スチル・ベル・ヤダランの相続権
俺達は今、大きな屋敷の一室で寛いでいた。
辺りにはいかにも高級そうな家具がありこちに置いてある。
何故こんなことになっているかと言えば、最後にガチャで当てた紙が原因だろう。
金のカプセルを開けると一枚の紙が出てきた。
そこにはこう書かれていた。
『スチル・ベル・ヤダランの相続権』
てっきりアイテムか装備が出てくるとばかり思っていた俺達は理解でできずにいた。
「ソーネクよ、これなんだと思う」
「流石に検討つかないな。金のカプセルから出てきたからにはこの世界でただ一つの何かなんだろうけど、このスチル・ベル・ヤダランってのがそもそもわからないからな」
「だよな。わからないしとりあえず後で考えるか」
床に落ちたその紙を拾うと、目の前に半透明のウィンドウが現れ、そこにはクエスト表示がされていた。
「……後で考えようかと思ったが、やっぱり今考えようか」
「ガチャ、それも金カプセルからのクエスト、絶対何かしらある予感するんだけど」
「やっぱりそう思うよな。ただ見返りも多そうだし、迷う」
「ちなみにそれ、今の俺らでもできそうなのか?」
「どうだろう。でも適性レベル1だからなんとかなるんじゃないか」
それから15分ほど悩んだ末、俺はクエストを受けることにした。
「まずはこの町の不動産屋に向かえだとさ」
「それってどこにあるんだ」
「……知らない」
「早くも詰んだか」
「いやいや、誰かしら知ってる人いるだろ」
とりあえず宿の受付しているおばちゃんに聞くことにした。
「おばちゃーん、この辺に不動産屋ってどこにあるか知ってる?」
「なんだいなんだい、騒がしいね。不動産屋ならこの宿を出て右に真っすぐ進んだ先の曲がり角に面した赤い屋根の建物がそうだよ」
「ありがとう」
宿のおばちゃんの言っていた通りに進むと、赤い屋根の建物が見えてきた。
中に入ると一人の女性が接客にやってきた。
「本日はどういったご用件でしょうか」
そこで俺達はひとつの問題が生じた。
「おいソーネク、なんて説明したらいい?」
「俺が知るか、クエストにはなんて書いてあるんだ」
「それがさっきと同じ不動産屋に向かうから変わらないんだ」
「ここ本当に不動産屋なのか」
「宿のおばちゃんが言ってたんだから間違いはないと思うんだけどな」
「ならあの紙でも見せればなんか反応がするんじゃないか?」
「そ、そうか」
小声で相談の終わった俺達は女性に紙を見せてみた。
「色々とありこの紙を手に入れて、ここにくるように指示されたのだが」
「拝見させていただきます。こ、これは! しょ、少々お待ち下さい。すぐに責任者を呼んできます」
俺達の返事を待たず女性は奥の部屋に行ってしまった。
「あの慌てぶり、絶対何かあるぞ」
「奇遇だな、俺もそう感じたよ」
「俺先に冒険始めてるから後は頑張れ」
そう言うとソーネクは建物を出ようとしたが、俺はすかさず腕をつかんだ。
「逃がさねーよ?」
「馬鹿、離せ。どう考えても何かあるだろ」
「そんな状況を俺だけにするのは友人として良くないよな」
「友人なら巻き込もうとするな、ええい離せ、行かせろ」
逃げようとするソーネクを取り押さえ、待つこと少々、奥の部屋から先ほどの女性ともう一人、いかにもできる雰囲気のある男性がやってきた。
「大変お待たせいたしました。おや、どうされましたでしょうか?」
「気にしないでください。それよりも」
「そうでした、うちの者から話は伺っています。あなたがヤダランの相続権を持って来た方ですな」
「一応そうです」
「紙を拝見させ頂いても?」
「紙ならそちらの女性に渡しました」
「こちらです」
男性は紙を持つとじっくりとその紙を見つめた。
その際、目の色が緑色に光っていた。
「なるほど、これは間違いなく本物ですな。君、奥の部屋から契約書をもってきてくれないか」
「かしこまりました」
「おっと私としたことがまだ名乗っていませんでしたね。私はこの店のオーナーをしてます、ルジミールと言います」
「スモバリーブです」
「ソーネクです」
「スモバリーブさんとソーネクさんですね。どうぞそちらの席に」
俺達は勧められた席に座ると、ルジミールさん自ら飲み物を用意してくれた。
「さて、お二人はヤダランのことをどこまでご存知でしょうか?」
「すみません、全く知らないです」
「そうですか、では簡単に説明させて頂きます」
ルジミールさんの話を纏めるとこうだった。
スチル・ベル・ヤダランとは、かつてこの国にいた富豪で、その名前はこの国に留まらず周辺国家にも知られていた。
民衆に優しく貧しい者には支援を行っていたため、民衆から慕われていた。
だがそれをよく思っていなかった当時の権力者の誰かが暗殺を企て、ヤドランは亡くなった。
彼の死後、机の上には遺書が置いてあり、こう書いてあった。
『私は近いうちに殺されるだろう。
故にこの遺書を残そうと思う。
私には妻も子もいない為、私の財産を相続する者は誰もいない。
私は考えた。
その結果、私は私の財産を相続する権利をあちこちに隠すことにした。
私の死後、その相続権を見つけた者に私の財産をあげよう。
これが私にできる最後の民衆支援になるだろう。
願わくば善良な民衆に私の財産が相続されることを祈っている。
スチル・ベル・ヤダラン』
最近のゲームってクエスト受けた際、目的地までマップ表示されたり自動移動できたりとだいぶ楽できるようになりましたよね。
ただ自分としては少し物足りないと感じる部分もあった為、作中でのクエストではそうゆうのを無くしてみました。
少しでも面白い、楽しいと思ってもらえたらブックマークや評価して頂けると嬉しいです。
次回は10/14㈬19時頃更新予定です。