8話 夜空
お風呂場へたどり着き、着慣れない袴を脱いだ清明が、中へ入るといつの間にか夜になっていたのか、綺麗な夜景が広がっていた。
違うところといえば人魂みたいな火の玉が宙を舞っているところだろうか。
「なんか、滅多に見られないなこの風景。」
本当に違う世界に来てしまったのだなと、想いを寄せてつつ、髪を洗おうとしてるとシャンプーがないのに気づいた。
「そりゃそうか、トイレが伝わらないのにシャンプーなんてあるわけないか。」
シャンプーの代わりになりそうなのはないかと探していると不意にのりの様な少し海藻くさいドロッとしたものが見えた。
「まさか、これがシャンプー代わりなのか…。はぁ〜、使うしかないか。」
使ってみると意外にも髪に合い気持ちが良かった。ただ粘りが強く2回洗わなければいけないのが面倒だったが。
体も洗い、いざ露天風呂へ入ろうとしたところ、不意にザッパーンっと言う音が露天風呂から聞こえてきた。
「ふぅ〜、極楽だべ〜、やっぱり一日の締めはこれに限るな。おや、そこの妖狐の坊主お前もこっちにきなさい。」
ポカンと大きく口を開けた清明の目の前にいたには、山の化身のような大きさの巨人がいた。
「そこの坊主、早く入れ。それと、名前はなんだべ。」
名前はなんだと聞かれ意識を取り戻した、清明は、素直に名前を言った。
「自分の名前は黒狐。そっちの名前は?」
「わては、だいだらぼっちのダイダラ。坊主、なんでこんなところにいるんだ?」
「こっちの言いたい事とっていくなよ。ここに泊まらせて貰ってんの。」
「ほお〜ん、つまり今年の妖化は坊主か、いいもん見れたわい。それでなんでこんなところにいるかだって?そりゃ、ここの女将と仲がいいから風呂貸して貰ってんだべ。」
「今年、どう言う事だ?他にもいるのか?」
「おっとのぼせてきちまったせいかね、いらない事言ってしまった。これは秘密だべ。ほんじゃーな。」
大きな巨人とは思えないほど足早に風呂を出ていったダイダラ、残ったのはダイダラが出て行った時に生じた波に呑まれた清明の姿だった。