4話 妖と化す
完全に見切り発車なのでストックはないです。
「知らない場所だ。」
目が覚めると、太陽に匂いがする布団で寝かされており、畳の床にピンと張られた綺麗な障子、そして掛け軸と机、座布団があった。まるで旅館にでも泊まっているようだった。
頭がズキズキする。殴られた所がタンコブにでもなっているのだろうか?
触るとモフッという触感が返ってきた。…モフッ?
どうゆう事だ?人間にモフッなどという音を出す部位はなかなかないだろう。机を見ると小さな木で出来た手鏡があった。手鏡を手に取り、自分の頭を見るとそこには、いつも通りの頭はなく、それは先に行くにつれ細くなっている、黒い狐耳があった。
「………嘘だろう?夢でも見ているのか?」
パァン!と頬を叩くと痛みと赤い跡だけが残り夢じゃない事を突きつけている。寝ている状態から立ってみると、少しばかり背が高くなっている気がした。だが、それよりも気を取られたのは、自分に黒い毛の尻尾がある事だった。 それも3尾も。
「意味がわからない。」
試しに触ってみるとやはりと言うべきか、もふもふ、とした触感がある。
「なんで3尾もあるんだろうか?それに狐みたいな尻尾と耳だけど、自分は人間だから生えるわけがない。」
その時だった、スゥーと障子が開く音がする。
障子が開くと白髪で目がキリッとした女性がいた。
ただ、なによりも目を惹くのは白い狐耳に6つの白い尻尾だろう。
「体はもう平気でしょうか?痛いところはありませんか?」
「ありがとうございます。少し頭が痛いくらいですかね。」
「それは…申し訳ありません。どうかお許しください。」
目の前で土下座をした。それは、とてつもなく綺麗な土下座だった。
「いやいや、別にあなたがやったわけじゃないでしょう。黒い髪の人だったし。それに、むしろ俺の方が謝りたいですよ、こんな綺麗なところを貸してもらって。」
「許してもらえるのですか?」
「もちろんです。聞きたいことがあるのですが、ここはどこなんでしょうか?」
「ここは妖界、妖怪たちが遊び、学び、日々を過ごすそんな世界です。」
ダジャレみたいだが耳と尻尾を見たらダジャレですねとは言えなかった。
「妖界ですか、聞き慣れない場所ですね。それに妖怪とは、どういうような人なんでしょう?」
好奇心が出てしまい黒い三つの尻尾がそれぞれブンブンと当たらないように回転している。
クスクスっと笑ってから
「私とあなたのような妖狐や天狗、雪女などですね。」
「自分が妖狐?私は人間ですよ。」
「でも、その立派な耳と尻尾はどう見ても妖狐の特徴。もしかして夢を見ましたか?」
「?どんな感じの夢ですか?」
「鳥居があって2人の人がいる夢です。」
「見ました。」
思わず食い気味に言ってしまった。
「そうですか。それは妖化の儀式といい、私達妖怪と同じに変えてしまうのです。」
「でもその夢を見ても耳も尻尾生えてきませんでしたよ?」
「当然です。妖界へいかなければ正式に妖怪になれないのです。正確には、行く前の白い光のところで妖怪になります。」
白い光?そうだ、忘れていた自分は廃墟にいたはずなのになんでこんなところへ?
「自分は廃墟へいたはずなんですがどうしてここへ?」
「廃墟…?ああ、門のことですか?門の近くで気絶したので連れ帰りました。」
「門とはどんな形をしているのですか?」
「門とは人間と動物が住む人界を繋ぐ鳥居です。」
鳥居…?ここら辺に鳥居は山神の家くらいしかないはず。
もしかして、家や店などの位置が違うのか?
「最後にもう一つ、あなたの名前は?」
「ああ、忘れていましたか、私の名前は白狐と申します。よろしくお願いします。」
「そうですか、自分の名前は清明と言います。清らかで明るいと書いて清明と読みます。こちらこそよろしくお願いします。」
やっと書きたかったことが書けた。