを行うことになった。
苦戦はしたものの3匹程度ならなんとか倒することが出来ていた。
その為ウルフの数には注意して戦闘を行っていたが、ある時戦闘の途中でパーティーの一人いなくなっていた。
不思議に思ったが目の前で繰り広げられている戦闘に精一杯で深く考える余裕がなかった。
戦闘から少しして消えたパーティーメンバーが何故か前から走ってき、そのうしろには10数匹のウルフが追いかけてきていた。
流石にまずいと思ったギルゼとアキは残りのメンバーに逃げるように伝え、退散しようとした。
だが、その時後ろから味方に攻撃をされ転倒してしまった。
そのことにアキは講義しようとしたが突き飛ばされ、3人は逃げていった。
立ち上がったことには3人はおらず、変わりにウルフ達が周囲を囲んでいた。
「で、なんとか戦ってみたが途中でポーションは尽き、MPも尽きて絶対絶命のところに君たちが現れたって感じだ」
「その逃げたって人達が気になるが、多分話を聞く限りではPKもしくはMPKに慣れてる人達かもしれないですね」
「モンスターの誘導や裏切るタイミング、あの逃げ足などどれも絶妙すぎる気はした」
「その人達のことってなにかわかります?」
「名前や大まかな容姿ならわかる。ただ今はもうパーティーを解除されているから足取りまではわからない」
「なら戻ったら一応冒険者ギルドに報告だけはした方がいいかもしれないですね」
「ああ、わかった」
俺とギルゼさんが話をしている間、アキさんはキョロキョロ周囲を見て、そして訪ねてきた。
「気になったのですが、スモバリーブさん達の他の方はどうされたのですか?」
「はい?」
「ですからスモバリーブさんとソーネクさん以外のパーティーメンバーですよ。どこかで待たれてるのでしょうか?」
「……あー、そのことですか」
一瞬何を言っているのかわからなかったが、説明されて理解した。
「他はいませんよ」
「倒されてしまったのですか。すみません、失礼なことを聞いてしまって」
「違いますよ。俺達は元々二人だけです」
「またまた~」
「……」
「……えっ、本当ですか!?」
「本当ですよ」
アキさんは信じられないといった表情をしており、ギルゼさんも若干驚いていた。
そんなに驚くことだろうか。
「それよりもこれからどうする予定ですか?」
「正直我々二人だけではダンジョンを出る前にやられてしまうだろう。助けてもらっておいてこんなことを言うのはおこがましいと思ってはいるが、ダンジョンを出るまでご一緒させてもらえないだろうか?」
それを聞き俺はソーネクを見て、逆にソーネクはこっちを見ていた。
そしてお互い頷ぎ返事を返した。
「もちろん構いませんよ。ただもう少しでマッピングが終わるのでそれだけ済ませていいですか」
「我々は君たちに便乗させてもらうだけだから、そちらの都合に合わせてもらって構わない」
「ありがとうございます。では行きましょうか」
新たにギルゼさんとアキさんをパーティーに入れた俺達は先を進みつつお互いの話をした。
「それにしてももうマッピング終わるんですか。だいぶ早いですね」
「適当にぶらぶら歩いていたら結構マップが埋まったもんで」
「それでもすごいですよ」
俺とアキさんが話している前では、ソーネクとギルゼさんで別の話で盛り上がっていた。
「へぇ~、お二人とも別のゲームでのお知り合いだったんですか」
「ああ、他にも二人ほど当選した知り合いはいるんだが、この時期少し忙しいらしくてね。先に二人で始めたわけだよ」
「なるほど」
「そうゆうそっちだってこのゲームで知り合ったって感じではなさそうに見えるが」
「俺達も別のゲームで一緒にやってて、二人揃って当選したからこうして一緒にやってるわけですよ」
道中一度もウルフを見かけることなく他愛もない雑談をしながら進んでいると、少し先に開けた空間が見えた。
「ソーネク、あれってまさか」
「ああ、多分間違いない」
「となるとここは引き返した方がいいな。すみません、ここから先は危ないので……あれ?」
俺達は少し先に広がる空間が昨日みたモンスターハウスと同じだと感じ、隣にいたアキさん達に事情を話そうとしたが、気が付くと隣にいなかった。
慌てて前を見るとギルゼさんを引っ張りながら先を進むアキさんがいた。
「スモバリーブさんソーネクさんもそこで立ち止まってないであそこで休憩しましょう」
「あっ、ちょっと待って、そっちは危ないから」
俺達のただならぬ雰囲気にギルゼさんは何かを感じ取ったようだが、アキさんに手を引っ張られている為どうしようもできずにいた。
そしてそのアキさんは休める場所を見つけたせいか、浮かれておりソーネクの声は届いていなかった。
「おいおいおい、これまずくねーか」
「ああ、急いで止めなきゃ」
俺達は急いで前を進む二人を追いかけたが、残念なことに間に合わず広い空間に足を踏み入れてしまった。
「おおだいぶ見渡しもいいですね。これならウルフがきてもすぐにわかるから休憩するのに丁度いいですね」
なおも中央に行こうとするアキさんを俺は止めた。
「ちょ、ちょっと待って、今すぐここから離れましょう」
「さっきからただならぬ雰囲気のように見えるが、どうした」
「ここ実がモンスターハ……」
俺の言葉は最後まで言い切れずに、ドーム内に昨日と同じアラームが鳴り響いた。
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次回は1/6㈬19時頃更新予定です。