6話 妖術の一端
それにしても、ここはどこなんだろうか?妖界とは言っていたが、塀の外の景色を見ていないから未だに妖界という世界にいる実感が薄い。でも、この尻尾を見たら自分が人間ではなく、唯一の情報源である白狐さんから言われた妖狐だと納得するしかない。それに自分が元いた世界、『人界』へ帰る方法を教えてもらわないと。そう考えながら部屋へ戻ると、白狐さんの姿勢は自分がトイレを行った時の姿勢を保っていた。
「えぇ…?同じ姿勢を保ってられるとか人間じゃないだろ。」
「それはそうですよ、だって人間ではないですし。あと、敬語ではなくてもいいですよ。なんだか息苦しそうですし。」
その表情は、冬の雪のような儚い表情だった。
「感謝する。白狐さんも敬語じゃなくて平気なんだが。」
「これはもう一つの癖でして、治らないのです。」
「そうか。なら仕方ない。それはそうと、教えてもらいたいことが出来た。」
「なんでしょうか?教えられる事ならなんでも教えましょう。」
「人界へ帰る方法を教えてくれ。」
その途端周りの空気が重みを持ち一気に静まり返った。
「…いいでしょう、教えます、ただし条件があります。一つ目に妖術を完璧に学んでください。2つ目にこの世界の事を詳しくなりなさい。そうしなければ帰り方は教えません。」
妖術?なんだそのファンタジーは?術と付くからには、自衛手段の一つか?ならばあって困らないし問題ない。それと2つ目は、もともと知りたいと考えてたし、特に問題ない。得しかないように思える。
「その条件を受けよう。ただ妖術とはなんだ?それに俺は学生で学校へ行かなければならないからとっとと帰らなければいけないから急いで教えてくれ。」
「ふふっ、大丈夫です。大体1年くらいで終わります。それと妖術は、今は自衛手段の一種と言っておきましょう。」
「1年!?そんなことをすれば行方不明の扱いになってしまう!なんとか出来ないのか?」
「大丈夫です。妖術でなんとか出来ます。多分ですが。」
「なんとか出来るって、どういうことですか?」
「こういう事です。」
そう言って白狐さんは自分の目の前で手を叩くとその瞬間自分が知りもしないはずの女性が手を叩いてるような感じをした。
「なんだ今のは!?知らない女性が手を叩いていたぞ。」
「これが、妖術の技の一つです。これを応用すればその問題も解決できましょう。」
なるほど、確かに解決できそうだ。
「では、今日は休んで明日から始めましょう。」
「了解した。」
なら、早くお風呂へ入って寝たい。何故か異様に眠たい。
「ああ、そうそうお風呂は、廊下を左へ行き突き当たり東ですよ。」
なんでこの人は自分の考えてることが分かったのだろう。実はそういう妖術でもあるのだろうか?
そう思いながらお風呂場の方へ向かっていく。